56-1 [ 12/40 ]

※今回も前回の55と同様に、少しだけ2万打でいただいたリク小説、「人の口には」と微妙にリンクさせてあります。




待って待って待ってちょっと待って、
な に い ま の
えーっと今何時だ?時計ないわ。なんかあれだ、9時くらい。たぶん。

俺の片手には電伝虫の受話器、もう片手には忌々しい新聞記事が。
ちょっとしたアクシデント(の割にはこっぴどくしぼられたが)で、俺があらぬ疑いをかけられた時のものだ。
……思い出すだけで頭が痛くなるね、ホントにさあ…。

まあそのことについて、つい先日W7に送り返したばかりのハルアちゃんに連絡を取った。
取った、ら。
…なんか、結構すごいこと言われたんだけど、おじさんどうしたら良いわけ?

『心配はいりませんよ、これからずーっと一緒にいるんですから。
…大事に、大事にしてもらうんです』

どこか言い聞かせるようなあの言葉、何度思い返してもハルアちゃんの声に間違いない。
……んだけど、この気持ち悪い違和感は何だ?え?ロブへの殺意的な?あ、そういうあれなら納得できるわ。うん。

会話からして、例の記事については何も知らなかったようで助かった。まあ相当念入りに回収したらしいから、こんな所だけ海軍の規模に感謝。
そのことは安心できたけど、もう一回言っておこうか。
…なんか、結構すごいこと言われたんだけど、おじさんどうしたら良いわけ!?

「ハルアちゃん、そのセリフは意味深すぎるって…」

「なにがだぁーい?」

「…もう慣れたわ、その登場方法…」

いつの間にやら当然のようにソファに座っているボルサリーノの言葉を、ひらりと手を振って流した。
ハルアちゃんのことだと、気持ち悪いくらいに出現率が上がるんだからこいつは。

「さっきの会話、まるでハルアちゃんに誰か決まったお相手がいるみたいだったけどぉ?」

「聞いてたのかよ!!いつからいたんだあんた、最初からか!?」

「クザンがコールしようかどうか小一時間迷ってるあたりからかなぁ〜?」

「最初の最初からじゃねえかおい」

「わっしもお話したかったのにねぇ」

「今になって出て来てよく言うな」

「で、誰?」

誰、と言われても。
W7に潜伏任務中のCP9の殺戮兵器、なんて言えるかって話。
あのバカと仲直りはできたみたいだったけど、あの言葉では、まるで二人が。

「良く分からないけど、もしかしてもう両想いなのかぁい?」

「え、ないないないないない」

「オー…必死だねクザン…」

確かにさ、ちゃんと仲直りしたみたいだけど。
なんか妙に親密度アップを匂わせる言葉も聞いたけど。しかも大事にしてもらうとか言ってたけど。
更に、どうやら一緒に寝てたみたいだけど。

りょう、おもい、とか!!

「ねえわ!」

「(プルルル、ガチャッ)あ、ハルアちゃん?」

「って何してんだあんた!?」

本当に何してんのボルサリーノ!?
もしかしなくてもハルアちゃんに電話しやがったなこいつ!

自由すぎる行動を止めようとするも、ニッコリ笑って人差し指を向けられてはそうも行かない。覇気はやめろ、覇気は!
さっきの俺との通話から既にそれなりの時間は経っているが、まだこっちが整理できてないのに掘り起こす気かこいつは。

「はいおはようハルアちゃん、わっしも元気だよぉ〜?」

呑気に笑いながら挨拶をするボルサリーノは、さながら孫と会話する父。…いや、祖父か。
あの子がこっちに滞在した短期間で、随分とまあ懐いちゃって。
受話器越しのあの子の声は良く聞こえないけれど、いきなりのボルサリーノからの連絡で驚いていることだけはよく分かった。

「うんうん、ちゃんと帰れたんだねぇ。偉い偉い」

「(ひそひそ)おいこら、ボルサリーノ…!」

「んー?何でも無いよぉ〜。ところでハルアちゃんに聞きたいことがあるんだよねぇ」

こいつ!
これで、あいつと両想いになりました!なんて報告されたら、俺どうしたら良い訳?チャリ漕いででも殺りに行けば良いの?え、マジでしちゃうよ、俺。

「さっきクザンと電話した時のことなんだけどねぇ」

え、マジに両想いだったとしたら、どうなったの?
あのバカはハルアちゃんに腹立つくらいに惚れてるんだから、もしそんなことになっていたら、何を、するか。

……一緒に寝てたぞ、そういや。


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