お昼の校内放送3


『皆さんこんにちは、お昼の放送でーす!今日もオレこと2年A組の淫魔くんがお届けしまーす』

購買にあるスピーカーから陽気な声が聞こえてくる。
しかし僕の気分は憂鬱だ。

「はぁ…」

手にはツナサンドがひとつ。
本当は2つ買いたかったんだけど、お金が足りなかった…。
いや、問題はそこじゃない。

『さてさて、本日のお題はー?「相手をメロメロにする方法、教えて?」ってことで、オレはねー、うーんやっぱり精液かなぁー』

廊下をとぼとぼ歩いていくと、放送は徐々に聞こえなくなっていった。

僕には性悪な幼なじみがいる。
いや馴染んではいない。なにせ性悪だ。
その上むこうは蛇男。対して僕は蛙の子。

今だって、購買で一番人気のカツサンドを買ってこいってパシられた。
しかもお金もくれなかったし。お前が食うんだから金寄越せよな。なんて怖くて言えない。

「はぁ…」

そして一番人気の商品なんて足の速い人たちに買い占められて残っている訳もなく。

「オイ。なにちんたら歩いてんだ。昼休み終わるだろうが」
「ひ…っ!」

ため息ついてたら蛇田が来てしまった。
只でさえ切れ長すぎる目が更に細くなってる。怖!怖!蛇怖!

「おーおー固まっちゃってカワイーねぇ。蛇に睨まれた蛙ってか?」
「…っ!…っ!…っ!」

動けない僕の目の前にひょろ長い身体が近づいて、上から覗きこむように見下ろしてくる。
そして大きな口をにんまりさせて舌なめずりする。
怖!怖!蛇怖!

「って、なんだそれ」
「はひっ」

あまりの恐怖に力が入ってひしゃげたツナサンド。
蛇田がそれに目を向けてくれて、やっと話せるようになった。

「あの…カツサンド売り切れてて」
「だろうな」

だろうなって。なら買いに行かせるなよ!とは怖くて言えない。

「だからあの、代わりにこれ」
「あ?買ってこれなかった分、蛙ちゃんの弁当で手打ってんだろ。いつも」
「いやあの今日は寝坊してお弁当ないから」
「あぁぁん?」
「ひぃぃぃ!」

またも睨み付けられて固まる僕。
を、見下ろしながら前進してくる蛇田。
グイグイ身体を押し付けられて、ズルズル後退する僕。

「てか何で一つなんだよ。自分の分どうすんだよ。ん?」
「うぅ…っお、お金っなくて…!」
「あぁぁん?」
「だだだだって蛇田がパン代くれないから」
「あぁぁん?」
「ひぃぃぃ…っ!」

頑張って言い返したら更にメンチ切られた!怖!怖!蛇怖!

「蛙ちゃんいままで一度も買ってこれた事ねーだろうが」
「うぅぅぅぅ…っ!」

その通りだけど!なら買いに行かせるなよ!とは怖くて言えない。

ガタッ

「…!」

しかも下がりすぎて後ろの壁に当たってしまった。
もう下がれない怖い。

「…まぁいいわ。んなパンいらねーから。自分で食っとけ」

あ、あれ?意外と怖くないぞ?
なんかちょっと優しいぞ?

「その代わり別のもん食わせてもらうぜ」
「ひ…っ?!」

騙された怖い。
もう下がれないのになおもグイグイ押してくる怖い。というか満員電車なみに密着して覆われている怖い。逃げられない怖い。そもそも怖くて動けない怖い。しかも舌なめずりされてる怖い。

「固まっちゃってカワイーねぇ」

ま、丸呑み?蛇ってたしか丸呑み?いや蛇田は普通にお箸使って僕のお弁当食べてたし顎とか外さないしでも今食べるって言ったしってぐるぐるしてたら空き教室に放り投げられてべちゃって潰れた。



『続いてのお便りはー』

誰もいない空き教室にも校内放送は流れてるらしい。

『歌姫さんよりいただきました。「淫魔さんこんにちは」はいこんにちはー。「私は声を出すだけで相手をメロメロに出来ます。耳に直接吹き込んだら射精させられるレベルです」えっ、凄くない?ローレライ凄くない?』

