お姫様のいない世界 | ナノ
お姫様のいない世界



いい事考えた



私はある日思いついた。
いつも食事はこの部屋で取るのだが、いかんせんひとりぼっちのため美味しい食事も美味しくない。

それで皇帝候補の権力を振りかざし、人を呼びつけてやろうと思ったのだ。

そしてその対象がフレン。


だって本は読めないし、文字については誰にも聞かない方がよさそうだし。
フレンを食事の際呼ぶように指示をし、今日はその記念すべき初めてのお食事会なのです。

いつのまにか、見張り騎士から小隊長になっていたフレン。
騎士の服装も、ゲーム序盤で見たのと同じものになっていた。


私が呼びつけた事を、めっちゃ戸惑っている様子のフレンさん。
後で気付いたけど、こういう特別扱いがきっと騎士の誰かと確執を生むことだろう。
まぁそれも、騎士団長になる男の通る道よ、彼はそういう嫉妬の類は気にしないだろうけど。


「わざわざ呼びつけてごめんなさい。一人の食事はつまらないし、友人もいないので、あなたを呼びました」

「光栄ですが……本当に私でよろしのでしょうか?」

「もちろんです、どうぞかけて」

私は笑って言った。
もう少し彼と仲良しにならないと、そもそも始まらん。

エステルって一体、フレンとなにを話していたんだろう。
私が質問すると、ユーリの事が聞きたくなりすぎて困る。

「……先日ユーリのお話をされていましたが、まさかお知り合いですか?」

と思ったら、彼の方から話を振ってきた。
そりゃ、お城にこもってるお姫様が、幼馴染の事知ってたら驚くわな。
初対面からその話は一度もしていないし、ここはさらっと流そう。

「元騎士の青年ですよね?無茶をすると、少し噂で聞いていましたので」

私は優雅っぽくみえるように、赤ワインを一口飲んだ。
そしたらただのぶどうジュースだった。
ふざけんな、こっちはとっくに成人してんだよ、エステルは確か10代だけど。
ああ、緑茶かお酒かどっちか飲みたい。タバコも吸いたい。

「そうでしたか…エステリーゼ様のところまでユーリの噂が……お恥ずかしい話です」

フレンは完璧に苦笑いだったが、ユーリを後で叱ってやろうという気持ちも垣間見得る。

「よかったら、あなたの育った下町の話を聞かせていただけますか?」

エステルだったら、ますか?とは言わないな…ます?だよね。
ぶっちゃけ普通に自分の言葉で話したいけど、なんだかそういう雰囲気でもない。
だってフレンが丁寧に話すし、と人のせいにしてみる。

「そうですね……ではどんな町か、という事から、でよろしいでしょうか?」


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