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うずうず
チャパパー、何だろうかこの状況はー。
噂をひろめに給仕室にやって来たら、噂の種を見付けたぞ。

「ロブ・ルッチ様、あの子は仕事中です。
それにこの給仕室はあなたのような方がいらっしゃる場所ではありません!」
「・・・ハルアに会いに来ただけだ」
「ですから、あの子は給仕として仕事中です」
「なら俺の部屋を掃除させろ」
「あらまあ、担当の者が今朝済ませたはずですよ」
「・・・・」

我らがCP9最強の男が、給仕長と言い合っている。
と言うかもはややり合っている。
どうしたお前ら、大丈夫か。

二人の会話に出てきたハルアとは、たしかつい先日雇われた小さな子供の名前だったはずだ。
まだ顔を見たことはないが、他の給仕たちの話ではたいそう可愛らしい姿をしているらしく、誰に聞いてみても彼女たちは嬉しそうに口を開いてくれた。

しかし、なんとまあ。

いつの間にやらルッチまでやられていたか。
長官に気に入られているという話は聞いたし、(なんとあの長官がコーヒーをこぼさずに飲みきるらしい!)カリファも毎朝のコーヒーを頼んでいる。
しかし何がどうなってあのルッチが。

「なら明日の掃除を」
「申し訳ありません、私たちは全員の担当をきちんと割り振られていますので」
「・・・カリファは毎朝呼び出している」
「カリファ様はきちんとこちらに申し出て、あの子もそれに了承いたしましたので」
「なら俺も」
「あらまあ大変!もうすぐお昼だわ!皆忙しくなるわよー!!」
「・・・・」

ぶはあっ
ついにフクロウは耐えきれずに吹き出してしまった。
あのルッチが、あのルッチがである。
既に給仕長は忙しい忙しいとどこかに行ってしまった。
置いて行かれたルッチは鋭い視線を送っているが、給仕たちは知らんぷり。
いつの間にここの給仕たちはこんなに強くなったのか。
以前はルッチが姿を現しただけで大騒ぎしていたのに。
ぐるりと見渡しても、噂の小さな姿は見られない。

「・・・フクロウ、何を見ている」

げ、見付かったチャパパー。

イライラという音が聞こえてきそうな程不機嫌なルッチ。
視線の鋭さが突き刺さるようだが、その怒りの原因が十歳の少年に対する面会謝絶だとは。ぶはあっ。

「そんなに睨むなー、俺は何にもしてないチャパパー」

「・・・ばかやろう」

おいおい、何に対してのばかやろうなんだー。

「随分と気に入ってるようだが、ハルアは一体何者なんだー?」

「大将青雉が連れて来たらしい。小さな子供だ」

「それくらいなら給仕たちの話で聞いたチャパパー!」

「・・・・」

「ルッチ?」

なぜ黙る。
なぜにやりと笑う。
その顔でこっちを見るな。

「どうやら俺は、一目惚れというやつをしたらしい」

どっかん
くつくつと笑うこの男は誰だ。
おかしいな、ルッチと話していたはずなのに。
今の一言はものすごい衝撃があった。きっとルッチにしか使えない六王銃ぐらいはあった。

「・・・チャパパー・・・。
話では、ハルアは男の子じゃなかったかー」

「ああ、男児だった」

いや、どっちにしろやばいだろう。
あいたたたたたた、これは噂として広げて良いものか?
ジャブラの失恋話とは、いろんな意味で次元も問題度も違う。

「あらまーあロブ・ルッチ様、まだいらしたんですか?」

「「・・・・」」

突如現れた給仕長に、ルッチの顔がぎゅっとしかめられる。
まあしかめたと言うか、いつもこんな顔なんだが。
給仕長にあらあらまあまあと追い立てられ、二人で給仕室から追い出された。
いいのだろうかCP9。

ふん、と自室の方へ歩き出したルッチはいつもの静かな歩き方と違って、とぼとぼ、といった歩き方である。見ていていろいろと辛いものがあった。
あれは重症だなー、と思っていると、背後の扉の向こうから声が聞こえた。



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