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恋を噛み砕く(2)

「わか……わかんない……けど……」
「……うん」
「…………でも……涼一にされて嫌なことは、あんまり、ないよ」

かわいい涼一をかばいたい一心で口にした。涼一は礼をするように誠実なキスを落とし、手をジャージの中に入れた。少し汗ばんだ掌に包まれ、感情が動くより先に身体が震えるのが分かった。

「んあ……っ」
「……緊張しないで」
「だ、だって」
「……やだったら言ってね」

涼一はどこまでも優しい。間違いを本格的なものにする瞬間まで、優しく上唇を舌でなぞりながら言うのだ。喉が痺れて声が漏れた。いやのは涼一でなく、女性のように甘くかすれた自分の声だけだ。

「ん、んあ、あ」
「……して欲しいことあったら言ってね」

視覚で確認するのが怖くて布団の中を覗きこめない。僕は必死になって目を閉じ、少し身体を起こした涼一のシャツを握る。僕の脳内には、いつかインターネットで見かけた衝撃的な画像がフラッシュバックしていた。


きっと涼一は、僕とああいうことがしたいのだろう。ジャージの中で蠢く手は、僕を懐柔しようとしている。


「ん、んぅ……りょ、いち……」
「洋二郎……」


ああそうか、部屋がこういう空気に濡れている時、名前を呼ぶと呼び返されてしまうのか。僕は初めて触れた行為の熱に戸惑っていた。けれどそれは、不思議だけれど「いや」ではない。

閉じた目の奥に、スクリーンが登場する。インターネット上で見た男の裸が百万画素で映しだされる。脳内のそれはいつの間にか涼一にすり替わっていた。

「あ、あ、な、んかだ、だめ」
「……イく?」

涼一がするするとジャージを脱がし、手の動きを加速した。僕は痙攣しながら、涼一の手の中に吐き出した。

「は……っ、は……っ」
「洋二郎……」

僕が息を整えている間に、涼一は手早く処理をした。そして未だ震えている僕に覆いかぶさり、きつく抱きしめた。

「洋二郎……」
「ん……?」
「洋二郎のこと、もっと気持ち良くさせたいって言ったらだめかな……」

涼一は耳元に顔を埋め、心細げに尋ねた。僕の意見を伺うようで、それでいて有無を言わさぬ力強さがあった。なぜだろう、涼一は囁くような声で僕のすべてを牛耳ってしまう。

「……言ったでしょ、そんなこと、ないよ」
「……はあ……もう……好きだなあ……」

そして涼一はキスをした。好きと言われるのもキスをするのも、もう慣れ切ってしまったことだ。それなのに僕はいつの間にか、それらで性欲をかきたてられるようになっていた。





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