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「アブサロおおおおム!そこに立て!立ってるだけで良い!」

背後からなんだかよく分からないことを言われたかと思うと、何かがすごい勢いで背中に激突してきた。衝撃に咳き込みながら文句を言おうとしたら、何かは素早くアブサロムのコートの中に潜り込む。

「おいてめっ、ガルルルル何してんだくすぐってえ!」

「黙れ喋るな!…来た!」

「ホーロホロホロホロ!どこ行きやがったなまえ−っ!!」

着せ替えさせろコノヤロー!と凄いスピードで横切って行ったペローナとその後を追うクマシーに、とりあえず事情は分かった。可愛いもの好きなあのゴーストプリンセスのお気に入りは、今彼の背中にガタガタ震えながらひっついているところだ。

「行ったか!?行ったな!?」

「まーた逃げて来たのかおめーは。追いかけっこは良いが、おいらを巻き込むんじゃねえよ」

「うるせえなこのエロサロム!てめーもレースたっぷりのフリフリでブリブリな服着せられてみろボケ!!」

もぞもぞとやっとコートの中から這い出してきたのは、アブサロムの半分ほどの背丈しかない子供。ただし、ライオンの顎を持つ彼の隣に立っても違和感が無いほどに、その子供もまた異様な姿をしている。
癖のある黒髪からは山羊のツノと耳が生え、サルエルパンツから伸びているのは山羊の足。腰のあたりにある小さな翼は今は出していないようだが、黒く長い悪魔の尾を辺りを窺うようにゆらゆらさせている。
釣り目の大きな目はよく見れば瞳孔が横に伸びており、体中のいたるところに山羊の要素を含んでいる。そんななまえは、アブサロムのようなホグバックの手による異形ではなく、立派な(?)正真正銘の悪魔だったりする。

「あ、ペローナのやつ戻って来たぞ」

「っっ!!!!!!!!!」

「嘘だ嘘!ジョーク!悪かったからコートの中に潜り込むのはやめろ!」

「燃やすぞてめー…!!」

本気の目で、鋭い牙の除く口から黒い炎を燃やす姿はまさに悪魔。
しかし2本あるツノの片方にはピンクのリボンが結ばれており、いまいち迫力に欠けるところが惜しい。

「ぶふふ、そのリボンはペローナか?」

「笑ってんじゃねえぞコラ。1つくらいはしておかねえとネガティブホロウ連発してくるんだよ、ペローナの奴」

「良いじゃねえか可愛くて。使い魔は主人には従順じゃねえとな…ぶふっ!!」

「良い度胸だおい燃やす!髪から燃やす!!あと使い魔じゃねえって言ってんだろ!!」

いつだったか夜討ちした船の1つに、大量の書物を積んだ船があった。
その中には何やら降霊術やら呪いやらと怪しいものが多く、ほとんどは捨てられたようだったが、数冊を興味本位でペローナが持ち帰った。
そして最近になって、彼女はやらかした。

「あんな適当でお粗末な魔方陣で契約もクソもあるかっつうの…」

「あの時はびびったなあ…。ペローナの興奮ぷりもさることながら、ホグバックの興味津々っぷりには引いたぜ」

「おう、あの変態医者なら、今朝の内にシンドリーと一緒に皿割りまくってやった」

「変なとこで結託してんなお前らは…」

「シンドリーはプリンくれるからな。皿に出さずに容器のまま食えば問題ねえし」

「この腹ペコ魔人め」

そう言いながらもポケットからチョコレートを出したアブサロムに、なまえは目を輝かせて両手を差し出す。
墓場の暗い雰囲気もあって、まるでハロウィンのようだと思いながら、ご機嫌でチョコレートを受けとるなまえの柔らかい髪をもっふもっふと撫でてやった。
胃袋が魔界に繋がってるんじゃないかと疑わしいほどのなまえは、こちら(人間界)で活動するための力の供給のほとんどを食事でまかなっているらしく、そのためかどうにも餌付けされやすい。


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