『おほーこんなとこに居たのかー。ほらっ頭撫でてやるからこっちおいで!』



じいいいいい。



『? どうしたんだよ?』


「へ、んたい…!」


『だああああ違うって!!』




あの子が庭で蝶々を追いかけているのを見かけた私。
蝶々がヒラヒラと飛ぶと彼女もてとてととそれを追った。

その様が愛らしくて、じっと見ていたんだが、一つ悪戯を思い付いた。


あの子の好きなハチ(一番懐いてるんだよな…ほんと羨ましい)に化けること。
きっと私をハチだと思って抱き着いてきてくれるだろ!




『って思っていたんだが、』


「さぶろっ」


『バレバレ、だな』




半妖を侮っていた私の負けだ。

ハチの匂いもつけたのに彼女の嗅覚は遥かに上を行ってたよう。
ほんとお前すごいなー。

でもハチじゃなく私が来てもこの子は喜んでくれたらしい。
ニコニコ笑いながら尻尾をふにゃふにゃと降っている。


ああ可愛い。




「さぶろー、私、ひま…です。一緒遊ぶ、だめ?」




そ、


そんな上目遣いどこで習ったんだこの子はあああ!//



たどたどしい日本語もまた愛らしいいいくそっ!
この可愛さを少しでもくのたまに分けてやりたい。

あっ、でもこの子がくのたまらしくなってしまったら大問題だ。



何としてもやつらから彼女を守りきらないとな、うん。




「さぶろ…」


『ん? あぁ! 全然いいぞ今から遊ぶか!』


「はいっ」




よーし、今から遊ぶぞ!


猫って何が好きなんだっけ?
この子の興味を引くようなものってあったか?

…あ。


ちょうど庭先に居た私たちの前に猫じゃらしが生えていた。
確か猫ってこれ好きだったよな?

一つ抜き取ってこの子の前に差し出してやる。



ん、あれ反応しない?




「?」


『あれ、これ好きじゃないか?』



じっと猫じゃらしを見つめる彼女。
頭上に?マークを浮かべ私の方をチラチラ上目遣いしていた(あ、鼻血出そう…)。

うーん、だめか?



試しに猫じゃらしを振ってみる。




「! にゃ!」


『お?』


振った瞬間、彼女の目が輝き一生懸命目線で追い始めた。

右、左、右、左。


ふりふりと振ってやるとにゃーにゃー言いながら手で取ろうとする。

本来の猫の姿なんだろうけど、うわっ、何これすごい和む!




「ふあ、これ、欲しい…です!」


『そっかそっかー。じゃぁ私から取ってごらん』


「にゃふっ」




猫じゃらしの先端を上に上げ、この子の身長ではきっと取れない高さにした。
それを取るために彼女が私に必死に抱き着いて頑張っている。

にゃーにゃー言いながら涙目でこっちを見上げていて、しかもこんな至近距離。
しかも胸が当たってるときた。


これはもう、





『ああああ可愛すぎるんだよお前ええええ!!』



「にっ?!」




ぎゅうううっと力ある限りこの子を抱きしめた。
突然の私の行動に彼女はビクついて溜まっていた涙が零れる。




『すえ寸食わぬはなんとやら…いただきますっ』






「何してるのかな、変態」





後ろを振り向くとそこには超絶笑顔な雷蔵が立っていた。







101223

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今回は変態三郎のターンでしたw