新しい先生、か…。


この時期新任教師が来ることは別におかしくない。

だが、その先生は俺達の隣部屋に来るみたいで、朝学園長先生からお達示があった。



『何故教師用長屋じゃないんだ』


「確かに…なんか怪しいね」



机で本を読んでいる同室の勘ちゃんも俺と同じ意見のようだ。
教師用に住めばいいのに、何故隣なんだ?

まあ確かに隣の部屋空いてるけど。



『もしかして極度の人見知り体質とか…?』


「そんなんでこっちまで来る?」


『まあ人見知りでも何でも、豆腐好きなら仲良くなれそう』


「ほんとに…兵助は豆腐好きだね」



勘ちゃんはパタンと本を閉じ俺と向かい合わせになった。

ちなみに俺は今晩の豆腐料理の献立を考えていたとこ。
今日はおばちゃんにお勝手を借りて料理をする。


あっ、新任の先生が豆腐好きだったら作ってあげよう。

何がいいかな…。



「俺はいらないよ」


『えー、豆腐美味しいのに。 勘ちゃん人生の半分損してるよ』


「昨日食べたじゃん」







「失礼します。 隣部屋に住むことになった名字名前で…」







『! え、あ、初めまして。 五年い組の久々知兵助です』


「おっ同じく、五年い組の尾浜勘右衛門です」





ビックリした。


気配がなくて急に現れた、ということもあるけど、それ以前に、



「『(すごく綺麗な人だ)』」



長くしなやかな黒髪に華奢な顔、そして引き締まった体形。
目は宝石のように光る青、スッとした鼻にふっくらとした唇。

一瞬にして魅せられた。


きっと隣にいる勘ちゃんも同じことを思ってそうだな。
顔真っ赤だし。



「まさか…五年生が隣部屋だったとは」



綺麗な新任教師の名字先生(で、あってるよな)はぼそっと言った。

…五年生が隣だとまずいことでも?

俺はいつの間にか怪訝そうな顔をしていたみたいで「あっ、ただ驚いただけですから」と訂正が入った。



「これから隣同士よろしくお願いします、兵助くん、勘右衛門くん」


「いやこちらこそ、何か困ったりしたら気軽に離しかけてください//」


「では」



行ってしまう。


どうしてだかわからないけどもっと名字先生のことが知りたくなった。

まだ行かないでほしい。
その先生の瞳にもっと俺を写してほしい。



先生は男なのに。






『名字先生は豆腐好きですか?』






「え、豆腐? 美味しいですよね。 よく冷奴食べますよ」



先生は豆腐好きだった。


それだけで隣人としてもう満足だ。
暇があれば一緒に大好きな豆腐について語り合おう。

うん、そうしよう。


隣で勘ちゃんが溜息をついたがあえて気にしない。



『俺今日夕飯に豆腐料理作るんで、よかったら食べてくれませんか?』


「兵助くんが作るんですか? わあ、是非食べたいです」










今日は豆腐ステーキ決定だな。









100927

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乙女な兵助!