大学寮の風呂が閉まってしまう時間が近くなったらしい。 光志さんと俺はお腹も丁度良く膨れたところで店を出た。夜はとっくに更けて、ネオンが夜の街に輝いている。 俺たちの時間だった。 「こんな遅くまで連れ出してごめんな」 「別に大丈夫だよ」 「…キスしてもいい?」 「……うん」 会話の中で流れてしまったものの、男にキスされたというのを気にしていたのだろうか。 会うのはいつも外だから、そう簡単に出来るわけじゃない。裏路地の茂みに隠れて唇を重ねた。 光志さんとはまだ、身体を合わせていない。 そういう雰囲気になったことも、なかった。 付き合って4か月がたとうとしている。 果たしてこれが付き合っているのか、恋人同士と言っていいのか、俺にはよく分からないけど変であることは自覚している。 「……じゃ、また」 「うん、ばいばい」 光志さんが俺を送って行くことはない。いつも現地解散だ。俺が頼んだからだった。 付き合いたてのころ、そんなのおかしいと言われるのを承知で提案したけど、意外にもあっさりと光志さんは了承してくれた。 光志さんの姿が完全に見えなくなるのを確認してから、俺も寮へと足を進めた。 →# [ 19/70 ] 小説top |