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「遊星!おかえり!」

新しいモーメント開発の為、イェーガーのところへ相談しに行っていたオレをアテムさんが笑顔で迎えてくれた。その笑顔、かわいいです。

「えっと、これ遊星宛ての郵便。それから修理の依頼が2件入ったぜ」

郵便はまたプロリーグ関係からなんだろと思い封を切らなかった。ゾーンの一件以降、正しく言えばWRGP優勝後から急に来はじめた。
そして今も修理屋を営んでいた。新しいモーメント開発はまだ出来ないだろうし、何より生活費がないのは困るからだ。クロウはデリバリーを廃業し、セキュリティに勤めようかななんて言いはじめている。デリバリーの収入に多くを頼っていた部分もあったから、モーメント開発が始まるまでは修理屋を営むつもりでいた。それにきっとクロウはここから寄宿舎に移るはずだから、いつまでもクロウに頼ってるわけにもいかない。
アテムさんが依頼をまとめた紙を渡してきた。D・ホイールの回線不良とデュエルディスクの修理依頼だった。これなら専門業者のほうがと思うが、オレに頼むほうが費用も良心的だし何より調子がかなり良くなるそうだ。

「アテムさんこっちには明日の午前、もう一件は明日の午後行くと連絡してくれ」

アテムさんは近くの飲食店でバイトをしつつ、修理屋の窓口もやってくれている。これは本当に助かる。

「すいませーん!ちょっとバイク見てもらえませんか……って…」

バタンッと勢いよく開けバイク(この時代に珍しい、はず)を見てほしいと声を上げたのは、茶髪の髪にくせっ毛、黒いタートルネックに赤い上着の以前過去で出会ったデュエリスト。

「十代、さん…?」
「遊、星…遊星だよな!?」

ぴょーんと飛び跳ねオレにダイレクトアタックをぶちかましてきたこの人こそ、精霊が見え力が使える遊城十代、その人だった。

「なんで、この時代に…」
「いやさー、精霊鎮めようとしたら攻撃喰らっちゃってさ。気がついたら、なんだっけ…さてぃすふぁくしょん?だかって街にいてさ!」

鬼柳が町長をしてる街…鬼柳は元気だろうか。というか、サティスファクションタウンにいたというのにネオ童実野シティにいるのだろうか。

「なんか長髪の…遊星みたいな黄色いペイント?してる町長に事情を話したら、この街が発展しまくってるからなんとかしてくれんだろって」

つまり、鬼柳が十代さんの話を信じてくれてネオ童実野シティに行くのを奨めてくれた。だからこの街まで来たということらしい。

「そんで、古いけどバイクを調達してくれてなんとか来れたってわけ。この街に着いてしばらくしたらバイクのエンジンおかしくなって、困ってたらいい修理屋があるよって聞いてここに…」

あれか、口コミでここに来たのか十代さんは。口コミ…恐るべし。
そういえば、なんだかんだでWRGP以降依頼の数が増えたような気はしていたが…口コミのおかげなんだろうか…

「……とりあえず、バイクをガレージに入れて下さい。エンジン見てみますから」
「おう!助かるぜ!!」

そう言って十代さんは外に飛び出していった。なんだろうか…行動ひとつひとつが幼く見える。なんというかほっとけない。

「遊星、依頼人に連絡いれたぜ」
「アテムさん、お茶の準備お願いできますか?急に依頼が入って、直してる間待っててもらうので」

お茶?わかったぜ、とキッチンにアテムさんが上がったと同時に十代さんがバイクを引いてガレージに戻ってきた。

「遊星ー、これなんだけど」
「これはまた…旧世代のものですね…」
「オレ、さすがにD・ホイールまで運転する自信なくてさ。それ言ったらこれが…」
「……D・ホイールだとライディングデュエル挑まれる可能性もありますし…その辺も鬼柳が察してくれてよかった」

なんだかんだ言っても鬼柳はそういうところへの配慮が上手い。スピードワールド適用のデュエルは何も知らない十代さんには無理だろう。鬼柳に感謝だ。

「遊星、お茶入った、ぜ…」
「あぁ、アテムさん。覚えてますか?オレたちとデュエルした」
「じゅう、だい、十代なのか!?」

お盆を落とすまいと必死になっているが十代さんがいることに驚いているようだった。無理もない。パラドックスの一件以降、赤き龍の力で時を遡(さかのぼ)ることなんてできなかった。つまり、会ったのはあれが最初で最後だったのだから。

「遊戯さん!?遊戯さんだー!」
「十代さんストップ」

今にも飛びつこうとする十代さんを抑えた。アテムさんはお茶を持っている。飛びつこうなら確実にお茶は零(こぼ)れるし、ふたりが火傷をする可能性が高い。

「アテムさん、お茶はそこのテーブルに置いてください」
「あ、あぁ。わかった」
「なあ遊星!なんで遊戯さんいるんだー?」
「それはちゃんと説明しますからとりあえずお茶にしませんか?」

興奮状態の十代を宥めながら、お盆に乗ったお茶を遊星は十代に奨めるのだった。


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