06-2 [ 13/101 ]

「ハルアちゃーん、スパンダム長官から呼び出しよ。
今日は紅茶が良いって!」

「はーい!」

おや、ナイスタイミング。
カラカラと音を立ててカートが扉に近付いてくるのが分かる。
ルッチは既に階段を上って姿は見えない。

「わ、こんにちは!」

扉が開くと、現れたのは思った通り小さな子供。
自分に驚いたのか、ダークブラウンの瞳が大きく見開かれている。
短い黒髪がきらっと光った。
どこからどう見ても、可愛らしいとは言え少年である。

「俺はフクロウだチャパパー。お前がハルアかー?」

「はい!先日から働かせていただいています!」

ぺこ!と下げられた小さな頭に、気が付いたら腕が伸びていた。
「ちっこいなー!チャパパー!」

「ひゃああー」

ぐりぐりと髪を掻き混ぜてやると、楽しそうな声が返ってくる。
なんだか子供と言うより仔犬の相手をしているような気分だった。
「あの、フクロウ様!」

「んー、どうしたー?」

むずむず
ハルアの手は何か我慢するようにぎゅっと握られている。
こちらを窺うように見上げてくる姿は、やっぱり仔犬のようだった。

「チャ、チャックを・・・!」
「?」
「お口のチャックを、触らせていただけませんか・・・!」

そう来たか。
たしかに自分の口のこのチャックは普通ありえないものだ。
これを触りたいと来たか。

「かまわないぞ、チャパパー」

両脇に手を差し入れて、手が届くように抱き上げてやれば、ひゃあー!と楽しそうな声があがる。
おそるおそる手を伸ばし、失礼いたします、と律儀に一声かけられた。
よく出来た子供だ。

ぺったぺったと控えめに触れてくる手は自分のものより何回りも小さい。
ハルアは金具を触って嬉しそうにへにゃりと笑っている。
政府に属する自分にはあまり向けられることの無い子供の笑顔。

任務のために町に出ると、自分の容姿を面白がる子供たちはたくさんいるが、向けられる視線は珍しいおもちゃに対するものであったり奇妙なもの見るそれだ。
別に気にすることは無いが、この子供の視線は心地良い。
常にこの島を照らす太陽に似たあたたかさがあり、それよりはるかに優しい。
ここが司法の島だと忘れそうになるような、思わず口角が上がってしまうような。

「えへへ、ありがとうございました」

「おー、満足かー?」

はい!と笑うハルアに、こちらも笑みがこみ上げてくる。
そのまま二人でほのぼのと笑っていたのに、どこからか音が近付いて来る。
どんどんこちら近付いてきていた音の正体は、階段から飛び降りて来た。
・・・もはやストーカー並みだ、チャパパー・・・

抱き上げていた小さな体と傍にあったカートを、自分の影にさっと隠す。
静かにしてろー?と声をかけて、一気にこちらに走って来た男を見る。

「どうしたルッチー、何かあったかー?」

「・・・ハルアの匂いがした」

ストーカー並みじゃなかった。ストーカーだった。
さすが動物系能力者、匂いで分かるのか。
隠した子供を自分と壁でぎゅっと挟み、できるだけ匂いとやらをごまかす。

「ハルアなら、今さっき出て来て長官の所へ行ったチャパパー」

「・・・そうか」

それだけ言い残して、剃を使ったのか一瞬で姿が消える。
六式を悪用しているのか、あの男。

「もう大丈夫だチャパパー」

「ぷは!さっきの、ルッチ様ですか?」

「いやー、ちょっと残念な猫さんだー」

本当に残念である。
この子供に構いたくなるのは分かるが、なんだあの様は。
まだしばらくは長官室に行かせない方が良いだろう。
きっとあの男が待ち構えているだろうから。

「よよいっ!お前らなあ〜にを〜・・・」

「クマドリ、セクハラよ」

ちょうど良い所に他のメンバーが集まって来た。
ハルアがいるし、何よりここは給仕室の前。

「よし、皆でお茶会だチャパパー」



ずっと君を護ってあげる



「お、ハルアやっと来たか・・・ってルッチかよ!」
「・・・ハルアは」
「こっちが聞きてえよ!」
「・・・・」
「お、おい!無言で座り込むな!」
「(イライラ)」



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