淫魔くんまたバラしてる…。まぁそんな能力があって歌姫とくれば、みんな分かってるだろうけど。
今日はツッコミの平凡くんいないのかな。

『「特に辱しめる言葉が堪らないらしく、淫乱と囁きながら中を抉ると突く度にイってしまいます。その姿が愛らしくて昨日も朝までしてしまいました」ってノロケじゃーん!いーなーオレもメロメロトロ顔の平凡くんとイチャイチャしたーい!昨日したけどー!』
「なによそ見してんの?」
「ひ…っ!」

気がつけば切れ長すぎる蛇田の目が真上にあった。
仰向けになってた僕を跨いで膝立ちして目を細めてた。怖!
そして僕の目の前には蛇田の蛇が

「ってぇぇぇ?!なんなんなんでそんなモン出してんの?!」
「そりゃ今から蛙ちゃんを食い散らかすから」

目の前には蛇田の蛇が頭をもたげていた。
いやほんと、蛇が威嚇するように長い竿を反らせて、蛇が動く時のように左右にグネグネ動いてる。
左右に、グネグネ、動いてる。
蛇田のちんこが。

「ギャァァァァ?!」
「あ?知らなかったのかよ?オレたちのココ、自分の意思で動かせんの」

うねうねグネグネ。
割にきれいな色の、僕の2倍くらい長そうな、血管が元気にドクドクしてるちんこが。

「グロっキモッ卑猥!」
「あぁぁん?」
「ひぃぃぃ!」

真上にある切れ長の目が更に細まる。怖!怖!マジ蛇怖!泣きそう!泣く!泣いた!

「おーおーウルウルしちゃってカワイーねぇ」
「…っ!…っ!…っ!」

腰を突き出してウネウネちんこで僕の頬をペチペチする。

「テメーは今からこのグロくてキモくて卑猥なモンにメロメロんなるんだよ」
「…………………ッ!」

あまりの恐怖に失神した。






『はいじゃー次のメール行っきまーす』

しまった…あんまりビビらせすぎっと固まるの越えて失神すんの忘れてた………。

『匿名希望さんから頂きましたー。なになに?「いくら身体をメロメロに出来ても強姦は犯罪です。身勝手な行動は控えきちんと合意を取ってから事に及びましょう」』

いや待て据え膳だぞ。
M字で仰向けの据え膳だぞ。泡吹いてるけど。

『うーん、なんか最後にごもっともなご意見来たねぇ。でも昨日のは平凡くんがエロ本読んでフェロモン駄々漏れてたのをオレがオナニー手伝ってあげたんだしぃ、あの匂い嗅いだら孕むまで出したくなるに決まってるしぃ、平凡くんだって「抜いちゃヤダヤダ中出しちんこもっともっとぉ」って可愛くおねだりしてたんだから、あれは完璧に合意だよね!って事はこれはオレへのメッセージじゃあ…ハッ!もしかして今夜もシようねっていう?そういう?やだ平凡くんほんとエロい勃起した』

幼稚園からの付き合いで昔はオレのあとぴょんぴょん跳ね回ってた癖に、オレが成長して蛇感増してきたらだんだん距離取ろうとしやがるこのアホ面を、頭ん中でさんざん犯してきたってのに。
ここまで来てお預けとか。
…………………ねぇな。ねぇわ。

「奥の奥までこじ開けてメロメロにしてやんよ」
「んん〜………へびちゃん待ってよぉ…むにゃむにゃ」
「……………………」

まぁ、今回は勘弁してやるか。

『という訳で今夜も平凡くんと合意の上で激しくセックスしたいと思います!』

まったねー!と頭悪そうな声を残して放送は終わった。
オレが耐えてんのにセックスとかあの淫魔呪い殺してぇ。

昼休みはもう5分もない。

「…おら起きろ授業始まんぞ」
「………ハッ!なんか凄い恐怖体験をしたような…?!」
「あぁぁん?」
「ひぃぃぃ!」
「クソカワイーなさっさと戻んぞ」
「ん?んん?あの、え?なんでさっきあんな…」
「………蛙ちゃんが弁当忘れるからぁー、腹いせ?」
「そんな事で…!蛇怖い!」
「つぎ忘れたら今度こそ犯す」
「ひぃぃぃ!」


☆次の日

「テメーなんで弁当持ってきてんだよ!」
「ひぃぃぃ?!」


[*前] | [次#]


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -