「名前」

『ら、いぞー…、何?』

「ふふ、まだ違和感残るけど、ちゃんと名前言えるようになったね。えらいえらい」

『へ?』


ポフポフと私の頭を撫でてきたのは言わずもがな、この前私の彼氏になった雷蔵です。
この前から私かなり練習したんだよ。
やっと君をつけずに言えるようになったんだよ!
私頑張ったなぁ…。
今度頑張った記念に鉢屋に何か奢らせようそうしよう。

まぁそんなわけで、雷蔵もご機嫌になってくれたみたいなんです、そして今はお昼休み中。
私の作ったお弁当(だって雷蔵ご飯買うのに悩んで時間かかるんだもん)を二人で食べる。
「この玉子焼き美味しいね」って食べてくれる雷蔵。
私も一応女なのでね…素直に嬉しいのですよ、うん。


「じゃぁ名前呼べるようになったご褒美」

『え、何なに?』

「これ。名前ここのケーキ好きって言ってたよね?」

『ここここ、これは…!!』


雷蔵がポケットから私に差し出したのは、チケット二枚。
私が前々から美味しくて通いつめてるケーキ屋さんの割引チケット!
なっななな、何で持ってるの!
そしてこれを私にくれるの雷蔵…!
雷蔵が神さまのように見える。
ニコニコ笑いながら、「名前一緒に行こう」って…!


『ありがとう雷蔵…!』

「うん、素直でよろしい」

『嬉しいなぁ、ケーキっケーキっ』

「ねぇ名前、…気付いてる?」

『?』

「今週の土曜、空けといてね」

『っ!///』


私の頭をまた優しく撫でながら雷蔵は言った。
今週の土曜、空けといてね。
ということは、学校帰りでもないわけで……デートじゃん!//
でっでででデート…!!


「名前の私服楽しみにしてるね」

『わわわ…は、はいぃ!』


どうしよう。
私デートなんてしたことないよ!!






土曜日。


ついに来てしまった!
結局着てく服がなくてそれを選んでいたら、いつの間にかもう今日になっていた。


『へ、変じゃないかなぁ…』


軽く化粧をして(学校だと規定があってできないんだけどね)服もオシャレにしたつもりだけど、雷蔵可愛いって言ってくれるかな。

な、なんか私だけ気合い入れすぎてたらどうしよう。
あああ緊張する…!
待ち合わせの公園に着いたけど、雷蔵いるかな?


〜♪♪


あれ、電話?


『もしもし、』

「よかった。やっぱり名前だったんだね」


プツリ


一言言って切れてしまった携帯から目を離せば、目の前に雷蔵がいた。
って!何ですかこのイケメン!
ら、雷蔵だよね!
私服が大人っぽくて……かかかかかっこいい//


「名前いつもと雰囲気違ったからわかんなくて…電話しちゃった」

『あ、なんか、ごめんね。わかんなかったよね…!』

「ううん。いつも可愛いけど、今日はもっと可愛い」

『っ/// ら、雷蔵もかっこいいよ…!』

「ふふ、ありがとう」


だめだ。
今日私の心臓持つ気がしない。




ケーキ屋さんに入ったはいいものの、雷蔵には悪いけど私はものすごい帰りたい気持ちでいた。
確かに私の好きなケーキがいっぱいで、彼氏の雷蔵と来れて嬉しい…んだけど。
…やっぱり雷蔵は誰から見てもイケメンなわけでありまして、


「あの人かっこいい!」

「ケーキ好きなのかなぁ」

「え、隣にいるの彼女…?」

「違うでしょー」


聞こえてきてしまう。
聞きたくない周りの女の子達の声。
私じゃ雷蔵に釣り合わないって。
重々承知はしていたけど、こうもあからさまに言われてしまうと。
こう、私も落ち込むっていうか…。
で、でも、雷蔵が連れてきてくれたわけだし、楽しまなきゃ、ね!


『お、おいしいねこのチーズケーキ!あとここのショートケーキも絶品なんだよ。もう一個食べちゃおうかな』

「………。」

『ら、雷蔵…?』

「僕の彼女を悪く言われるの、耐えられないなぁ」

『あ、あの雷蔵…さん?』


ちょ、ちょっと待って。
雷蔵さん、後ろから黒いなんか出てます…!
何なに…?
ボソッて言ったからさっき雷蔵が言ったこと聞こえなかったんですけど。
とりあえず、嫌な予感がする…!


「名前、キス見せつけてあげようか、あの雌豚達に」

『?! い、いや…あの……だだだだだめだよ!//(今何て言った?キ、キス?めっめめ…?!)』








(はい、チュー)
(雷ぞ…っ、ん!//)
(………、…はぁ)
(んぁ…ん…)
(…この子、僕の彼女なんだ)
(これ以上悪く言ったら容赦しないからね)



110820

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