12-2 [ 25/101 ]

「まさかと思うけど、あいつらハルアちゃんまで連れて行ったりしないだろうな・・・」

廊下を歩くクザンは、ぽつりとこんなことをこぼしたが、もちろんハルアもCP9も知る由もない。
あの子が笑っていられるように。
彼の願いは、こんなにもちっぽけで優しい。
だからこそ、彼はこの願いが壊された時は何の容赦もしないと心に決めていた。
その相手が誰であれ。
自分が見付けた小さな子供を傷付けると言うならば。

ああ、こんなにも愛しいと思えるなんて。

まあ今更か、と苦笑して、クザンはただ静かに廊下を歩いて行った。

場所は変わって、こちらは談話室。
珍しいことに、今はメンバーが全員集まっていた。
彼らも何やら大きな任務の存在に気付いていた。

さあ、今度はどこで誰をどんな方法で殺せと言うのか。

もう十分に赤く染まったこの手で、今度は何人の体を貫けと言うのか。

彼らの頭は、既にこの思考を悲しいとは感じない。
何度も。何年も。何百人、もしくは何千人も。
経験を積みすぎた彼らは、CP9のメンバーにふさわしすぎた。

もっとも、そんな彼らも今では給仕たちも慣れてしまった程に丸くなった。
相変わらず視線は鋭く、自室にいようとも隙を見せない。
けれど、あの子に関してはそうも言っていられなくなる。
あの小さな子供。
突如この島へやって来た子供は、あっと言う間にCP9全員に認められた。
CP9の歴史上において最強の男でさえ血の匂いを忘れてしまう程に。
林檎と太陽の甘く優しい匂いは、いつでも彼らの目を細めさせる。

ああ、こんなにも愛しいと思えるなんて。

クザンも廊下で感じたことを、彼らもまた噛みしめていた。

しかし、そんな思考を仕事には出さないところは、さすがCP9と言える。
ハルアはハルア。
任務は任務。
任務中に顔を思い出しても、表情には出さずに淡々と標的へ近付く。
たとえ頭に浮かんだ顔が幸せそうに笑っていても、彼らは標的を逃がしたりなんかしない。
あの匂いを思い出しても、血の匂いは変わらずその身を包んでいる。
世界政府に属する彼らは、ただただ任務をこなしていくのだ。

命令されれば出向き、必要であれば殺し、潰し、存在を消し去る。
それが彼らの仕事である限り。

「皆さんお揃いなんですね、お茶は足りるかな・・・?」

それなのに、こんな一声で頬が緩んでしまう。
胸の奥がほわりと小さく火を灯す。
最初は戸惑ったこの感覚も、何のことは無い。
ハルアだからだ。

「今日はスコーンがありますよ。実はぼくも一つもらったんですが、すごく美味しかったです!」

小さな手で差し出してくる紅茶を受け取って匂いを嗅いだ。
この子の一押し、アップルティーだった。
手に感じる熱は心地良く、ソーサーとカップを持つ手は血の匂いなどどこかへ行ったようで。

「ハットリさんにもありますよ、どうぞー!」

どうか、と信じてもいない神に祈ってみる。

この子が笑っていられますように。
できるなら、その傍に自分たちがいつもありますように。


後日、長官室にはルッチ、カク、カリファ、ブルーノの姿があった。

「でけえ仕事だ。お前らにウォーターセブンに行ってもらう」

「・・・何かの調査ですか」

「古代兵器、プルトンの設計図。これを探してもらう」

「「「「!!」」」」

「おそらく数年はかかるだろうな。それぞれの向こうでの役は書類に書いてある。
さあ、世界が動くぞ・・・!」

存在も信じていない神よ。あなたは我らが嫌いらしい。



主よ、この身をあなたに捧げよう



「ハルア」
「はい?」
「ハルア」
「どうしました?」
「・・・ハルア」
「え?え?」




あとがき

さあさあ、展開が進み始めました。
大好きですW7。住みたいですW7。
今更ですが、これもしかして絡み不足ですかね・・・!(バカ!)
もっとオープンにいちゃいちゃさせたい今日このごろです。
表現力を!私に妄想を書き起こす表現力を!!
きっとメンバーは無神論者だと思ってます。
それに案外、少年もそうなんでしょう。いるなら感謝します!ぐらいの。
管理人:銘


[*prev] [next#]
top
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -