大学寮の風呂が閉まってしまう時間が近くなったらしい。
 光志さんと俺はお腹も丁度良く膨れたところで店を出た。夜はとっくに更けて、ネオンが夜の街に輝いている。
 俺たちの時間だった。

「こんな遅くまで連れ出してごめんな」
「別に大丈夫だよ」
「…キスしてもいい?」
「……うん」

 会話の中で流れてしまったものの、男にキスされたというのを気にしていたのだろうか。
 会うのはいつも外だから、そう簡単に出来るわけじゃない。裏路地の茂みに隠れて唇を重ねた。

 光志さんとはまだ、身体を合わせていない。
 そういう雰囲気になったことも、なかった。
 付き合って4か月がたとうとしている。
 果たしてこれが付き合っているのか、恋人同士と言っていいのか、俺にはよく分からないけど変であることは自覚している。

「……じゃ、また」
「うん、ばいばい」

 光志さんが俺を送って行くことはない。いつも現地解散だ。俺が頼んだからだった。
 付き合いたてのころ、そんなのおかしいと言われるのを承知で提案したけど、意外にもあっさりと光志さんは了承してくれた。

 光志さんの姿が完全に見えなくなるのを確認してから、俺も寮へと足を進めた。



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