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ひとりよりふたり

火影になって多忙な彼はきっと今日が誕生日なんて忘れている。
毎日毎日似合いもしない火影の服を着て、机の前で書類とにらめっこして、前よりも確実に皺が増えているようにも見えて、少し心配になる。
昨日なんて帰ってきたのは空が白く、朝日が昇り始めてからだった。
シャワーを浴びて1時間くらい寝てまたすぐに仕事に戻る。
そんな生活じゃ、いくら鍛えていても体を壊してしまうのではないかと不安になってしまう。
だから今日は折角の休みだし、カカシにはゆっくり休んでもらおうと思うんだ。

「私、今日出かけるから家でのんびりゆっくりしててね」

玄関でお気に入りのヒールを履いてカカシと向き直りちょっと背伸びして頬に軽く口づけをする。寝癖が爆発状態のカカシは頭を掻いて欠伸をしながら私を見送ってくれた。

「はいはい。で、何処行くの?」
「んー、ちょっと買い物」

折角の休みだから二人でイチャイチャしたいと思ったけれども、普段からたくさんの人に囲まれて、あーだこーだと話をしているカカシには一人の時間が貴重なんじゃないかと思い私は一人街に繰り出した。とは言ったものの特に行く宛てもなくブラブラと商店街を歩いているだけで暇を持て余していて、なじみの茶屋に入り一人抹茶を啜っていた。

「……暇だなぁ」

ぼぅっと窓の外を眺めていると目の前に人が座った。
相席するほど店が混んできたのかと前を見るとそこには普段着で頬杖をついているカカシが私を見つめているではないか。

「なぁにしてんの」
「えっと……お茶を飲んでました」
「一人で?」
「うん」
「俺が休みなのに一人で?」

ああこれは、間違いなく拗ねていらっしゃる。
じとーっとした恨みがましい目で見つめられ、うっ、と喉が詰まりそうになる。丁度やってきた黒蜜と黄粉の葛餅をカカシに取られ食べられてしまったが文句を言う気にはならなかった。甘いものが嫌いなのに食べるなんて、とは思ったが折角の休みだからと一人にさせてしまったことが裏目に出た結果だから仕方がない。
でも、顔色が悪いよ?

「ごめんね」
「名無しさん、俺はねずっと一人だった。だからいくら疲れてても一人より二人の方がいい。わかる?」
「ごめん、折角の誕生日なのに」
「あ、あー……そっか俺今日、誕生日……」

一瞬きょとん、としたのちに頭を抱えてクククッと笑い出したカカシはやっぱり自分の誕生日を忘れていたみたいだ。

「だからゆっくり休んでもらおうかと思って……でも、一緒の方がよかったね」
「そうそう。俺は名無しさんと一緒にベッドでイチャイチャしてる方が」「ばか」

昼間から何を言うのかと軽く額を小突く。木の葉で一番の忍びなのにおちゃらけて見えるけれど本当はとても優しくて、繊細で人一倍仲間想いの彼だからこの里の長をやっていられると思っている。その恋人でいることが私の誇りだ。そう思うと唇が自然と開き言葉を紡ぐ。

「生まれてきてくれて、今まで生きていてくれてありがとう」
「おいおい、まるでこれから死ぬみたいな言い方じゃない」
「じゃあ、これからも生きてください」
「じゃあって……ははっ、わかってるよ」

茶屋を出て、手を繋いで歩き出す。そんなにゆっくりしていたつもりはないのだけれどいつの間にか太陽は赤く染まり綺麗な夕焼けが見えた。二本の影が私たちの背後にできて、そして、ひとつになった。


ひとりよりふたり


これから先はふたりで生きていこう。



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AJISAI/碧様より
カカシ生誕記念フリー夢





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