Kiss me!
「武くん、お願いがあります」
酒に酔ってほんのり顔を赤くしたそいつは、なぜか正座をして丁寧に切り出した。
「何だよ、誕生日プレゼント? お前オレの時なんもなかった癖に……」
「ちゅーして」
「はっ?」
オレより遅れること四ヶ月、幼稚園から一緒の幼なじみがきのう無事に二十歳を迎えた。めでたい。
ので、宅飲みをした。
ら、襲われた。
「ほら早くちゅー」
「いやいやお前なにンンっ?!」
唇を押し付けるだけの子供じみたキスだけど、押し付けられすぎてカーペットに倒された。
ええ? なにこいつオレの事好きだったの?
「んん……もっとぉ」
「んのバカふざけんな! オレの唇は女専用だ!」
「やぁだ! オレともちゅー!」
昔からよく飲み物をこぼして、よそ見して何かにぶつかって、気が付くとフラッと消えてるような奴だった。
幼稚園の紙パックジュースは三日に一回ブシャってしてたし、公園に行くと毎回だれかにぶつかって、遊園地では一日に六回まいごの呼出しをされた事もある。さんざん探し回ってヘトヘトなおばさんをよそに、こいつは泣きもせずけろっとしていやがった。
その内とんでもない事故に遭いそうで、オレが守ってやらなきゃ、と幼いながらも何かと世話を焼いていた。そしたら「武ってオレの母ちゃんみたいだな」なんて言うもんだから、オレが率先してひっぱたいたりもした。こいつはやっぱりけろっとして、「いてっ」なんて間抜けな声をだしていた。
そんな気のおけない幼なじみの突然の豹変。
今まで好きだなんて言われた事ないし、いや好きは好きなんだろうけど、こんなキスをするような好きだなんておくびにも出さなかったのに。
酒か? 初めての酒でこれまで抑えていた感情が一気にあふれたとかそういう事か? マジか。
そりゃオレだって憎からず思ってる。こんだけ長い付き合いだ。嫌な部分はもちろんあるけど嫌いな訳はない。でもその好きはあくまで友情というか、もはや家族愛のようなもので。
「だからお前とそういう事は……! ……あ?」
いつの間にかお子さまなキスが止んでいて、胸元に目を落としてみたら酔っぱらいがすやすやと寝息を立てていた。
「んーもっとちゅー……」
「…………」
突然の強襲のあげく人の上で幸せそうな顔して寝てやがるからイラッとして下に落とした。
カーペットに頭があたるゴチッという鈍い音と「いてっ」という間抜けな声が聞こえたけどどうやら起きてはいないらしい。念のため打った部分を撫でてやったらすりすりしてきたから平気だろう。
「……どうしたもんか」
オレは返事をしなければならないんだろうか。
しなきゃだよなぁ。
「そういやこいつ今のがファーストキスなんじゃ……」
経験豊富なオレと違ってこいつに彼女がいたことはない。
酔った勢いでファーストキスって。いや、酔わなきゃ出来なかったんだろうな。
「でもなぁ……」
その気持ちに応えられるかというと。
さっきまで必死に押し付けてきてた唇を人さし指でそっとなぞる。そしたら口がわずかに開いて、指先をはむ、とやわく挟まれた。
お、おお……。まぁ、なんだ。キスくらいならな。付き合ってやってもいいか。押し付けるだけのお子さまなこいつに、舌を絡ませてしゃぶりつくキスをしてやったら……。
いやいやなに考えてんだオレ落ち着け。そもそもその気もないのに希望を持たせるような事したら可哀相だろうが。
なんて思いながら唇に挟まれた指を潜らせる。歯を押し広げて先へ進むと妙に熱くてぬるつく舌にくちゅりと触れた。くすぐるように撫でてやると「ン……」なんて鼻にかかった声をだして指先を甘く食んでくる。
……まぁなんだ。大人のキスを教えてやるくらいならな。オレとはそういう関係になれなくても、今後のためになるだろうし。うん。ちょっと舌突き出させて啜ってしゃぶって口ん中グチュグチュするくらいただのお勉強だよな。
……いやいやなに考えてるんだオレ落ち着けマジで。そんな事してオレの事忘れられなくなったらどうすんだ。ただでさえオレよりいい男なんてそう居ないのに。
と正気に戻って指を抜いた。いや抜こうとしたら、それを察したのか引き止めるようにちゅうっと吸い付いてきた。
おいおい寝てるくせにどんだけオレの事好きなんだよ惜しいなぁコイツが女だったらまぁ考えてやらん事もないのに顔は普通だけど幼なじみのよしみででも男だもんなごめんだけど流石にねーわ。
と思いながら寝てる相手に馬乗りになって顎を掬って薄く開いた唇にかぶり付こうとしたその時。
「武くーん、きょう泊まってくー?」
階下からおばさんの声がして今度こそ正気を取り戻した。
結局その日は泊まらずに家に帰った。帰ってちゃんと考えた。
それ系の動画もいくつか見て、相手があいつならまぁ出来ない事はないかもしれないとも思った。
でもオレの恋愛対象はあくまで女だ。「試しに」なんて半端な気持ちで付き合ったら、「やっぱ無理」ってなったとき余計に傷付ける事になる。となるとやっぱりあいつの思いに応える事は出来ない訳で。
「あぁーくっそ!」
きのう酒さえ飲ませなければ、今まで通りずっとつるんでられたのに。
ガシガシ頭を掻いて歩いていると、後ろから「武ー」という間抜けな声が聞こえてきた。
げっ。顔見んの嫌でいつもより早く出たってのに。
オレ達は幼稚園から大学までずっと同じ学校で、時間が合う日は今も一緒に登校してる。しかし今日はまずい。なにせ気まずい。
「武ー?」
「………………」
無視してこのまま行ってしまおうと足を速めると、後ろから「いてっ」と間抜けな声がした。
とっさに振り向いた先には背の低い看板、の下でうずくまっておでこを押さえる幼なじみ。
ぶつけたのか。バカか。
「お前そこ何度目だよ」
「うっせ。てか何だよ今日早くね?」
「………ゼミの集まりがあんだよ」
「そうなん。声かけてくれりゃいいのに」
おでこをさすりながら横に並ぶ様子は普段と何も変わらない。
「そいやオレ今日ゼミの飲み会だ。飲めるようになったからやっと参加できるわー」
これは、敢えて昨日の事に触れずにこれからも友達でいようねパターンか? オレはありがたいけど、お前それでいいのかよ。
「てかきのう潰れてごめんな。オレぜんぜん覚えてないんだけどさ、どんくらい飲んでた?」
「……ん?」
「いやー、チューハイ一口目は覚えてるんだけどさ。あとは全く。今日は寝ると迷惑かけるから限界量しりてーんだけど」
「……ん?」
「ん?」
「……覚えてねーの?」
「乾杯の時に酒こぼしたのは覚えてる」
「酔ってもねーのにこぼすなよマジで」
フリかと思ったけどどうやらマジらしい。
ということは、オレがこいつの気持ちを知ってるって事も知らないし、こいつの中ではファーストキスもまだって事だ。
それは良かった。やっぱ酔った勢いでファーストキスってな。どうせなら素面でねっとりキスして唾液飲ませて腰くだけにしてねだらせて、っていやいやいや。オレは女専用だからオレ以外の誰かとな。うん。ファーストキスすればいい。
「てかマジで覚えてないからさ、仕切り直しでまた飲もーぜ」
「いや……どうだろうな」
「なんだその反応。オレなんかした? 吐いた?」
ある意味な。思いの丈をな。
「なんか当分酒はいーわ」
ゼミの飲み仲間に苦くこぼしたら、ものすごく怪訝な「はぁ?」が返ってきた。なんだその飲んだくれに対するような失礼な反応は。
「なんかあったん?」
「……酒は人の中の色んなリミッターを外すもんだなと」
思えば昨日はオレの思考もヤバかった。あれは酒のせいだ。そうに違いない。今朝もちょっと危うかったのは酒が残ってたからに違いない。
「よく分からんがいやな事は酒飲んで忘れんべ」
「おまえ人の話聞いてたか?」
「チッ、仕方ねーなぁ、お酒プラス女の子もつけてやろう!」
「はぁ?」
「今日! 夜! 合コン! 来るだろ?!」
なんでも急に欠員が出たらしい。
「ほんとはお前くると一人勝ちだから嫌なんだけどな。落ち込む武くんのために譲ってやろーじゃないの。いやオレだって負けませんけど! あわよくばお持ち帰りして見せますけど!」
合コンか。そういやしばらく彼女もいないしな。
彼女が出来れば、あいつもオレを諦めて他を探しやすくなるかもな。
そんな思いで参加した合コンの飲み屋に、なぜ当の本人がいやがるのか。
「笹塚しゃーん、ちゅーしましょー」
「きゃー!」
「お前キス魔かよ!」
いや、そういやゼミの飲み会がどうとか言ってたな。店が同じだなんて大した偶然だ。
「美保しゃーん」
「いやー! くんな酔っ払い!」
「おーおーみんな冷たいなぁ」
「ぶぇー、松崎しゃーん」
「よーしよし、キスするならオレにしとけー」
「ふぁーいっ?!」
お詫びの言葉もそこそこに合コンの席を立って酔っ払いの首根っこを掴みあげる。
「はーい、じゃねーよ犯すぞテメー」
「おー、たけしらー」
ぽやぽやした顔は昨日よりも赤くなっている。
「誰? 知り合い?」
「え? いま犯すって言った?」
「ヤバいイケメン……!」
「いま犯すって言った?」
「たけしぃちゅーしよーぜー」
襟首を掴まれたままヘラヘラする酔っ払いに舌打ちをして壁に押し付けてお望み通りめちゃくちゃディープなキスをする。
「えっこれガチ?」
「あたしら何見せられてんの?」
「え? 何これこの場で犯すの?」
きのう指先で触れた熱くてぬめる柔い舌を舐め回してむしゃぶりついてじゅるじゅるしてたら背中をバシバシ叩かれた。
ガン無視して深くまで舌を潜らせる。
「やべぇガチだ」
「何これこの場で犯すの?」
「あー、このイケメンどっかで見たと思ったら経済学部の」
「ねぇこれこの場で犯すの?」
角度を変えて貪ると「んぐぐ」と呻いてさらにバシバシ叩かれた。仕方なく唇を離してやると、足に力が入らないのかオレの身体にしがみついたままハフハフと息を整える。
くそ可愛いなコイツ。と思って唇にかぶり付こうとしたらすんでで顔を反らされた。
「なんだよちゅーしねーの?」
さっきまで誰彼かまわずちゅーねだりまくってた尻軽で淫乱でビッチなキス魔のくせにくそムカつく犯す。
「いやあのあまりの事に酔いが醒めまして」
「醒めてんじゃねーよ酔えよオレに」
「おまえ今だいぶ面白いこと言ってるぞ大丈夫か」
「うるせーてめーのせいで昨日から頭沸いてんだ責任とって付き合え」
「ええ? 何に……ンン?!」
テーブルにあった手近な酒を口に含んでむりやり口移しする。
「やべーあたしイケメンと間接キスしたわ」
「この状況でそれ嬉しい?」
「いやあんまり」
結構な度数のそれを流し込んで舌で口内に擦り付けてこぼれた分も舌で拭ってねじ込んでやる。
「ンン……っ……はふ、もっとぉ……」
そしたらまたもキス魔と化す尻軽ビッチ。その首根っこ掴んでコンビニで大量の酒を買って近場のラブホに連れ込んだ。
こいつのテーブルにはとりあえず一万円置いといた。
「え、何だったの今の。AVの撮影?」
「あの子キスされた時の顔ヤバすぎだわ」
「松崎マジで獲物見る目になってんぞ」
「えー? でも彼氏持ちは面倒だからなぁ」
あと松崎って名前は覚えた。
ぱちゅっぱちゅっぱんっぱんっぐちゅっぱちゅっ
恋人繋ぎでベッドに縫いつけて腰を振る。いざ男の裸を見たら萎えるだろうと思ってたけどそんな事は全くなかった。
「ぁんっ、ぁっぁっぁっ、たけ、ちゅー、ちゅーひてぇ」
「んっ、たくしょうがねーな……おら自分で舌絡めろよ」
顔を近付けて舌を伸ばしてベロキスを誘ったら舌じゃなく唇を突き出してむちゅむちゅ押し付けてきた。
「んっ、んっ」
「はっ、子供かよ。さんざん教えてやったろーが。あん?」
ぱんっぱんっぱんっぱんっぐちゅっぬちゅっじゅぽっじゅぽっ
「ぁっ、やっ、わかんにゃ、ぃっ、ぁンっ、もっとっ、ちゅーもっとぉ……っ」
真っ赤な顔でぐしゅぐしゅ泣いて繋いだ手をぎゅうってしながらキスをねだる。
「こんの……っ」
ビキ、と額に青筋が浮かんだ。こんなんエロすぎて血管キレるわ。
「てめーオレ以外のやつと酒飲んだらマジで犯すからな……!」
じゅぷじゅぷれろれろじゅぱじゅぷじゅるるるぱんっぱんっぱんっ
「ンぅ、ちゅぅ、ちゅ、ふっ、んんンンン……ッ!」
口の中をぐちゅぐちゅ犯してヌメヌメの舌にしゃぶりつきながら腰を振る。そしたら弓なりの身体がビクンビクンと痙攣して中が締まってちんこがグンっと膨張して。
どぷっビュルルゥゥッ
「ンぅ……っ、ンっ、ンっ」
ぐぷんと亀頭を奥にねじ込んで種付けしたら射精に合わせて舌をちゅうちゅう吸ってきた。
は? なんだそれ可愛い犯す。
腰をゆすって残った精液をどぷっどぷっと吐き出すと「んくっ、んくっ」と乳飲み子みたいに懸命に舌を吸ってきて、全く萎えないギンギンちんこで出した精液を押し出すようにじゅぷぅぅッと奥を潰してやるとバカみたいにエロい声で「ゃぁぁん……」と鳴いて身悶えた。
キレた。理性が。
「おらもっと腰使えよちゅーして欲しいんだろっ?!」
ぱんっぱんっぱんっぱんっぐぷっぐぷっどちゅっどちゅっ
「ぁんっぁんっゃんっぁンッちゅーしたぃっ、ちゅーしたぃぃ……っゃうっぁんっひんッひぃンッ」
キスをご褒美にオレの上に股がらせて自分で腰を落とさせて、つたない動きで一生懸命グラインドして腰を回してトロ顔でキスねだるのを下からガンガン突き上げて、耐えきれずに倒れた身体をひっくり返して舌を出させてレロレロしながら亀頭で奥グリュグリュして、「はひゅっ、はひゅっ」ってビクンビクン跳ねる身体に舌とちんこねじ込んでかき混ぜて唾液と精液飲ませまくって朝までめちゃくちゃセックスした。
「なんかあらぬ所が痛いんだけど昨日なんかあった?」
「お前マジでもう酒飲むな」
「は? なんで? こんど松崎さんと飲むんだけど」
「犯すぞ」
「はい?」
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