■ act.3

 ゛苗字 名前 様へ゛

 シンプルな封筒が下駄箱の中へ入っていた。
 嗚呼、とうとうきたか。と思うと同時に中身も確認せず破り捨てた。どんな内容かは察しがついていたからだ。
 破ると案の定、中からカッターの刃が出てきた。
 物騒なことするもんだ、と思うと同時に溜め息がでた。


 席替えをしてから早二週間。
 相変わらず私のことを名前で呼び、懲りずに話かけてくる。
 勿論、授業も一度たりたもサボっていない。
 最近では居眠りすることもなくなっていた。
 お陰で敵意むき出しの視線は増えるばかりだった。


「はぁ」
「なんじゃ溜め息なんかついて」

 いったい誰の所為ですか、と内心悪態つくと冷ややかな目線を送った。どういう意味かすぐに悟った仁王は苦笑いする。

「ほんと注目の的じゃな」
「標的の間違いでしょ、それ」
「みんな俺たちのラブラブっぷりに嫉妬しとるんじゃ」
「ふざけないで」

 冷たく言い放つと私は席を立った。

「おい、どこ行くんじゃ。もう授業始まるぜよ」
「仁王くんには関係ない」

 それだけを言うと教室を出た。彼が私の名前を呼ぶ声が聞こえたがそれは無視した。

 もうこれ以上彼と関わりたくないのが本音だった。彼が離れないというのならば、自分から離れたら良い。
 取り敢えず1限目はサボろうと、適当に廊下を歩いていると複数の女子たちが目があった。
 きっと彼女たちは仁王のファンか何かなのだろう、目が合うなり睨み付けられた。
 それも束の間、今度は何か思い付いたかのよくにニヤニヤと笑いだした。

 正直、嫌な予感がした。まさかとは思う。
 どうか引き留められませんようにと願いながら彼女たちの横を通りすぎる。


「ねぇ、ちょっと」

 しかしその願いは叶わなかった。通りすぎる時に肩を強く掴まれたのだ。
 こんな時に限って嫌な予感は当たるもんだとつくづく思いしらされた。






(相変わらず、神様は意地悪だ)

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