少年は無表情のまま空を見上げた。
 真っ黒な空に少年は眉をひそめた。
 空は何十層ものの雲で覆われている。その隙間からひっきりなしに降ってくる無数の雫が緑色のコートを濡らしていた。

 昨日の天気予報ではアナウンサーが「明日は絶好のピクニック日和です」などと言っていたのにも関わらず降ってくる雨。予報とは真逆の天候に肩を落とすと頭を小さく横に振った。

 今日は国際ジュニアテニス大会(男子の部)が行われていた。丁度今は決勝戦で、しかも終盤という大事なところ。そんな時に限って振りだした雨。コートにも小さな水溜まりが出来始めていた。

 雨に打たれながらの試合は選手たちにとって辛いものだった。体温、更に体力までも奪われる。彼の体は微かに震えていた。

 未だ降り続ける雨。
 しかし、観客席は満席のままだった。雨が降り出しても誰も帰ろうとしない。寧ろ観客の興奮はピークに達していた。
 ひたすら声を張って選手に声援を送るものも居れば、興奮に立ち上がって観戦している者もいた。雨だということを忘れさせる、いや、既に忘れている程の盛り上がりをみせていた。


 盛り上がる会場の中心では、ネットを挟んで少年ともう一人の選手が睨み合っていた。
 少年は大勢の観客の声援に包まれながら、雨に打たれて湿った帽子を目深に被り直すとグリップを強く握った。
 そしてボールを空に向けて高々と上げると思いきり相手コートへと放った。
 スピードのある球だっだが相手の選手はいとも簡単にそれを返した。そこから延々と激しいラリーが続く。打っては返し、打っては返しの両者一歩も引かない接戦だった。

 相手の選手は青と白のボーダーのウェアを身に纏った、割と大柄な男子。大柄なだけに裾から見える腕はとても逞しかった。彼の返す球には力があるだけにスピードと重さがあった。
 だが、その反面コントロール性が欠けており度々ラインアウトしていた。

 そして少年はというと、太くも細くも無い標準体型であった。帽子からはみ出ている茶と黒が混じった髪の毛を一つに小さく纏めている。
 足が速く、相手に逆サイドを付かれても簡単に追い付いていた。威力は彼には劣るが、その分相手の苦手コースへと的確に打ち返すテクニックがあった。また打ち返す時のフォームも綺麗だ。

 しかし相手の重い打球と降り続ける雨に彼は体力をかなり消耗していた。現に少しだけだが返す時に小さなブレが生じていた。

 徐々に大柄な男の子が有利な立場になりつつあった。




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