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それは、まさか、いや、さすがに、え?あれ、ああ?
「…あれぇ、うん、そうそう、おかしいねぇ〜」
「ボルサリーノ、ちょっと電話変わっ…」
「ちょっとクザン〜」
「ああ!?」
「ハルアちゃん、君と電話で話したりなんかしてないって言ってるよぉ〜?」
「…は?」
じゃあまたね〜、と笑って受話器を置いた(あ、この!)ボルサリーノは、不思議そうに首を傾げている。
俺とハルアちゃんの通話は、ボルサリーノも聞いていたらしいから俺の夢だったなんて話じゃないはずだ。
……それなのに、俺と話してない?
…もしくは、忘れてる?
…もしくは。
「寝惚けてたか!」
「え。そういうことにしちゃうのぉ?」
「あーはいはい、納得いったわ。そりゃまあ、あの寝坊助で眠り姫なハルアちゃんにこんな朝からかけた俺が悪いな、うん」
「…クザン、君無理やり事を収めようとしてるでしょぉ」
これであの妙な違和感や、ハルアちゃんの言動にも説明がつく。寝惚けてたんならしょうがないよね。
…全然説明ついてないなんて言った子、ちょっと前出ておいで。
+++++++
「…?あの、ぼくクザンさんとは今朝は何も…」
ルッチさんとの奇妙な入れ替わりが元に戻り、変わったことと言えば額の湿布くらいです。
まだ少しだけ痛むそれを撫でて、受話器の向こうのボルサリーノさんの不思議そうな声に、こちらも首を傾げるばかり。
ボルサリーノさんから連絡がきたことにはビックリでしたが、ぼくは今朝はハットリさんがジャブラさんに食べられかけるという、色んな方面に失礼な夢を見ていて、クザンさんからの連絡を受けた記憶はありません。
「本当に今朝のことなんですよね?」
『…あれぇ、うん、そうそう、おかしいねぇ〜』
お互いに不思議に思いながらも、二言三言の挨拶を交わして受話器を置きました。
どうしたんでしょうか、クザンさんももしかしてぼくのように夢を見ていたとか?
何にしても、ボルサリーノさんの話では皆さん変わらずにお元気だそうです。(まあ、聖地から帰ってからほとんど日は経っていませんが…)
「おーい、ハルア−」
「はーい!」
一階のブルーノさんから声がかかり、階段を下りて行くと卵の焼ける良い匂いが。
「今朝のドタバタでまだ食べてなかったろう」
「朝ご飯!忘れちゃってました…」
「それを食べたらちょっと頼めるか?」
「はい、もちろん!」
お使いらしきメモを書いているブルーノさんにいただきますと声をかけて、綺麗に焼かれたオムレツを一口。
きっとこの後はいつものマーケットに出て、おじさんやおばさんたちに挨拶をして回ることになるでしょう。
お買い物が終わるころには、マイケル君とホイケル君にばったり会えるかもしれませんね。
少しだけ港の方へ歩けば、フランキー一家の皆さんとも会えるでしょう。…きっと二日酔いの方が続出していると思いますが…。
その後はブルーノさんとお昼ご飯、その後はガレーラへお弁当を届けに、その後は…。
「…いつもと同じ味付けなんだが、どこかおかしかったか?」
「え?いえ、今日も美味しいですよ?」
「なら良いんだが、珍しくニヤけてるから」
ニ、ニヤけて…!?
言われ慣れない言葉にむせかけてしまいましたが、言われてみると、確かにオムレツを食べながらも口は笑っています。
久しぶりに帰って来た日常に、心のどこかではしゃいでいるのでしょうか。
思えば、ブルーノさんの手料理も久しぶりです。
このブルーノズ・バーも、自分の部屋も、今座っている椅子も、考えてみればご無沙汰でしたね。
言ってしまえば、今の日常も実は“非日常”なんですが、それでもやっぱり嬉しくて楽しみで、椅子に座っているせいで地面につかない足をお行儀悪く揺らしてみたりなんかして。
昨日も何度も口にしましたが、心の内でも更に何度でも繰り返しましょう。
ただいま帰りました、これからもよろしくお願いします!
ああ会いたかった、ぼくの日常!!
愛すべき非日常な日常の風景
「(そわそわうろうろ)」
「クザンの奴は何をしちょるんじゃ」
「ハルアちゃんに電話したいのにできないでソワソワしてるんだよぉ〜」
「…どこの尻の青い坊主じゃ、そりゃあ」
「かけてみて、またあんなこと言われたら俺今度こそどうしたら良いのさ!」
「あの時は寝惚けてたって結論付けたじゃないのぉ〜」
「…訳が分からん…」
あとがき
クザンさん、葛藤の巻(笑)
入れ替わりも一段落して、ただいま日常!
日常を過ごしながらも、すこーしずつ色んな部分で動き出して行きましょうか。あくまでゆっくりこっそりとですけどね。ふひひ!
管理人:銘
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