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塔の中が、すこしだけ静かになった。
とは言っても、その静寂を作り出した二人はCP9の中でも静かな二人だったので、すこしだけ、なのである。

簡単に言うと、カリファとブルーノの二人が任務のためにこの島を出た。
それが一ヶ月前のことになる。

「おそらく、そろそろじゃろうな」

「・・・・」

何が、とは言わない。
言わずとも相手のルッチになら通じる、とカクは知っていた。
あの二人が出て一ヶ月。
同時に長官に長期任務を言い渡されたのも一ヶ月前。

今回の標的は古代兵器プルトンの設計図。
同時に、それを所持していると考えられている男、アイスバーグ。

今までも長期任務はざらにあったが、今回は今までとはレベルが違いすぎる。
世界政府が兵器の復活を望んでいる。
これはつまり、本腰を入れて大海賊時代に幕を下ろすということだ。

捕獲なんて生ぬるいことはせず、兵器による海賊の一掃。
威力は計り知れないが、大量虐殺を可能にする程度は当たり前なのだろう。
皮肉にも、海賊王を死刑にすることで始まったこの時代。規模を拡大しようとも王下七武海を引き連れようとも勢いの止まらない海賊たちの波。
これを打ち壊すのが古代兵器とは、なんとも。
そしてその終焉への一歩を踏み出すのがまさか我々だとは。

闇の正義を背負う、我々が、だ。
あまりに滑稽で、あまりに矛盾している気がする。
それもいとわない程、お偉いさん方は焦っているということか。

しかし、命令ならば従うほか無い。
こちらに拒否権なんて優しいものは最初から用意されていないのだから。

「一体何年かかることやら・・・。ハルアは寂しがってくれるかのう」

「・・・さあな・・・」

こんなことが言えるのは、二人が答えを知っているからだ。
ハルアのことだ。
おそらく口には出さないが、自分たちのいない場所で静かにため息でも吐いてくれる。
そのくせ、出立の際は頑張って下さいね、と笑うのだろう。

ウォーターセブンでは、ルッチとカクが船大工。カリファはその会社の社長秘書。そしてブルーノは酒場の店主、という役割が振られている。
一ヶ月前の説明の際、これを聞いて口を開いたのはカクだった。

ハルアをワシの弟として連れて行かせてくれんか。

は?
スパンダムは何言ってんだこいつは、と呆けたが、流れに乗るようにルッチもこれに加わる。

それならば俺の弟に。

いやだから、はあ?
何言ってんの?どうしたの?バカなの?
もちろんスパンダムにはこんなことを二人に言う勇気は無いが、顔にしっかりとそう書いてあった。
答えはもちろん否、である。
当たり前であった。

その後も二人はさんざん進言したが、(他の二人もさりげなく援護してくれていた)やはりスパンダムは首を縦には振らない。
そうこうしている内に先発隊のカリファとブルーノが行ってしまい、直に自分たちの番がやってくるだろう。
ハルアにはただ任務に出る、とだけ言ってある。

さんざん真剣ぶってみても、彼らの思いは、“ハルアとそんなにも離れたくない。だから連れて行きたい。”であった。
何度も言うようだが、彼らは間違いなくCP9である。
結局は子供のような意地と我が儘であった。
だって何年かかるか分かんないじゃん。たぶんその間はここにはほとんど帰らせてくれないんでしょ。だからさあ、連れて行っても良い?
・・・とまあ、こんな感じなのだ。(もちろん彼らはこんなことは言わない)

「お二人とも、難しい顔でどうしました?」

「おお、ハルア!」

洗濯物を干しに行くのか、手に洗濯物の入った大きなカゴを持ったハルアが立っていた。
カクが立ち上がるよりはるかに早く立ち上がり、ルッチはカゴをハルアから取り上げる。

「手伝おう」

「ありがとうございます、ルッチさん」

最初はそんな!と遠慮していたハルアだが、引いても引いても押してくるルッチに折れ、今では素直に笑って礼を言うようになった。
名前を口にするだけで赤面していたさん付けも、もう自然と口に出るようだった。

「ワシも行くぞ!」
「来るな。空気を読め」
「やかましいのう、人手が多い方が早く終わるわい」
「えへへへ」



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