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「ねえ、クザン様とはどうやって知り合ったの?」
「はい!ぼんやり歩いていたら、ぶつかっちゃって蹴り飛ばされました!」
「「「ええええ〜!?」」」
「でも起こしてくれましたし、ごめんねって謝ってくれました!」
「へ〜え、やっぱり優しいわあ、クザン様!」
「あら、それならブルーノさんだってお優しいわ。荷物を持ってもらったこともあるし」
「それなら私はカクさんが・・・」
「馬鹿ねえもちろんルッチさんが・・・」

「・・・・随分と賑やかなのね・・・」

きゃっきゃ、うふふ
目の前の光景には、これが一番しっくりくるように思う。
CP9のメンバーであるカリファは、給仕室の前を通りかかったので、コーヒーでも貰おうと扉を開いた。
そしてこれである。

「あ、ユーリさん。今日はリボンが赤だったんですねえ」
「きゃあ!気付いてくれたのハルアちゃんだけよー!さすがね」
「それとカノさん、そっちの洗い物ならぼくがやりますよ。
せっかく今日は爪が可愛いのにダメですよ!」
「ふふ、じゃあお願いしようかしら?」
「はい、喜んで!」

大量の洗い物を片付けながら、給仕たちはおしゃべりに夢中のようである。
ただし、その間にも洗い物はどんどん片付いていく。
前々からカリファは気付いていたが、この司法の塔の給仕たちは自分を含むCP9に対してやたらとミーハーな者が多い。

給仕はそのほとんどが女性であり、CP9は闇の正義であっても、彼女たちにしてみれば高嶺の花でありアイドルのようなものなのであろう。

フクロウの話では、CP9のメンバーと接触できるような仕事(食事の給仕や部屋の掃除等)は、彼女たちの間では金銭や恩のやりとりが行われる程に重要なものらしい。
同じ女である自分もその気持ちが分からないこともないし、畏怖や恐怖の目で見られるよりかは尊敬や羨望の方が良い。

まあ前者であっても、気に留めることもないので構わないのだが。

それに、給仕たちの会話は聞いていてなかなか楽しい。
あの人が、あの子が、あの店が、と止まるこのない伝言ゲームのような会話は時には情報源にもなり得る。
しかし、騒がしい女たちの声に挟まれて、聞き覚えのない可愛らしい声がする。
可愛らしいと言っても、どうやら少年のようである。

しかし最近は人手不足だとは聞いていたが、政府は子供まで雇い始めたのか。
セクハラね、と小さくこぼすと、何人かが気付いて挨拶をしてくれる。

「子供がいるようだけどどうしたのかしら」

一人をつかまえて聞いてみれば、ああ、と笑って答えてくれた。
声の主である少年ハルアがここにやって来たのは昨日のことであり、なんと大将青雉の勧めであり、長官も既に許可したとか。

一日の間に、ハルアは彼女たちの小さなアイドルとなっていた。

確かにハルアは会話を聞く限りはよく気が付く。
女という生き物は、自分の変化に気付いてもらうことが総じて好きである。

ここまで聞けば、どうしても興味がわいてくる。
ちょっと失礼、と覗き込むと、たしかに大勢のメイド服に囲まれて小さな少年の姿が目に入る。
くりくりとした瞳をへにゃりと細め、人懐こい笑みを浮かべている。

あら、可愛い子。

そんなことを考えた自分に思わずくすり、と笑ってみる。
すると、ハルアが顔を上げ、こちらとぱちっと視線がぶつかった。

「あ、こんにちは!」

給仕たちに向けていたものと変わらない笑顔を向けられ、なんだか胸がほわっとあたたかくなる。

「こんにちは、あなたがハルア?」

「はい!えっと・・・」

「私はカリファ。仲良くしましょ」

・・・仲良くしましょ?

自己紹介はともかく、それに続いた言葉に自分で驚いた。
給仕の、しかもこんな幼い少年に対して“仲良くしましょ”とは。
まるで自分とは縁のない、友人にかけるよう言葉がさらりと口に出た。

そんな彼女の驚きを知らないハルアは、こちらも驚きに目を見開いていた。


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