鬼灯の冷徹
ああ、わかります
ウ〜〜〜〜
ウ〜〜〜〜
《非常警報!非常警報!等活地獄より亡者一名が逃亡
直ちに全獄門を封鎖してください
繰り返します、等活地獄より…………》
ウ〜〜〜〜
ウ〜〜〜〜
鳴り響く警報の音に、鬼灯は眉をしかめるどころか、まさに鬼の目付きで恐ろしい顔をした。
「あ、そうなんですか。わかりますそう言うの」
日向はうんうん、と大きく頷いた。
「女はね、やっぱり執念深く生きなきゃだめよ」
彼女の目の前で顔が見えないほど髪の毛を垂らしている女が言う。
「執念深く生きてますよ!!けど全然脈なし、って感じで………」
がっくりと肩を落とす日向に、女はまあまあ、と肩を叩いた。
「でも案外押してだめなら引いてみろって言うわよ。私もガンガン押してから引くと、相手はその引いてるときに不安な気持ちが増幅して、次に押したときは…もうね?」
「え!?なんですかそれ!めちゃくちゃいいじゃないですか!もうかれこれ五百年は押してますし!」
「あ〜それはそろそろぐっと堪えて引いた方がいいわ。そしたら確実落ちるから」
「まじすか!!じゃあその貞子さんのやつ実践します」
日向はかぶりを振って頷きまくる。
「うん、頑張ってよ。じゃあ私そろそろ次行くわ」
貞子はくるりと踵を返し、テレビの画面へと戻って行く。
「なんか聞いてもらっちゃってありがとうございました」
「いいわよ、あんたも頑張りなさいよ」
そして和やかに手を振って別れるのかと思いきや、貞子は突然に横から白い犬に頭を噛みつかれた。
「おべしっ」
「あなた何やってるんですか。亡者と楽しくお喋りなんて、閻魔大王の補佐官がやる事じゃありませんよ」
ぴりり、と一瞬場の空気が冷え込むのがわかった。
それは鬼灯の抑揚のない低い声が耳元で響いたからである。
「ギャアアアアアア!なにこの白犬っ超怖いっ」
ガサガサと動き回る貞子の様子が、まるでゴキブリのようだ、と鬼灯は密かに思った。
「あの……ごめんなさい、まさか亡者だと思わなくて……」
日向は恐る恐る振り返り、上目遣いに彼に視線を向けた。
「そんな子犬のような目で見たってダメです」
「そ、そんなつもりは……」
ギャアアアアと貞子の雄叫びが耳障りなので、鬼灯はそこで話をやめ、一旦この場を収める事にした。