* * * 外の光が眩しかった。会うのは一週間ぶりだ。 他人に非難されても仕方のない生き方をしているのは重々承知だ。 何を言われてもいい、されてもいい。 誰も俺に関わってきてほしくなかった。関わりたくなかった。 男娼同士の飲み会だったり会食だったりは一回も参加したことがない。 「唯人」として在るのは仕事をしているときだけでいい。 言い訳なんて絶対にしない。俺が俺であることに、嘘をつこうとなんかしない。 だから。頼むから。 俺を見つけないで。 「唯?」 突然闇から引っ張られたように感じた。顔を上げると、彼の心配そうな目が俺を見据えている。 「何、急に名前なんか呼んで」 いつもはあんまり呼ばないのにと、とりあえず誤魔化してみる。 「いや、なんかボーッとしていたから」 都会の街中でこうして二人だけでいると、逆に世界に自分たちしかいなくなるみたいだ。 周りの雑踏がどうでもよくなる。 「別に、心配いらないよ」 「心配なんかしてないって」 乾いた笑みに、その言葉だと感じた。 そのくらいでいい。 踏み込んでくるクセに、どこか一枚壁を隔てたみたく突き放してくれるように、俺との距離をはっきり組み立てている。 それだから、俺はこの人から離れられないのかもしれない。 「光志」 年上の人間を呼び捨てにするのは付き合ってから数カ月になる今でもなかなか慣れなくて。 無意味に、その腕に手を伸ばした。 ──なあ、俺のことどう思ってもいいよ。 おかしいだとか、自分だって自覚している。 変だ。 昨晩の相手は、30代のオッサンだった。 「どうした? 唯」 相手のを据えて、高額の給料をもらって、中学のときから抜け出せず続けて。 (光志の腕は、温かい) 続けることができない言葉。 甘い言葉。甘い関係。全てが許されるはずがない。 こうやって今、俺が男娼であることすら知らない人間の隣で笑っているなんて。 そんなのきたないって。 俺が一番、知っていた。 →# [ 7/70 ] 小説top |