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「不公平だ」
「そうじゃそうじゃ!」
「え、そんなことありませんよ」

「いや、誰が見ても明らかに不公平だ」
「ワシらは悲しいわい」
「え、え、でも、やっぱりそんなこと・・・」

「その命にかけて不公平でないと誓ってくれるのか」
「ちょ、ルッチそれはさすがに」
「そんなあ・・・!」

うん、今日もエニエスロビーは平和である。

そろそろこんな光景にも慣れ、CP9は前からこんな感じだった、とさえ錯覚してしまう。
前ってどんな感じだったっけ、もっと暗く冷たい感じじゃなかったっけ、とは誰もつっこまないしつっこめない。
言ったところで、おそろくルッチあたりに、んなわけねえだろうがばかやろう、もしくは今だってそうだろうがばかやろう、と指銃をかまされるだろう。
どっちにしろ自殺行為なのだ。

ブルーノは改めてハルアの影響の大きさに驚かされた。
そうだ、あの子が来てからなんだ。
CP9は良くも悪くも変わったし、給仕たちだって、今では男よりもあの子に夢中のようだ。
給仕長を筆頭とした給仕たちとルッチの睨みあいなんて、以前は絶対にありえないことだった。(初めて見たときは我が目を疑ったものだ)

こんなことを真剣に考えているブルーノも、実はお菓子作りの真っ最中だったりする。

ハルアと一緒に自室のキッチンでチーズケーキを作っていたのだが、ルッチとカクに嗅ぎ付けられ、いつの間にやら作業をしているのはブルーノだけになっていた。
CP9の自分が自室でケーキを焼いていることに全く違和感を感じなくなったあたり、彼もばりばりに影響を受けている証拠である。
そしてやっぱりそれにつっこむ人間はこの島にはいない。

「なぜ大将青雉は“クザンさん”で」
「いつも一緒のワシらは様付けなんじゃ!おかしいじゃろうが」
「ええええー・・・」

いやおかしくはないだろう。
お前らの頭の方がおかしいだろう。
傍目から見れば、そんなつっこみを考えながらもクリームチーズをつぶす彼も、残念ながら大概おかしいのだが。

「二人ともハルアの立場を考えてやれ。
他の給仕たちにもそうさせるならともかく、ハルアだけ特別扱いなんてしてみろ。
どんなことが起こるかも分からないだろう」

「それくらいの特別扱いで、ここの給仕たちがハルアに手出しすると思うか」

「・・・・」

「でも、やっぱりあまりにも失礼です!
お仕えしている方々にさん付けだなんて・・・」

「安心せい、呼び捨てなら問題なかろう」

「カク落ち着け、グレードアップしてるぞ」

あわあわと抵抗するハルアに援護してやっても、しつこい二人はどこまでもしつこい。

「クザンさんは、最初はあんなに凄い方だと知らなかったんです。
知った後も、様付けよりそのままが良いなあってお許しをいただいて」

「俺たちも許可しているだろう」

「でも、でも・・・!」

畏れ多いです、と呟く小さな姿は、まるで耳と尾を垂らした仔犬のようで。
しゅん、と俯く姿に、味方に回っているこちらまで申し訳なく思えてくる。

「・・・ちょっと待て。
“俺たちも許可している”と言ったが、他の連中には許可はとったのか?」

少なくとも自分はそんなことはさっきまで聞かされていなかった。
ハルアに呼ばれるならさん付けや呼び捨ては構わないが、ハルアが拒んでいるなら強要なんてもっての外だ。

「ワシら三人以外はみーんな問題無しだそうじゃぞ」
「もちろん俺も問題などありえない」
「右に同じじゃ」

・・・既に許可を取っていたか。
どうせハルアが自分たちをそう呼びたいらしい、などとうそぶいたのだろう。
それにほいほいと乗せられるあいつらもどうなんだ。

しかし参った。
つまりは自分以外は全員ルッチとカク側だ。
必死に抵抗していたハルアも、今ではカクの膝の上に座らされている。
あの子のことだから、自分から降りて逃げ出す、なんてことはできないのだろう。
それをしっかり理解しているであろうカクは、にこにこと楽しそうである。イラっ。

「ハルア、ワシの名を呼んでみてくれんか」
「カ、カク様・・・」
「違うじゃろう、ほれもう一回」
「ひゃああああ・・・!」

どんないじめだ。

「このままでは埒が明かん!
ならハルア、こうしよう。CP9全員がそれを望めばおぬしに拒否権は無しじゃ」

「えええええー・・・」

また面倒なことを言い出してくれた。
カクが言うことは、つまりは全て俺に丸投げする、ということだ。
他のメンバーに許可を取られてしまった今、ハルアを護る壁は俺だけ。
おそらく拒否しても、いつまでもこいつらはねばる筈だ。



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