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幸せな日々が続きます。
相変わらずお日さまはお空にいつでもいますし、今日は雲も無く良いお天気です。
お月さまやお星さまを懐かしくも思いますが、実はお星さまはお日さまが出ている間は明るくて見えないだけで、実はお空にちゃんといるんだそうで。
お月さまはお日さまがいる限り出てくることはできないそうですが、海列車で他の島に行けば、ちゃんと夜が来て会えるとブルーノ様に教えていただきました。

・・・あ。ブルーノ様でなくてブルーノさんでした。

畏れ多くも、CP9の皆様を、さん付けで呼ばせていただけることになりました。
ぼくはただの給仕ですし、まだまだ子供なのに、とんでもないことです!
でも、皆さんとても喜んでくださるので、ぼくもついつい調子に乗ってしまうのです。
さてさて、お皿洗いを続けましょう。

「ねえ、最近政府のお役人さんが多いと思わない?」

「そう言えばそうねえ。大きなお仕事でもあるのかしら」

給仕長とギャサリンさんの話を聞いて、ハルアもそう言えば、と首を傾げる。
このエニエスロビーに政府の人間が訪れるのはいつものことであり当然のことだが、それにしても最近はその数と頻度が分かりやすく増している。
その度に給仕室にはお茶の催促の連絡がくるが、さすがに重役ばかりの部屋に子供のハルアを駆り出すわけのにもいかず、いつも他の給仕たちがカートを押して出て行った。
給仕たちのはなしでは、自分たちでは意味も理解できないような単語が数多く飛び交い、役人たちは皆そろって難しい顔をしているそうだ。

「それに比べて、スパンダム様は機嫌が良いわよね」

「そうそう!何が嬉しいのか知らないけど、にやにやして気味が悪いわ」

随分な言われ方であったが、こちらも間違いなく事実だった。
まあ彼は親の七光りで今の地位についたといって過言ではないため、残念ながらいまいち仕事ができない。
書類に目を通し、CP9メンバーに任務を言い渡したりするくらいで、他のCPの長官たちに比べたら仕事の量は随分と少ない。
そんなわけで、特に壁にぶちあたることも無い彼が、最近なぜかやたらと機嫌が良い。

「この前も、みやげに貰ったプッチのお菓子、ぜーんぶその時の給仕の子にあげちゃったらしいし」

「コーヒーを飲めないくらいに苦くしちゃった時も、なんのお咎めも無かったし」

「(何か良いことがあったんでしょうか・・・)」

スパンダム様・・・スパンダムさんはお優しい方ですが、他の給仕さんたちの話では、失敗すればいつまでだってねちねちとしつこく、無能なくせにこの塔で踏ん反りがえっている嫌な奴、だそうです。(そんな無能だなんて!)
そうでしょうか、そんな風には見えないんですけどねえ。
お茶を淹れればいつだって褒めてくださいますし、時にはファンクフリードさんとも遊ばせてくれるんですよ。
頭を撫でてくれる手は、皮の手袋越しでも分かるくらいお優しいですし。
たまにころんだり何かを壊したり、なんてこともありますが、ぼくが駆け寄ると、参った、なんて言って照れたように笑ってくださいます。

むむむ、やっぱり考えれば考えるほどお優しい方です。

「ハルアちゃん!長官室にお茶お願いね」

「え、今日はぼくでも良いんですか?」

「ええ、クザン様からご指名よ」

わあ!クザンさんが来ているんですね!
ご指名だなんて、そんな勿体無い!
クザンさんもとってもいい人なんです。
ここで働けるのもあの方のおかげですね。(最初は随分と反対されてしまいましたが)

「スパンダムちゃん、例の話、たぶんこのまま通るだろうからその時はよろしく」

「それは勿論!CP9と世界政府の名にかけて、完遂させてみせます!」

「失礼します」

どうしましょう、ものすごく大事なお話のようです。
入ってしまって良かったんでしょうか・・・?

「ハルアちゃん、元気そうで良かった」

おじさん寂しかった、なんて嬉しいお言葉をたくさんいただいて、気付けばクザンさんのお膝の上に。
え!?あれ!?
ちょっとクザンさん、お話は!?

「お茶ならもういいや、話ももう終わるし」

え、いや、この状態は・・・!

「青雉殿、任務のメンバーもさっきのメンバーで問題無いかと」
「うん、そうだね」

スパンダムさんも平然と話を続けないでください・・・!!
おかしいですよねこれ!?
ダメですよねこれ!?

「まあその内正式に命令が下るだろうから、準備は進めておいてよ」
「はっ」

また、誰かが任務に出られるようです。
メンバーということはお一人ではないんでしょう。
その方がいない間、ぼくたち給仕がお部屋をきちんと管理しないと!
少し寂しいですが、こんなことはあの方々には言ってはいけないのです。

「また来るだろうから、その時はいっぱい遊ぼうね」

ぼくの頭を撫でて、(手がとっても大きい!)クザンさんは出て行ってしまいました。
遊ぶだなんて、そんな!


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