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(……いい島、だなぁ。)

黒猫のような耳としっぽ、少年のように短い髪を弾ませて○○○は1人この草花に彩られた街並みを歩いていた。
……麦わらの一味の小さな船員でもあるこの少女の側には心配性なコックか剣士が居る事が多いのだが、二人とも都合がつかず今日は久しぶりの1人の散策だ。(この島なら治安も良いみたいだし、問題ないでしょ?とは航海士の弁。)
滞在して早二日目。ログはまだ貯まらないらしいこの穏やかな島を気に入った○○○は暫く滞在していたいなー、なんて思いながらしっぽを揺らす。
今日はどこを見ようか。……あぁ、そういうばチョッパーが珍しい薬草を沢山取り扱う店を見つけたって言っていたっけ。サンジもケーキ屋が軒並み並ぶ小道を見つけたって言っていたっけな。……ナミがかわいらしい服が沢山有るお店が有ったわよ?って言ってたけど…それは別にいいかな、何て思案を巡らせれば、この街にそぐわない荒々しい音が○○○の耳を震わせた。

(………?!…何だろ…、ケンカ…?いや、もっと嫌な感じがする……!)

……きっと、剣士やコックが居れば『1人で行くんじゃねェ!』と止めたに違いない。
だが、○○○はぺた、としっぽを揺らすと喧騒の方角へと一気に駆け出した。


「ふわあぁ…!このショートケーキ、凄く美味しい…!」

「やっぱショートケーキはケーキの王様だよな…!うめェ!!」

「モンブランも美味いのう…!」

……和気あいあいとケーキを突きあう3人を眺めながらルッチは苦々しくコーヒーを啜る。
邪魔だ。おまえら。オレと***の甘い一時を邪魔するな。どっか行け…!と約2名に対して念じれば、ぱち、と***と目が有った。

「ルッチさん!本当にこのケーキ、美味しいですよ?一口食べてみませんか?」

「……っ!…ポー…!」

はい、あーん。と邪気無く差し出された、一口分のそのケーキ。
ケーキなんかよりもずっと甘いそのシチュエーションにニヤニヤと口元が緩むのを押さえきれない。(うわ、ルッチ…!その顔、気持ちわるいのう…!というカクの呟きは残念ながら届かなかったようだ。)

……しかし。ルッチがそのケーキを口にすることは叶わなかった。

ガシャン!!!
いきなり割られた窓ガラス。
……びくっと震えた***の、その手にしていたスプーンがカシャン、と床に落ちた。
ガラスの割れた耳障りな音に目を向ければ…、下卑た笑みを向ける男共の集団。
……また邪魔者が…!とルッチは眉根を寄せ、カクやパウリーも何事か、と身を強張らせた。
金目のモノを出せェ!と喚き立てる男共に***は顔を青くする。
思わず目を血走らせれば、「ルッチ、」とカクに小さく名を呼ばれた。

「……パウリーがおる、***もおる。……あまり派手な真似は出来んぞ…?」

「……わかっている。」

……自分たちは、重大な任務を遂行するべく、身分を偽りウォーターセブンへと潜入中なのだ。“本来の力”は使えない。
だが。
ルッチとカクが2人にしか聞こえぬ程の小声で会話を交わした、ほんの僅かな隙をつかれた。

「ひゃぁっ?!!」

「!!!***!!」

***の身がニタリと笑う男に拘束された。
「こいつぁ人質だぁ!!」と***を抱え上げ叫ぶ男にルッチが殺意を剥き出しに男へと向かおうとしたその時。


「……その子を離せっ!!」

「っ!?うぎゃぁっ!!!」


鋭く投げつけられたナイフが男の手に刺さり、男は痛みに敢えなく***を手放した。
尻餅を付いた***の側を小さな影が横切ったかと思うと、次の瞬間、男は鳩尾に強烈な蹴りを見舞われその身体は壁に叩きつけられる。


「な……?!」


男共にどよめきが沸き起こった。
……そこに居るのは、人質になりかけた少年と然程変わらぬ年頃の黒猫のような小さな子ども。

「……平穏で、凄く良い島なのにさ、こんな騒ぎ起こすなんて……、おじさんたち、空気読めてないんじゃない?」

ぺた、と不機嫌そうに黒いしっぽが揺れる。
淡々としつつも、何処かバカにしたようなその言葉に男共は「何ぃ?!」と目をぎらつかせた。

「オメーら!相手はガキ1人だぞ?!やっちまえ!!」

「……子どもだからって、ボクをなめないでよね…!」

飛び掛かる男たちにターコイズブルーの瞳が冷たく光る。
1対多数、しかも***とそう変わらぬ年頃の子どもに慌ててパウリーやカクも加勢しようとしたのだが…、子どもはナイフと強烈な蹴りを用いてあっという間に男共を薙ぎ倒してしまった。

(ふわあぁ…!すごい……!!)

