AVスタッフの憂鬱7


いつもの時間にシゴキさんから着信がきた。
オレは少しどきどきするのを悟られないように電話にでる。

「ど、どうしたんですかシゴキさん」
『どうって、最近毎日かけてるだろ?』

あ、出だしで失敗した。
シゴキさんが電話の向こうで笑ってる気配がする。
めげるなオレ。よし、言うぞ、言ってやるぞ。

「そ、うですよね…えっと、あの、用がないならその、かけてこないで欲しいっていうか…」
『…ふぅん、オレと話すの好きじゃない?』
「…好きじゃない、です」
『オレの事も?』
「好き、じゃ、ない……です」
『…そうか、気付かなくてごめんな。もうかけないようにするから』
「えっ、あっまっ待ってくだ」

ブツっと切れた電話に血の気が引いた。
どうしよう。泣きそうだ。最低だ。

カレンダーみたらエイプリルフールだったから、ちょっとだけ、ちょっとだけテンション上がって、ちょっとだけ嘘ついてみようって、たぶん一生好きだとは言えない人だから、今日ならいいかなって、嫌いって言ったら嘘になる日だけど好きとは言ってないから、男の人にも言っていいかなって、そう思って、そう思って。

「シゴキ、さ」

泣きそうになりながらシゴキさんの携帯にかけ直す。

プツッ

とコール音が途切れても、向こうは無言のままだった。

「シゴキさん、シゴキ、さ」
『…なに』

最低だ。一人でなに浮かれてたんだ。
エイプリルフールなんていったって、相手が本気にしたら嫌いがほんとになるのに。

「違っ違うんです、違う、シゴキさん、オレ、さっきの違くて」

若干しゃくりあげながら要領を得ない言葉を繰り返す。
だって好きなんですなんて言えない。
こんな、鼻声でそんなん言ったら本気っぽくて引かれるだろ。
いやもう引かれてるか。最低だ。
どうしよう、オレ、もう、もう。

「オレ…っ」
『おいおい、好きだなんて言うなよ?』

シゴキさんの言葉に、オレは今度こそ血の気がなくなったと思う。
知られてた?引かれた?
違うんですシゴキさん、オレは、オレは

『エイプリルフールなんだから、好きって言ったら嫌いになるだろ?』
「っぇ」

電話越しにも分かるシゴキさんの笑う気配。

『スタッフくんはオレの事好きじゃないんだもんな?』

優しく言われて、シゴキさんはオレの嘘に気付いて付き合ってくれたんだってやっと分かった。

「はいっさっきの間違ってなかったですっ」
『オレももう電話しないから。それでいいだろ?』
「はいっ待ってます!ぁっいや」

電話の向こうで盛大に笑うシゴキさん。うう、最低だ。

『オレも大っ嫌いだよスタッフくん』
「…そ、こまでは言ってないです…」
『ならそうさせてやるよ。これからな』

覚悟しとけよ、なんて甘く囁かれて、危うく勘違いしそうになる。

でも、嘘でも嬉しいと、思った。


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