18

 ガラリと教室の扉を開けると、二人を待っていたのは、ほぼクラス全員からの突き刺さるような視線だった。
 それも冷ややかなものだ。
 一体、二人が何をしたというのか。
 名前は面倒臭そうに溜め息を溢した。
 ふと、人集りができている黒板に目をやれば、一枚の紙が貼られていた。皆はこれを見る度に二人(特に名前)を見てくる。
 一体この記事に何が書かれているのだろう。嫌な予感がするなぁと思いつつ、黒板に向かった。

 黒板に貼られていたのは新聞のようなものだった。それを手に取ると、内容を確認した。

「なっ!」

 そして内容を確認するなり名前は目を見開かした。記事の見出しには大きく、こう書かれていたのだ。
『噂の編入生、テニス部員を次々に虜にしていく!』
 見出しの下には名前と鳳が手を繋いでいる写真。芥川や宍戸と楽しく話をしている写真が印刷されていた。
 記事の内容全てに目を通したが、殆どがでたらめだった。中には名前がテニス部に入る理由が部員目当てだとか、既に宍戸たちに手を出したとか、そんなことまで書かれていた。

「(……立派な侮辱罪じゃねえかよ)」

 ワナワナと震えると、名前は手にしていた新聞をぐしゃぐしゃに丸めた。
 今の名前は男である。
 なのにこんな風に書かれたら、周りは名前のことをホモだと勘違いする。
 現に周りからは非難の目を向けられ、陰口まで叩かれていた。思わず涙ぐんでしまいそうになる。

「(最悪だ……)」

 一体誰がこんな嘘八百の記事を。
 名前の怒りの矛先は発行者に向かっていった。

「なぁ長太郎、この記事を書いたのって誰か分かるか?」
「多分、新聞部だよ」
「へぇー、新聞部ねぇ」
「……まさかとは思うけど、新聞部に乗り込んだりしない、よね?」
「さぁそれはどうでしょう」

 笑顔で言う名前に嫌な予感がした鳳は慌てて彼を宥めた。

「名前、問題とか絶対起こしちゃだめだよ。こんな記事は放っておこう?」
「別に問題起こすつもりなんかねぇよ。でも放っておくわけにはいかない。何がなんでも記事の内容を訂正させる」

 握り拳を作りながら、唇を噛み締める名前。
 その姿に何を言っても無駄だと悟った鳳はこれ以上何も言わなかった。

 二人とも席に着けば、名前は紙に何かを書きこんでいた。きっと新聞部にどう乗り込むか、作戦でも練っているのだろう。鳳は静かに彼を見守ることにした。



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