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こども、ってなんでしょうねえ。

例えば、誰かに頭を撫でてもらったり褒めてもらったり抱き上げてもらったり、お菓子をもらったり視線を合わせるためにかがんでもらったり。
そういうことをされるのがこどもなら、されないのが大人でしょうか?

もしもそうなら
…むむむむ…。

「えい」

「ん、後ろからでもダメか」

背後からぼくの頭に伸びて来ていた手を取れば、手の持ち主のルルさんは「やるなお前」と豪快に笑ってくれました。
こうやって皆さんの手から逃れるようになって、既に6日。最初は怒られたり呆れられたりするんじゃないかと内心ビクビクしていたんですが、誰一人責めてくれる人はいませんでした。
怪訝そうな顔はするものの、次の瞬間にはにかっと笑われてしまいます。
……これは、何かの遊びと勘違いされている節があるようなないような!

さっきのルルさんのように背後からだったり、突然だったり、一度はタイルストンさんとルルさんの合作の罠に引っ掛かって、足を縛られた状態で宙吊りなんてこともありました。
…その時は近くにいたカリファさんがすぐに降ろしてくれて、烈火の如くお二人を叱っていたんですが…。

何はともあれ、この6日間は誰もぼくの頭に触っていない訳です。
と言っても、数日前に一度、アイスバーグさんに抱き上げられてしまいましたが。

これが大人になるための道だとしたら、なんて険しい道のりでしょう!
今まではあまり子供や大人で物事を区別したことはなかったんですが、「ガキくさい」と言われてしまうと…さすがに…!
普通だと思っていたこと、嬉しいと思っていたことが世間一般で「ガキくさい」と呼ばれるものなら、それを正すにこしたことはありませんからね。

でも。
でもですよ?
……むむむむ…!!

「ストップストップ」

「わひゃ!」

突然目の前に現れた手の平にびっくり。
顔を上げてみると、そこにはペンを片手に持ったアイスバーグさんが。

「ハルア、考え事しながら歩いてるとあぶねえぞ」

「え?」

「窓から見てたんだが、難しい顔しながらひたすらに真っ直ぐ歩いてたぞ」

ほら、とアイスバーグさんがその場から一歩どくと、そこにあったのは倉庫の壁。
こ、このまま進んでいたら思いっきりぶつかっていた訳ですね…!

「ありがとうございますアイスバーグさん。考え事をしていて…」

「それは良いんだがな、明日は何か用事でもあるか?」

「明日、ですか?」

明日、明日?
考えてみても特に約束もなく、ルッチさんたちに昼食を届けてお店を手伝って…。でもアイスバーグさんが聞きたいのは、きっとそういう普段通りのものではないですよね。

「明日もいつも通りですが、何かあるんですか?」

「ンマー、いや、それなら良いんだ。変なこと聞いて悪いな」

「いえいえ!変なことだなんて!」

「……おっと、いけね」

「?」

急にアイスバーグさんが振り返ったので、何事かと思いましたが、倉庫の向こうから聞こえるのは「アイスバーグさんを見ませんでした?」……カリファさんの声ですね…。

そう言えばペンを片手に持っていらっしゃると言うことは、もしかしてお仕事中…ですよね?

「さすがカリファ、出て行くとすぐにばれるな」

「すいません、ぼくがぼんやりしていたせいで…」

「ははは、お前のことがなくてもどうせ抜け出してたさ!」

いえ、それもどうかと思いますが!!
自由奔放な方ではありますが、そうはっきり言ってしまうのはどうでしょう!
そこがアイスバーグさんの良い所で素敵な所でもあると分かりつつ、ヒールをならすカリファさんのことを考えるとどうして良いものやら。

「じゃあ気を付けて帰れよ?どこかにぶつかってころんだりしたら、俺らがブルーノに睨まれちまう」

からからと笑って差し出された右手は、おっと、の一声でぴたりとストップ。
こちらも頭に伸ばされていたそれを受け止める準備をしていたので、どうしたのかと様子を窺うと、また伸びて来た右手は今度は頬へ。

「ンマー!こっちなら良いんだったな」

ざらりと頬を撫でたのは、どうやらアイスバーグさんのおヒゲ。
アイスバーグさんにちゅーしてもらうのは初めて?と思い付いた頃には、既にその姿は建物の陰に消えてしまいました。
……すぐ傍まで来ているカリファさんに何て言いましょう…。


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