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「ぶわっはっはっはっ、まだまだへなちょこじゃのうお前らぁ!鍛錬が足りんわ!」

「いっででで…コビー生きてるか…!?」

「あはは…な、なんとか…」

海軍本部の片隅で竹刀を握る3人のうち、若い2人はずたぼろの身体をなんとか地面から起こした。
豪快に笑うガープに、雑用への指南とは思えない程厳しい手ほどきを受けて、もうへろへろ。おまけにとんでもなくドロドロなので、シャワーを浴びて着替えをしなくてはこの後の雑用業務にかかれない。

「なんじゃ、別にそのままでよかろう!どうせ着替えても夜までには雑用でドロドロじゃろうお前らは」

「そうはいきませんよ。こんな格好で本部内を歩き回る訳にはいきませんし」

「だよなぁ、それに自分で床を汚してちゃ掃除にならねえし」

少し前までは掃除を真面目にすることなど考えられなかったヘルメッポも、とある一件から海軍本部に来てからは、コビーに負けない程に真面目になった。どんどん心身ともに逞しくなっていく2人に、ガープは楽しそうに笑う。
しかし2人はあくまでもまだ雑用。こうして鍛錬をしながらも、与えられた雑務はきちんとこなさなければならない。懐から時計を出してみれば、そろそろ2人が仕事へ向かわなければならない時間だった。

「うわあ!もうそんな時間ですか!?早く支度しないと…!」

「シャワー浴びて着替え…ってやべえ!着替え部屋に置いたままじゃねえか!?」

「え!?あああああ!!!」

「そんなこともあろうかと、ほれ、なまえ」

「ふふふ、はい、お二人ともどうぞ」

「えっ?あ、俺たちの替えの制服…」

揃ってあわあわしていると、すっと横から差し出されたのは、きちんと折り畳まれた2人の制服だった。

「なまえといっての、まあお前らの後輩みたいなもんじゃ。仲良くしてやれ!!」

「お疲れ様です。給仕方の雑用に入ったなまえです」

へにゃりと笑ったなまえは、ヘルメッポにチビだと笑われるコビーよりまだ小さく(笑うヘルメッポもどちらかといえばチビの部類なのだが)、肌は白く2人の様な傷も無い。
海軍本部で働くにしては頼りないように見えるが、給仕方ということは戦闘訓練に参加するような役所ではないのだろう。

短い後ろ髪を束ねている青いリボンが、頭を下げた拍子にひょこひょこ揺れる。
シェルズタウンの少女、リカを思い出したヘルメッポは思わず笑いながらなまえと握手を交わした。

「ひえっひぇっひぇっ、着替えサンキューな。まあ困ったことがあれば俺ら先輩に頼ったって良いんだぜ」

「まだまだひよっこのへなちょこの若造がよく言うわい。なまえの方がよっぽどお前ら2人よりしっかりしとるぞ」

「えええそりゃ酷いっすよガープさん!なあコビー!」

ぱん!と相方の背中を笑いながら叩いた。が、返事が無い。
そちらに顔を向けてみると、ヘルメッポとガープのやりとりに可笑しそうに笑うなまえを、頬を染めながら見つめるコビーがいた。

「…コビー?」

返事が無い。ただの青い春のようだ。


+++++++


「可愛かったよなあ、今朝の新人」

「っぶふうううううううう!!!!」

「汚ねえ!リアクションでかすぎだろてめー!」

あの後、廊下を掃除して庭を掃除して倉庫を整理して鍛錬をして船の荷降ろしを手伝い…とひたすら動き回り、やっとかなり遅い昼食をとることができた2人。
その間ずっとぼんやりとしていたコビーにかまをかけてみると飲んでいた味噌汁を吹き出しながら真っ赤に顔を染める。

分かりやす過ぎる。
からかうのが申し訳なくなるほどに分かりやす過ぎる。

「ヘヘヘヘ、ヘ、ヘルメッポさん、可愛かったって、まさか、あの」

「ばっか、俺はあんなチビ相手にはしねえよひぇっひぇっひぇっ」

「そ、そうですか…って!別にぼくは!そう言う意味では!なくて!」

「俺らより年下だよなあ。給仕方っつってもかなりきついって聞くけど、あんなチビで大丈夫なのかね」

「体力には結構自信があるんですよ?」

「「うっわ!!!?」」


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