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距離感



「ハニー達、悪いけどまたね〜」

ひょうひょうとした声が聞こえた。
それと同時に黄色い声も。

私はセバスチャンに淹れてもらった紅茶を一口含んで、それをテーブルに戻す。
待ち合わせをしていたはずなのに、神子さまはいったいどれだけ私を待たせるのか。

少しイライラしながら、目を閉じた。
ガチャっと音がして赤い髪の彼が入ってきたらこう言ってやろう。




「何年待たせる気だ」



「や〜ハニー達がなかなか俺様を開放してくれなくてね」

「そのハニーより大切な女がここで待ってるじゃないの」

「俺様み〜んな大好きだから仕方がないのよ〜」

「その口縫い付けてやろうかな」

私はもう一度紅茶に手を延ばした。

「でさぁ、改まって今日はどしたの?俺様が恋しすぎて、会いに来ちゃった?」

「………」

「無視。かよ」

ゼロスはつまらなそうに向かいのソファーに腰をおろし、セバスチャンが持って来た紅茶に手を延ばした。

「しいなが帰った」

「そ、じゃ、任務は成功?」

「いいえ」

「やっぱりな」

ゼロスは何が面白いのかニヤリと笑った。

「シルヴァラントの神子とその護衛を連れて、おそらく今はこの街へ向かっているわ」

「あら、そりゃ大変」

「クルシスは?」

「さあな?」

ゼロスはしーらない、と手を上げた。

「それよりさぁ〜久しぶりに会ったんだから、ホレ」

彼はくいくいっと手招きする。
私を使用人かなにかと勘違いしてないか?腹が立つ。

「ホレではわかりません、しいなの件を伝えにきただけなので、失礼します」

立ち上がった私は、まっすぐに出口へ向かった。
広い屋敷だが、数歩も歩けばたどり着く。

が、ゼロスは私が開けようとした扉を引っ張り返し、そっと髪にキスをした。

「待てよ」

低い声で言われて、私は立ち止まる。
何かを期待していたのかもしれない。
だって彼は、何度も私を抱いたから。









「あっ……!」

まだ日は午後へと傾きだしたばかり。
けれどもゼロスの寝室は、ねっとりとした空気だった。

大きくてフカフカのベッドの上、私は彼を受け入れた。


「やっ……あぁっ……」


「いやって顔かよ…」

きっと淫らな顔をしているに違いない。
彼の手つきは慣れていて、余計なことを考える余裕など、くれない。
髪をおろした彼は好き。
白いヘアバンドのない彼の額に、私はキスをした。

それは彼をひどく驚かせたようで、キョトンとこちらを見下ろしていた。

「▽あなたの名前▽からのキスなんて、初めてじゃね?」

「そ…う…?」

一瞬止まった彼の手はまた、私の秘部をかき回した。

「ああっ…んっ」

「叫んだっていいんだぜ?どうせ部屋の外には聞こえやしない」

そんなことはわかってる。
でも彼の前で、淫らな自分をさらけ出すことが出来ない。
恥じらいってもんが、こっちにもあるんだよ、って心の中で呟いた。

彼はじゅるじゅると私のクリトリスを吸い上げ、舐めた。
その瞬間、軽くイッってしまい、ぎゅっとまくらを握る。

「イッたんだ?じゃぁ、俺も遠慮なく……」

ズブリ、ゼロスのソレが私の中を貫いた。


「…っ…ぁあっ……っ」


声にならないような吐息が漏れる。
彼と私は相性がいい。
きっとそれはゼロスもわかってる。

私だけのもに、なればいいのに。

「あんっ……あっ…ふっ…」

激しく奥を突かれ、今度は中でイキそうだった。

さっきまでの思考は真っ白になって、ゼロスから与えられる快感が私を支配する。

「あああぁっ!!」

「きもちいか?」

「き…もちぃ……い…」

そのまま私は絶頂を迎えた。
ぎゅっと目をつむり、ゼロスの肩を引っ掻いた。

「わり、久しぶりすぎて、もたね……」

彼が顔を歪めたのはわかった。
そしたらソレがドクドクっと私の中で脈を打って、種を残した。

「ちょっ……子供できちゃう!!」

私は思わず彼の胸を押し返す。
が、がしりと抱き寄せられて押し付けられた。

「▽あなたの名前▽となら、何人でもいいぜ」

「……ばか…」


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