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酒は飲んでも飲まれるな!


ボクの彼女は厄介な癖がある。
酔うとキスをするんだ。
それも可愛く『ちゅーして?』
破壊力半端ないよね、想像しただけで顔が緩む。

…じゃなくて、それをボクの前だけでなら問題ない。むしろ大歓迎。そうさ、ガッツポーズをするほど大歓迎。
うん、重要な事だから二回言わせてもらったよ。

つまり彼女の『ちゅー』は誰彼構わずにしちゃうって事。
この前なんてさ、あのカカシ先輩に絡みに行ったんだよ。色んな意味でハラハラドキドキだ。
カカシ先輩も彼女の事は気に入ってるし、名無しさんがその気ならオレはいつでもオーケーよ?みたいな。貴方がオーケーでも彼氏であるボクが許さないっての!……強気でそう言えたらいいのに。

何だかんだで尊敬している相手に強く言えない、ヘタレなボク。情けない。



「ヤマトー?」

「!…あぁ、来てたんだ名無しさん。任務お疲れ様」

「うん、ヤマトもお疲れ様!私、明日非番だから今日泊まってもいい?」



物思いに耽っていると聞き慣れた声が耳に入る。振り向くと合鍵で入ってきた任務上がりの彼女がそこにいた。見たところ怪我はなくて、ほっとする。



「もちろん。さて、ご飯の用意はしておくから先にお風呂行っておいで。汚れて気持ち悪いだろう?」

「じゃあ、お言葉に甘えて」

「ゆっくり入って構わないから。…あぁ、そうだ。名無しさん」

「?」



お風呂に向かおうとする彼女を引き止めて、少しだけ汚れた頬に触れて軽くキス。
ちゅっと、控えめな音が室内に響く。



「今日も無事に帰ってきてくれて、ありがとう」

「ふふ〜どういたしまて!」



にっこりと、それはそれは嬉しそうに笑う君にボクの心はほっこり。

忍の世界はシビアだ。
一歩間違えたら死ぬ、それは日常茶飯事と言っても過言じゃない。だから無事に帰ってきた君を本当に嬉しく思い、感謝の意を示すんだ。
ボクの腕の中で君を抱きしめる事が出来る幸せを噛み締める。



___



「んー美味!ヤマトって相変わらず料理上手いよね。私より上手なんじゃ…」

「そんな事ないと思うけど?」



女としてどうなんだ!とかブツブツ言ってる姿に苦笑。でも名無しさんが美味しいって言ってくれるならボクはそれで満足。



「あれだよね、ヤマトっていいお嫁さんになれる!」

「ちょ、お嫁さんって…」

「…あれ?おかしいか。ま、とりあえず飲もっ?こんなに美味しいご飯に晩酌ないとかダメ過ぎる!」

「そう言うと思ってキンキンに冷やしておいたよ。どうぞ」

「……やっぱりヤマトいいお嫁さんになるよ、私が断言する」

「だからお嫁さんは…」



ボクがお嫁さんになるんじゃなくてお嫁さんは…とか思ってる内に、グビビっと缶ビールを一気飲み。



「んん、美味しい〜!!」

「はは、良い飲みっぷり…」



あっという間に空になる缶ビール。
そして、いつものパターンに入る。

さぁ、来るぞ。



「……ヤマト、ヤマト」

「はいはい、何度も呼ばなくてもボクはここにいるよ?君の目の前にいる、ほら…」

「ちゅーして?ちゅーしよ?」



急に甘えた声になりボクを呼ぶ君。
名無しさんはお酒が好きな癖に強くなくて、すぐ酔っ払っちゃうんだ。

それも意識がぶっ飛ぶパターン…

こんな可愛いセリフを言っても次の日には覚えてないんだよ?この甘い雰囲気から続く行為もキレイさっぱり忘れちゃうわけ。

そんなこんなで飲み会とかある時は必ずボクも参加して、君の行動を監視するっていう。監視っていうのは言葉が悪いかも知れないけど、気が気じゃないのが分かるだろう?



「君はボクの苦労なんて知らないんだろうなぁ。まぁ、そんな可愛い君を抱いて独占出来るのはこの世界でボク一人だけだからいいけどね」

「んん〜?」



厄介な癖というか、飲んだ後のタチの悪さというか。

それでもボクはそんな君も大好きさ。



「けど…やっぱり他の人の前で、ちゅーして禁止!」



酒は飲んでも飲まれるな!だよ。



fin
20200512




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