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「最近校内で猫をよく見かける。見かけても無闇に近付かずに教員に知らせろ。良いな」
海原学院初等部4年生のとあるクラスで、いつもながら子供に教える人間の目付きをしていないミホーク先生が黒板の字を消した。
既に時刻は夕方で、終業後のホームルームももう終わる。
「猫かー。猫じゃ食えねえなー」
「ルフィ、当たり前でしょ!先生、猫を捕まえたら賞金とか出ないの?」
「んナミさんのためなら、俺は愛の猫ハンターにだってなるよーっ!!」
「うるさいぞ麦わら共。寄り道をせずにっさと帰ることだ。では、解散」
「「「先生さようならーっ」」」
きゃあきゃあと騒ぎながら教室を走り出る者と、これから部活動のために準備をする者とに分かれて、あっという間に教室内の子供の姿が少なくなる。先生ももう職員室に戻ったようで、いっきに教室よりも廊下や校庭の方が騒がしくなった。
そんな中で、まだ教室に残っているのは3人。
「***は部活には入っていなかったはずですが、今日はどうしてまだ教室に?」
「えへへ、実は猫さんがいると聞いて、帰る前にちょっとだけでも見られたらなあ、なんて…。○○○くんは?」
「ぼくは今日はダズさんに迎えに来てもらうか歩いて帰るかで迷ってました。でも猫探しの方が面白そうですね」
「…それ、俺も一緒に行って良いか」
それぞれ、短い黒髪によく笑う***と、黒髪をオールバックにした○○○。最後に、2人と同様に黒髪だが横髪に紫のメッシュを入れた×××。
「もちろんです!×××くんも猫さん好きなんですか?」
「俺も好きだけど、弟が今日熱出してるから、写真でも撮って帰ってやろうと思っただけ」
「それは大変です。早く見付けて帰ってあげないと」
「むむむ、3人で探せばきっとすぐに見付けられますよ」
「ん、助かる」
普段から仲が良い訳ではない3人だったが、興味からの猫探しに×××の理由が加わったことで一体感が生まれていた。
他のクラスメイト達(特にルフィあたり)に比べれば妙に精神年齢の高いこの3人だが、揃って動物好きなようで、秘かにむずむずと猫を楽しみにしていたりする。
とりあえずカバンは教室に置いておいて、さあ探検出発と教室を後にした。
「ヨホホホ!また珍しい面子ですねえ。放課後のお散歩ですか?」
「ブルック先生、どこかで猫を見かけませんでしたか」
「おや、猫さん探しでしたか。それならさっき渡り廊下の方で…」
「「「ありがとうございましたー」」」
音楽室の生きる怪談と親しまれているブルック先生に早々に別れを告げて、背後からの「遅くならないようにねー」という声にも揃って返事をした。
軽い足音を響かせながら渡り廊下に出ると、視界のはしにゆらりと揺れる黒いものが。
「いた。猫だ」
×××が素早く携帯を取り出して開くと、その音に気付いたのか、ぱっと一瞬だけこちらを見た猫は立ち上がって中庭の方へ歩き出した。
「追いましょう。さいわい走り去る気はなさそうです」
○○○の言葉にうなずいた×××が渡り廊下から外に出ようとすると、2人の袖がくんっと引かれる。何事かと振り返れば、申し訳なさそうに袖を握る***が。
「えっと、あの、靴…変えに行きましょ?」
「「……」」
少し、間を置きまして。
急いで下靴に履き替えて中庭に出ると、そこには猫の代わりに保健医のチョッパー先生の姿が。
中庭にある花壇の1つに薬草を植えているらしく、可愛らしい象さんジョウロで水をまいている最中だった。
「お、なんだお前ら。今日の水やり係りか?」
「いえ、猫を探しているんです(さわさわ)」
「こっちに来ませんでしたか?(もふもふ)」
「日が暮れそうだな(なでなで)」
「聞きながら触りすぎだ!!」
「「「可愛くて、つい」」」
「か、可愛いなんて言われても嬉しくねえよばかやろーっ!!」
言葉の割に思いっきり笑顔になるチョッパーが言うには、猫は中庭を突っ切って門の方へ行ったらしい。
まだくねくねと照れているチョッパーに礼を言い、校外に出られると面倒なので駆け足でそちらへ向かう。
校門前で奇跡の校内迷子中だったゾロに聞くと、猫は外には出ずに校庭の方へ向かったと教えられた。
校庭に向かうと、図書館司書のロビン先生が校庭の奥へ歩いて行く姿を見たと言う。
更に奥へ進むと、ウソップとフランキーの2人が何やら謎の兵器チックなものを組み立てている。
彼らにも猫の行方を聞くと、今さっきここを通って行ったらしい。
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