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ゾーンとの一件から数日後。チーム5D'sの中心であり、ネオドミノシティを守った不動遊星は、自らの愛機ボルガニック遊星号で海岸沿いを走っていた。ジャックとクロウがケンカを始めたため、とてもじゃないがガレージにいられない状況になったためである(普段の2倍近く酷いケンカに発展したため)
今だ痛む頭を気にしながら(投げあいが勃発して巻き添えを喰らった)、いつ頃帰れば安全かと思案していた。そして何気なく海の近くに行きたいと思い、時間潰しも兼ねて誰もいない砂浜に降り立った。海風が運んでくる潮の香りがツンと鼻をさしたが、むしろ落ち着くと思った。普段嗅ぐオイルの臭いよりは全然マシなのだ。
少しばかり砂浜を歩くと、何やら見覚えのあるシルエットが目に入った。ヒトデかと思ったが胴体や手、足がある。うつぶせに倒れていたため身体を動かし仰向けにするとやっぱり見覚えがあった。

「遊、戯…さん?!」

だいぶ前にスターダスト・ドラゴンを取り戻すため過去に行ったことがあった。その時に出会った伝説のデュエリスト──武藤遊戯が何故か砂浜に、しかも遊星たちの生きる時代に倒れていた。





ところ変わって、ポッポタイム。
ガレージからは2人分の怒号が聞こえていた。

「いい加減就職しろ、この元キングニート!!浪費バカ!」
「うるさい!このオレに合う仕事がないのだ!」
「お前が合わせないといけないんだよぉぉぉぉぉぉッ!社会不適合者かお前は!?」

この間にも物が飛び交う危険な状況になっていた。いつもは綺麗に片付いている遊星の工具箱は悲惨なことになっている(いくつかは投げられたのか、床に転がっていた)
そんな中急ブレーキ音が響き、バタンッと勢いよくドアが開いた。ジャックとクロウが音がした方を見ると珍しく慌てた様子の遊星が立っており、その背には少年がおぶさっていた。

「く、クロウ!枕と毛布持ってきてくれ!!」
「ど、どうしたんだ…遊星…」
「いいから!早く持ってきてくれッ!!」
「お、おう…」

遊星のあまりの気迫にビビりつつも枕と毛布を持ってくるため、クロウは階段を駆け上がった。
遊星はその間にソファの上を片付け、背中におぶっていた少年をそこに寝かした。一部始終を見ていたジャックは何事かと遊星に詰め寄った。

「遊星、なんの騒ぎだ!」
「ジャック、落ち着いて聞いてくれ……」

──今、ソファに寝かせた人は伝説のデュエリスト…遊戯さんなんだ


「……遊星、とうとう頭がわいたか…」
「オレは正常だ!砂浜に行ったら倒れてたんだ!!それにこの姿はどう見ても遊戯さんだろう!?」


まじまじと見ると、やっぱり特徴のある頭に過去の雑誌の記事に載ってたくらいの身長、現在はあまり見られなくなった学ラン姿。武藤遊戯の特徴に一致するのだ、そのすべてが。

「しかしな…仮に伝説のデュエリスト、武藤遊戯だとしてもあまりにも非科学的ではないか?」
「……それは、そうだが…」
「う…」

遊星とジャックが話していると、小さくうめき声が聞こえた。ソファの方を見ると遊戯が目を覚ましていた。

「……ここ、は…」
「ここはポッポタイムのガレージです、遊戯さん」
「……遊、星だよな…?」
「お久しぶりです、遊戯さん。パラドックスのことではお世話になりました。今、飲み物持ってきますね」

まだすこしぼーっとしている遊戯を気遣い、遊星は飲み物を取りに一度その場を離れた。それと入れ違いに枕と毛布を持ったクロウが戻ってきた。

「あれ、遊星?」
「あの、もしかして遊星の友達か?」
「あぁ、そうだけど…(なんか見たことあるよなぁ……)」
「オレ、遊戯って言うんだ」
「オレはクロウ、クロウ・ホーガンだ。こいつはジャック・アトラス」
「ってか、クロウ!こいつは伝説のデュエリストの武藤遊戯だぞ!?」
「え、マジ?」
「そうなのか?」
(……ダメだこいつら)


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