「ハチーっ」



愛しいあの子の声が聞こえた。

今日も一日授業をすべて終え、飯を食ってさあこの後の時間をどうするかと寝そべっていた。
いつもは大抵委員会絡みの声がかかるわけだが。

今日は特に何もない。


って、それもそのはずか。

今日の飼育小屋の当番は俺。
一年坊主たちなら何かしそうだが、俺は毒虫が逃げないように何度も何度もチェックした。


大丈夫、今日は何もない、あるわけがない。

そんなことを思ってた時に、俺の名前が呼ばれたんだ。



返事をすると、彼女は遠慮がちに襖を開けた。
両手で襖を持ち、隙間からひょっこり覗いて来た。



「ははっそんな気使わなくていいって。中入れよ」


『…はいっ』



にっこり笑ったと同時に、猫耳はふにゃりと垂れ、後ろにある猫の尻尾はゆらゆらと揺れる。
ほんと何だこの可愛い生き物は。


そもそも言っていなかったが、ここは俺とこの子の部屋だ。

さすがに見た目は猫耳、尻尾と人間ではない彼女だが、いかんせん女の子。
だから檻に入れるのは絶対反対だった。
…まぁそんなわけで、一人部屋な俺と一緒に生活することになったんだよな。


ああ、んーと、つまり…遠慮なんていらないってことを言いたい。

なのにほんとこの子は謙虚な子だと思う。



「ハチ、これ…」


『ん?お、おほー!!これ、南蛮の菓子じゃん!どうしたんだ?』



目の前に出された茶色の物体。
否、ふわふわとした食べ物。

それは先程彼女の後ろ手に隠していたものらしい。
大きいそれは俺の視界に少し入っていた。

全体は見えなかったから何かわからなかったけどな。



「作ったです…ハチ、のために」


『これお前が作ったのか?!俺の、ために…?』



「はいっ」



うわうわうわうわあああ!///


自分で一気に顔が紅くなるのがわかった。
だってお前…手作りだぞ?!

半妖でこの前まで言葉のしゃべれなかったような子が、俺のために料理を作ってくれるとか!
すっごく大変だったと思う!


しかも、俺のため、って…。

何だよもう…ほんと変な期待しちゃうからやめてくれよ…//


「あーんっ」


『っ//』


「……食べて、くれない、です?」


『ちちちち違う!食べる!すげぇ食べたい!もう一回やってくれ!!//』


「そっか!…じゃぁ、あーん」


あーん、ボーロが俺の口内に運ばれもぐもぐごくん。
……何だこのボーロ、そこらのより全然うめぇ!


輸入品だから高価なものであんまり食ったことはない。
でもそんな俺でもすぐわかった。

この子の作ってくれるものなら何でもうまいな、絶対。



『俺のために、こんな美味しいもん作ってくれて、ありがとな!』


「ハチ、幸せ…私も幸せ、ですっ」



お礼に、というには些か足りない気がするが、めいっぱいこの子の頭を撫でた。


それにしても今の言葉、反則だって…//

あああ、なんかどうしよう。
この子が可愛いすぎるのが悪い。
密室に二人っきりだし、今までは耐えてきたつもりだったけど。


この子を見てたらムラムラしてきた。
俺も健全な男の子…だしさ。
もう我慢の限界かも。



どさり。



まずは彼女を押し倒すことに成功。
目をぱちくりさせ、何が起きたかわかってない様子はすごい可愛い。

ごめんなぁ、なるべく優しくするからさ?



『な、お前を…食べてもいい?』


「とうふ、ぷれい?」


『は』



おおおおいっ、今この子何っつったああああああ?!?!
あ、何、豆腐プレイ?
ごめん耳がおかしくなったみたいだ。



「とうふ、ぷれい…ですか?」



あああああああああ!!!



俺は急いで彼女から降りると、真っ先にヤツを探しに行くことに決めた。

この子に何教えてくれちゃってんだあの豆腐小僧ううううう!!








(兵助てめえええ!!)
(うわ!ハチ、何、え?!)
(とりあえず一発殴らせろー!!)
(あ、あれは誤解なんだ!三郎のアホおおお!)









110206

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竹谷ともっと絡ませたいですね