***が尊敬の眼差しでその子を見つめれば、ふぅ、と息を吐いたその子と目が合った。

「……だいじょーぶ?」

「……あ!は、はい!大丈夫です…!えと……あなたのお名前…は…、」

「ボクは…、○○○、とか、×××って呼ばれてる。」

「ちびねこさん…!ぼくは***って言います!……助けて下さり、ありがとうございました!!」

礼を述べながら***は思わず○○○の頭部からぴょこりと生えた猫耳とゆらりと揺れるしっぽに目が釘付けになってしまった。

(ねこみみ……!それにしっぽ……!!)

ふあぁ…!なんて!なんて!触りごこちが良さそうなんだろう…!と動物好きの***はその目を輝かせる。

「おまえさん、そんなにちびっこいのに随分強いんじゃのう…!!」

礼を言う、ありがとな!とカクが笑えば照れたように○○○のしっぽが揺れた。

「………………。」

ルッチはただただ悔しそうに唇を噛む。
……せっかく***が差し出してくれたケーキを口に出来なかったうえに、***のピンチを格好よく救うチャンスも潰されたのだ。
不機嫌そうなオーラを充満させたまま***を見やれば、「…あ、あの…!○○○さんのお耳、さ、触らせてもらってもいいですか…?」と***はキラキラとした眼差しを○○○へ向けていた。

「ん、別にいーよ?」

「ひゃあぁ…!ふわふわ…!!」

「……へへ、ちょっとくすぐったい、ね…!!」

嬉しそうに笑う***とはにかむ○○○の微笑ましい光景にカクもパウリーも思わず笑みを溢したが、ルッチだけは苦虫を噛み潰したように眉間に皺を寄せた。

(……オレだって…!獣人化すれば耳はふわふわだぞ…!)

あの笑顔も、その小さな手のひらも、オレに向けられる筈のモノだったのに。
ぐぅ、と低く唸れば、「……ルッチ、子ども相手にヤキモチなど見苦しいぞ?」とカクの声が響いた。



《その後のおまけ。》

「しっかし、凄ェ強いガキだったなぁ……。」

「ですよね、パウリーさん…!ぼくと同じ年齢位で、女の子なのにあんなに強いだなんて……!ふわあぁ、憧れます…!!」

「「「!!!??」」」

「あれ…皆さん気付いてなかったんですか?」

「え…!だってあのガキ、“ボク”って…!?」

「た、確かに中性的な顔立ちだったがのう…!じゃが、あの容姿であの口調じゃ、女の子だと見抜く方が難しいちびっこだったぞ?!」

「(***に…ガールフレンド…だと……?!)」

「いつかまたお会いしたいですねー…!○○○さん…!!」

「……………(ぎりぎりぎり)」



「ただいまー!」

「おぅ、お帰り、○○○…って何か随分薄汚れてんじゃねェか?」

「……何か有ったか?」

「(びく!)え、えと……!何も、ない、よ?……んと…ちょ、ちょっと…ひと、だす…け…?」

「「……へェ、そうか…。(……また何か…無茶しやがったな…。)」」




我が家がお世話になっているランキング、「海の幼子」にてご一緒させていただいている、「ちびーず」のみのらん様から頂いちゃいました…!!
休日デートだなんて、頑張りましたねルッチさん!!
その割にとっても残念でしたねルッチさん!!
何もかも持って行かれて可哀想ですねルッチさん!!

所々の少年とルッチさんの絡みにきゅんきゅんして、更にちびねこちゃんと少年との絡みにもきゅんきゅんして…!!もう心臓と頭が大忙しでした。幸せ…!
もう可愛い!!2人まとめて撫でまわしたいですねルッチさん!!(しつこい)

みのらん様ー!!この度は本当にありがとうございましたー!
これからもこっそりstkさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたしますー!!

管理人:銘


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