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「なんや跡部、もう戻るんか?」

 忍足の言葉に跡部の方を見ると彼は教室から出ようとしていた。

「ああ、此処は煩すぎるからな」

 耳障りだと言わんばかりに顔を歪める跡部。確かに耳栓をしたくなる程、周り(特に女子)が煩かった。よくもまぁここまで騒げるものだと彼女たちに呆れていると、隣に居た鳳が小さく耳打ちしてきた。

「ねぇ、今の間に跡部さんに入部届けだしたら?」
「あ、うん」

 鳳の提案に素直に頷くと手にしていた入部届けに自分の名前と希望する部活名を書き込んだ。

「跡部さん! 待ってください」

 そして再び教室から出ようとしている跡部に声をかけた。

「あーん、俺様に何の用だ」

 面倒臭そうに頭だけを振り返えらせる跡部に名前は慌てて駆け寄ると、先程の用紙を差し出した。
 跡部は用紙を受け取るなり内容を確認した。そしてそれが入部届けだと分かると眉間に皺を寄せた。

「……お前、テニス部に入部するのか?」
「そうですけど」

 跡部の質問に頷くと値踏みするような視線を向けられた。それは何もかもを見抜くような鋭い眼差しだった。その視線に名前が少したじろぐと、跡部は鼻で笑った。

「お前みたいな奴は入部したって無駄だと思うがな」
「それ、どういう意味ですか」

 聞き捨てならない言葉に今度は名前が跡部に鋭い眼差しを送った。。

「お前にレギュラーは無理ってことだ」

 そう言い切ると跡部は名前に入部届けを突き返した。
 そして更に続けた。

「お前のスポーツ推薦時の体力テストの結果、既に俺の耳に入ってんだよ。結果は合格ラインギリギリ。そんな奴が入部したところで精々球拾いで終わる。まあ球拾いが好きなら話は別だけどな」
「っ!」

 馬鹿にしている、と跡部を除く周り全員が思った。
 球拾いで終わる、それは先程先生にも全く同じことを言われた。屈辱的な言葉に名前は唇を噛み締めた。

「おい、いくら何でも言い過ぎだろ! 言われる方の身にもなれよ!」
「そうですよ、名前に謝ってください!」

 跡部の物言いに苛立いた宍戸が彼の胸倉を掴みながら怒鳴った。隣に居た鳳もそれに便乗し、前に出て跡部に謝るよう促す。

「亮、長太郎……」

 そんな二人の言動に名前の胸は熱くなった。まだ知り合って間もない自分の為に反論してくれる。それが嬉しくて仕方なかったのだ。
 しかし跡部はそんな二人を鬱陶しそうに見た。

「あーん、俺は事実を言ったまでだ。お前らこそ何熱くなってやがる。まさかこいつに惚れてんのか?」

 まさかお前らにそんな趣味があったとはなと嘲笑う跡部に名前はもう我慢の限界だった。
 拳を震わしながら、静かに跡部の名前を発した。

「お前、いい加減にしやがれっ!!」

 そして跡部が振り返ると同時に拳を奮った。
 


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