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出逢い


名無しさんを初めて見たのは10年前。
そう、ボクは19歳の頃から彼女を知っていたんだ。

戦争が終わり、落ち着いた頃に病院で車椅子に乗っている姿を見かけた。
最初は怪我でもしたのかと思っていたが、どうやらそれは見当違いで…聞けば戦争直前に病に倒れ悔しい思いをしたらしい。どんな心境なんだろうか、少し気になって様子を見る事に。
その時、彼女の名前を始めて知る。

里が安定し始めだした頃に、念願の綱手様の手術を受けて、そこから激しいリハビリの日々。


ボクはそのまま名無しさんをこっそり見続けた。


程なくして彼女が暗部入りを目指しているという情報を得た。がむしゃらに上、高みを目指す彼女を応援したいと思う反面、少し可哀想にも思えた。
病で倒れ、戦争には参加出来なかったが経歴を見みると実力的には申し分ない。
きっと暗部でも即戦力となるだろうが、推薦もなく簡単に入れるものでもない。


「どこまで本気なんだろうね…」


ボクは正規部隊からまた暗部に戻っていた。
ならば、少しだけ後押しをしてあげよう。

カカシ先輩…もとい六代目火影のもとへ行き、彼女を暗部へと推薦した。


「あぁ名無しさんね…この子、オレも知ってるよ」
「有名な子なんですか」
「まぁね、遅咲きタイプだったけどグングンと実力つけてきたし。戦争でも大いに貢献すると思ってたんだけど…ね。やっと手術受けれて、今はリハビリ頑張ってるんだっけ?」
「ええ、死に物狂いで頑張ってると聞きます」
「そ、分かった。この件は彼女が復帰次第話をつける。…それよりもなに、惚れちゃったのお前?」
「ほ、惚れたとか…!ちょっと気になっただけですよ!暗部の人間だって今は欠員ばかりですし!」
「でも彼女がすぐに復帰できるわけじゃないでしょ?美人だもんね、この子〜」
「そ、それは…!あ、ボク任務あるんで!それじゃ火影様、失礼します!」
「あ、こら!…まっ、どうなることやらね」


そして一年のリハビリをかねて、彼女は暗部へと。

同じ暗部内だったが、その時のボクは暗部総隊長となり立場的にも、かなり上だったので一緒に動く事も、会う事もなかった。
むしろ会ってどうすればいいのか分からなくて、だから敢えて避けていたのかもしれない。


時間が空けば、遠目からいつも見続けた。
本当にがむしゃらに任務をこなす彼女。
いつか壊れてしまわないか心配だったが、予想を遥かに上回るものがそこにあった。
実力と結果を示し、上へ上へと上っていく。
そして25歳、彼女は小隊の部隊隊長になった。

実力が物を言う世界で、自身の居場所を確立させたが周りはついていかなかった。
彼女は自分から孤独を求め、突き進む。
同時に男関係の良くない話も聞くようになる。

居たたまれない気持ちになりつつも、彼女と知り合いでもないから口を出せるわけじゃないし、あったとしてもきっと君の心にボクの言葉は届かなかっただろう。
たまに耳に入る噂を聞き流しながら自分の任務をこなしてきた。

ちょうどその時期に大蛇丸の監視役を仰せ使かった。ローテーションのメンバー編成など、そちらに集中する日々が増えた。
もちろん彼女の事を考えない日々はなかったが、これまでにない大役を仰せ使った以上失敗は許されない。少しだけ彼女を、いや彼女に対する気持ちを心の奥底にしまおう。
自分の任務に支障が出てないように。


…月日が流れ、名無しさんという存在を初めて知った日からちょうど10年。
彼女がボクのチームに入る事になった。


これはチャンス…


ボクは心の奥底にしまっていた君を、気持ちを引き出したのだった。





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