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「ほら、まだあそこにいるじゃねえか」

「「「!」」」

フランキーが顎で示した方向には、たしかにゆらゆらと尻尾を揺らしながら歩く、さっきの黒猫がいた。

「猫なんかより、俺たちの共同開発のこのダンボールカルヴァリン砲を見よ!俺が率いる屈強な500の兵すら一瞬で吹き飛ばせる想定でだな」

「「「ありがとう(ございますっ)」」」

長くなりそうな話をさらっとスルーして走り出し、振り返って礼を言いながら手を振れば、ウソップの話に適当に相槌をうつフランキーだけが振り返してくれた。
夕日は今にも隠れてしまいそうで、校内放送で下校の物悲しい音楽が流れ始めた。

「もうそんな時間か。急がないと」

「父上に連絡しておけば良かったです」

「そうですねえ…あ!あそこに入りましたよ!」

するりと入った先は校庭の隅にある体育倉庫。3人も後を追って中に入り、すぐに扉をしめる。倉庫内にあった懐中電灯を点けてみると、猫はホコリをかぶったマットの上でのんびり横になっていた。

「やっと追いついた」

「×××くん、ついにシャッターチャンスですよ」

「分かってる。…撮れた」

追走劇の果てに手に入れた写真を弟の携帯に送信し、画面に『送信完了』と出たのと同時。
ガッチャン

「「「!!」」」

ばっと扉を振り返れば、遠ざかって行く足音。
確認するまでも無く、3人はお約束とばかりに見事に閉じ込められた。
今度は猫の方に振り返ってみると、お気の毒様とでも言いたげに一声鳴いてから、換気窓からするりと出て行ってしまった。この換気窓、壁の高い位置にある上に格子まではまられているので人間にはどうしようもない。

「あーあ」

「えっと…どうしましょうか…」

「普通に携帯で誰かに連絡すれば…あ」

「「え」」

「…もともとそんなに電池無かったけど、ずっと開いてカメラ起動してたから切れた」

「…ぼく、登校した時に職員室に預けたままです」

右に同じくと○○○が頷いて見せると、しん…と流れる気まずい空気。
更に追い打ちをかけるように、点けていた懐中電灯までがチカチカと電池切れを訴え始めた。
×××が無言で扉を殴ると、倉庫内に鈍い音が響きはするものの扉は無傷。逆に地味に痛い拳を無言のまま見つめる×××の肩を、***と○○○の2人がそっと叩いた。

・・・
・・・・・・

時間は経って、しばらくもしない内に倉庫内は真っ暗になってしまった。
近くに照明も無いので光はさしこまず、外に人の気配は無い。

「ブルーノさん、連絡も無しで心配してくれているでしょうか…」

「父上も…帰れても夕飯抜きにされそうです」

「うちもシャンクスと弟が大騒ぎしてそうだ」

泣いたり混乱する者がいないおかげで空気はまだ穏やかだが、時間が過ぎると共にじわりじわりと焦りが出る。3人共自分たちの心配ではなく、保護者や家族の方に気をつかっているあたり、大人なのかずれているのか微妙なラインだった。
しかし不思議なことに、そういう時間が長く続くと、諦めにも似た落ち着きが戻って来た。

「まあ明日にはまた誰か来ますもんね」

「この時期なら夜もまだたいして冷えませんし」

「と言うか、教室にカバンがあるんだから誰か探しに来てもおかしくない」

だからまあいっか!という謎の雰囲気になったその時、誰かが校庭を走る足音が聞こえた。
それも大人の、複数の足音。しかもものすごい速さで。

「誰か気付いてくれたんでしょうか?先生方ですかね」

足音は迷うことなく扉の向こうに辿り着き、開けようとしたがガシャンとチェーンがなっただけだった。どうやら鍵は持っていないようで、扉の向こうで言い争うような声がしたと思えばすぐにやんだ。

ばきゃんっ

「「「!?」」」

勢いのつきすぎた扉が派手な音を立てて全開になり、力任せにちぎられたらしいチェーンと南京錠が床に散らばる。扉を開けた3人の大人は、誰もかれもが顔の傷やら鋭い目つきやら、保護者とは思えない顔つきで息1つ乱さずに平然とその場で子供たちを見下した。

「***、遅くなってすまない」
「クハハハ、手間かけさせやがる」
「×××−っ!心配したんだぞ×××−っ!!」

「ルッチさん!」
「父上…」
「シャンクスうるさい」

それぞれが相手に抱き付いたり抱き付かれたりしながらほっと一息吐いていると、遅れてやって来たセンゴク校長が静かに破壊された扉と錠を指さした。すう…っと逸らされる大人3人の視線に、子供3人はとりあえず説教に備えて耳をふさぐことにした。


入ってますか、スーパー保護者セキュリティ


「***の保護者のロブ・ル」
「保護者のブルーノです。こいつはただの常連客です」
「むむむ、本当にごめんなさい…っ!」
「「いや、無事で良かった(背中側で拮抗中)」」

「ニコ・ロビンが校庭で見たって言うんでな」
「申し訳ありません。…夕食を抜く覚悟はできています」
「はっ、そこらでまだ走り回ってるダズを拾って食いに行くぞ」
「!…はい父上」

「お前が送った写メに『創立100周年』って幕が見えたからよ」
「ああ、それで」
「俺もあいつも心配したんだぞ×××−っ!!」
「うるさいって。……ありがとうシャンクス」



あとがき
Super Protector Security !!

「双子きのこ」のすばる様との合同企画で書かせていただきました!倉庫の扉をばきゃーん(笑)して、逆光でどどんと立つ保護者たちが書きたくてやらかしました。
もう少し短くして綺麗に纏めようと考えていたのに、「麦わらの一味を全員出す!」と思い付きで書き上げた結果がこれです。バカ!でも満足!

すばる様、つばきくんの捏造祭り失礼しました…っ!!(久々のジャンピング土下座)
校内を3人並んでとことこ歩く姿を考えるのが楽しくて楽しくて…。
 この度は素敵な企画にお誘いいただいてありがとうございましたー!

管理人:銘


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