[ 20/94 ]

「大人しくしてるからご褒美くれよチアキちゃあん」

「なら俺の雪見だいぷくの片方をさしあげましょう」

「せこい野郎だ、2つとも寄越せよ」

「ファミリーパックで寄越せ」

「俺はあーんしてくれるなら1つで良いぜ!」

本当にうるさいなこの大人たちは。
扉越しの会話はやかましく、窓から見えていた猫が迷惑そうにどこかに去って行ってしまった。
アイス1つでうるさくしてごめんなさい。俺悪くないけど。

まあなんとか風呂場は静かになり(たまに怒声が聞こえてくるが)、俺も一息ついて勘定帳をつける。
羽コートがもさもさして邪魔だが、一応はお客様に預かった貴重品だ。そこらへんに放って置くわけにもいかない。
それに、こうやって着て預かっているとドフラさんは機嫌が良くなる。
黒刀と鉤爪も同様に、持ったり抱えたりしていると機嫌が良いようだ。
うん、全くもってわけが分からない。
それでも毎回ちゃんと預かる俺も何やってるんだろう。重いのに。

「チアキ、2人が桶を1つ壊した」

「え、何やってるんですか」

そんなことを考えているうちにあがって来た3人を見れば、湯気をたててさっぱりしている。
なのに何だと。
この前も1つダメにしたじゃないか。

「2人は牛乳もアイスもダメですね」

「ならばその分は俺がもらう」

「うるせえぞ鷹の目!チアキ、桃鳥が」

「悪かったから怒らないでくれよチアキちゃん、な?」

濡れたままの体を番台の中の俺に押し付けるドフラさんを押しのけ、クロコダイルさんをじっと見つめると、小さくすまんと聞こえて来た。
…まあ弁償はしっかりしてもらうし、謝るなら許してやらんこともない。

「今度から気を付けてくださいよ、良いですね」

よく冷えた牛乳を差し出してそう声をかければ、ぱっとこちらを向く2人に思わず笑ってしまった。
密告者のミホークさんにもフルーツ牛乳を渡し、俺も普通の牛乳の栓を開ける。

3人が全裸のままで牛乳を一気飲みするのを見届け、俺も自分の分をちびちび飲む。
ちゃんと腰に手を当てるあたり、この人たちは結構庶民的だと思う。
いや、銭湯の朝風呂に通うぐらいだから今更か。

やっと3人が服を着始めたのを合図に、雪見だいぷくを取り出してフタを開けた。
付属のスティックを使って片方をかじり、一旦置いてもう片方を突き刺す。

「優等生のミホークさん、どうぞ」

「…(ぱか)」

ほとんど着終わったミホークさんにスティックごと差し出すと、無言で口が開かれる。
…ああ、はいはい。

「鷹の目ずりい、俺も俺も」

「どの口が言いますか。牛乳飲めただけ良かったと思ってくださいよ」

「フフフ、すきありだぜチアキちゃん!」

「ああああ」

口をもぐもぐさせるミホークさんに目を向けていたことが悪かったのか、半分食べて置いてあった俺のだいぷくがドフラさんの口の中へ消えて行った。
してやったりと言わんばかりにニヤニヤするドフラさんをどうしてやろうかと拳を構えると、今度はクロコダイルさんに飲みかけの牛乳まで奪われてしまった。

「クハハハ、俺だけ何もねえのはいただけねえな」

「コーヒー牛乳飲んだじゃないですか、あ、ああもう…」

抗議している内に飲み干され、瓶だけが俺の手元に帰って来た。
俺の楽しみがほとんど奪われた…。
牛乳もだいぷくも半分しか俺の胃に納まっていないじゃないか。

がっくりうなだれて空の瓶4本を片付け、預かっていた貴重品を持ち主たちに返す。
すがすがしい顔にとても腹が立つ。もしかしなくても喧嘩を売られているのだろうか。
七武海の3人に売られても、死んでも買うなんてバカなことはしないけれど。

「チアキちゃん、今日は夜も来るから待ってな」

「ああ?…コーヒー牛乳1本また冷やしとけ」

「夜はファミリーパックで用意しておけ」

「ええ、3人とも来るんですか。って言うかもう雪見だいぷくはあげませんよミホークさん」

職務怠慢だの、常連客を大事にしろだの。
ぎゃあぎゃあとうるさい3人にまたため息を吐いて、はいはいすいませんでしたと飴玉を投げてやる。
本当は小さな子供のお客用だが、これがなかなか彼らにも効果があると来た。
今晩も来るからな!とすごまれても、その頬は飴玉で膨らんでいるので怖くもなんともない。

番台の中から手をふって、さっきよりも騒がしくなるであろう今晩のことを考えて頭を抱えた。
まあ考えても仕方ない。とりあえず冷蔵庫に牛乳を3本追加しておかなければ。



入湯400円牛乳150円・札束おことわり



「あ、札束おいていかれた!」
「どうしたチアキ」
「センゴクさん、いつもの3人ですよ…」
「あいつら相変わらず入り浸ってるのか」
「毎朝ですよ毎朝。今晩も来るとのことで」
「ワシらも大概入り浸ってるがのう!ガハハハ!」



あとがき

以前(1ヶ月前!!)に戮兎様に「番頭の夢主」とのネタをいただき、ずるずると延ばしてしまっていました…!!
番頭とか何それロマン!と飛び付かせていただいたにも関わらず、企画や課題でなかなか書けずに放置してしまい申し訳ないです…。orz
子供ばりに騒いではしゃぐ三武海が楽しくて仕方無かったです!(きりっ)
素敵なネタ提供本当にありがとうございます戮兎様。ご馳走さまでしたー!



[*prev] [next#]
top
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -