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ハッピーVer


ボクは今、幸せだ。
何故なら気になっていた子と付き合えるようになったから。

忍は任務で怪我をする事も多くて病院の世話になる率も高い、怪我をするのは未熟でもあるけれど命があるに越した事はなくて。
そんな中で君を見つけた、彼女は一般人で体が弱くて病院が家みたいなものだった。出会いはこんな形だけど君に恋をするのに時間はかからなかった。

告白したのはボクの方から。
彼女はボクの忍という立場を理解しつつも気持ちを受け止めてくれた。正直、断られると思っていたのでOKと返事を貰った時の喜び方が…やったー!と大きな声を出して拳を握っていた。今思うと子供っぽい事をしたし恥ずかしかったけど、それくらい嬉しかったんだ。

案の定、カカシ先輩にそれを見られてて『テンゾウってば、はしゃいじゃって…青春だねぇ?かわいー』と、揶揄われたのはいうまでもなく。



「名無しさん、今日の体調はどう?」

「ヤマトさん!うん、今日は調子良いよ」



ボクら二人、デートというデートはしていない、基本は病室でお喋りがほとんど。
彼女の病、それは肉体的な物ではなく精神的な物を患っていた。幼い頃に両親が目の前で殺されたのがショックで寝込む日々。どこかに出かけようも外が怖くて体の震えや動悸が止まらなくなる。
それでも外に憧れる一面もあり、ボクはそんな彼女の気持ちをどうにかして上げたいと思い、ゆっくりと時間を掛けて病院の周りを歩いたりとリハビリ的な事を行った。そのお陰で今では少しの時間なら出歩いても問題ないくらいまで症状は安定している。

そんな彼女の趣味は読書だ。
毎日毎日たくさんの本を読んでいた名無しさんがポツリと零した言葉があった。



「本を読むのは嫌いじゃないけど…外で読むのはきっと気持ちがいいんだろうなぁ」

「外、怖くないの?」

「ん、まだ怖い…一人じゃ無理。でもヤマトさんが居たら、ヤマトさんが側に居て、手を握ってくれたら…怖くない気がする」

「…そっか。ボクで良いなら喜んで」 



微笑みながら言う彼女が可愛くて、そのか細い体を引き寄せ抱き締める。一人が無理ならボクが居る、誰かが側に居ると居ないの差は大きいだろう。
君が望むならボクは何だってするよ、怖いもの何てない。むしろ、君の怖さを拭ってやりたい。

物事は迅速に、ボクは病院の許可を取り彼女の体調が万全なのを見越して近くの草原にと足を運んだ。近くといっても少し山手にある穴場、一般人なら見つけられない場所だ。ボクら忍だからこそ見つけられる場所だろう。
そして忍だからこそ一瞬で出向けるメリットもあるので身体に負担も少ない。



「さぁ、着いたよ名無しさん」  

「え、も、もう?……わぁ!」



移動の際はボクにしがみ付き目を瞑っていた彼女、着いた事を伝えると驚きながらも周りをキョロキョロと見渡す。
そこは風通しも景色も良く、湖と木々のコントラストがとても綺麗な場所。



「お気に召しましたか、お姫様?」

「ぉ、お、ひめ…様って…ヤマトさん…!」



ゆっくりと彼女を下ろすと、ボクはそのまま膝を着いて手を救い上げ甲にキスを一つ。
意味は敬愛。我ながら少しキザな事をしてしまったが、顔を真っ赤に染めて慌てる名無しさんを見ると正解だったと思う。



「ほら…どう、この場所?気に入ってくれた?」

「え…も、もうちょっと待って…私、いま…色々パニック…!!」

「よし!じゃあ、深呼吸だね。すーはーすーはー」

「す、すーはー…すーはー…!」



からかいすぎた事を詫びるように、背中を優しく撫でながら彼女を落ち着かせる。どうやら思考回路がパンクしただけで震えなどの症状は出ていない。
ようやく落ち着いたのか、初めて見る光景に彼女は生き生きと輝いていた。

そして、ありがとうって。

なんて、綺麗な笑顔なんだろう。



「そこに座ろうか、寒くない?」

「うん、大丈夫。ヤマトさんは疲れてない?」

「もちろん大丈夫、ボクは頑丈だし。もしそうだとしても…君の前じゃ見栄は張るかもね?」

「また…そんな事言って…!」



少しだけ歩いた後、ボクらは腰を下ろす。

君は語り始めた、本当はしたいことがいっぱいあるって。些細な事だから笑わないで聞いてくれる?
そう、首を傾げる彼女がとても潮らしくて可愛いくて…まさに押し倒してもおかしくない可愛さ、よく耐えたと自身を褒めてあげたい。

彼女が話した内容は本当に些細な事だった。実はもっとお出かけしたいとか、お花見したいとか、四季を感じたいとか。それは普通の子なら当たり前に出来ている事。

だからボクは彼女の手を握って真っ直ぐと視線を合わせて伝えた。ボクが出来る事なら、ボクがその願いを叶えてあげる。君と一緒にその願いを叶える事がボクの幸せだから。行動だけじゃなく、言葉でしっかりと。



「…少し、クサイ台詞かも知れないけど」

「それが、ヤマトさんの幸せになるの…?今も、幸せなの?」



願わくばいつまでもボクの傍で笑っていて。
愛しきボクの恋人、君が笑っているならボクは何だって乗り越えられるから。

 

「そりゃあね。ボクは幸せだよ、名無しさんは?」

「っ、…私も、もちろん幸せ。ヤマトさん…ありがとう」



二人で歩いていこう、ボクらの幸せを邪魔するものは何もないのだから。
繋いだ手や心は決して離れる事はないだろう。



fin




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