※先天性女体臨也ネタ
脱衣ネタの続き




昼飯を一緒に食べたり、二人で学校から帰ったり、週末にはデートを重ねてかれこれもう半年になるだろうか。
俺と付き合い始めてからも臨也は以前と変わらず外ではパンダ顔で奇抜な格好をしている。
だけど臨也んちで二人っきりになった時だけは違った。

高校生にも関わらずマンションで一人暮らしをしている臨也の部屋に、外デートもそこそこに二人で帰ると臨也はまずメイクを落とす。
俺がお願いしてそうして貰っている。
「先に映画見始めないでよ。待てだからね。待て」
先ほどレンタルしてきたDVDを指差してキャンキャン言う臨也に俺はシッシッと手を振りながら、ガソゴソとコンビニ袋からお菓子やジュースを引っ張り出した。
最初は彼女と二人っきりの部屋、などという空間にお互い緊張しまくっていたが、今では随分慣れたものだ。
臨也が風呂場に入りシャワーを浴び始める音を聞いて、俺はハァーと深い溜息を吐いた。
普通、彼氏が家に来てる状況でシャワーを浴びるなどという行為は、つまりアレすることを連想させるだろうがあいつは違う。
シャワー浴びて、さっぱりした体で部屋着に着替えて、ただくつろぐためにああしているのだ。
元々臨也は好きで奇抜な格好をしているわけではない。
自分の顔にコンプレックスを抱く余り、隠すために塗りたくってゴテゴテと防壁を築いているだけなのだ。
本当はスッピンの方が楽だし、シンプルな格好の方が好きなのだと最近知った。
付き合い始めの頃は二人きりになってメイクを落としても、着替えまではしなかったり、それ部屋着?みたいな重ね着だったりしたが、今ではすっかり俺がいる環境に慣れきって無防備極まりなくなった。
俺がいても気にすることなく風呂にまで入ったり、ゆったりした部屋着でふくらはぎまで見せるようになってしまった。
いや、遠慮しなくなったのはいい。気を許すのは、付き合っているのだからいいのだが…
「人の気もしらねーでよぉ…」
俺はまたも溜息を吐く。
こう見えて俺たちは非常に清い交際をしていた。
セックスはおろかキスすらまだしたことがない。いや待て、そういや手とか繋いだことあったっけ。ないな。喧嘩中に腕や首根っこなどを掴んだりしたことはあるが、恋人同士みたいに手を繋いだり腕を組んだりしたことはない。
これでも一応俺たちは付き合っている。付き合ってる…よな?
分かっている。原因は俺だ。自分から付き合えと言ったのに、いざ彼女となったあいつを前にすると手が出せないのだ。

初恋は小学生の頃だったと思うがもう忘れた。
臨也が幼少からのコンプレックスに縛られているのと同じように、俺も自分の力にコンプレックスを持っていて、誰かを好きになったりましてや付き合うなんてしてはいけないんだと、臨也と会うまでは思っていた。
なんというか、臨也はいろんな意味で特別な女だった。
こいつなら我慢しなくていいんだと何故か思えた。
だけど好きだと自覚して、好きになった女と付き合うなんて初めてで、どう接したらいいか分からなかった。
付き合う前はあいつを女として意識したことはほとんどなかったのに、付き合い始めるとやけに女の部分が目に付いて、それが俺には恥ずかしくてしょうがない。
折原臨也は確かに女だ。付き合う前も、今も変わらずに。
しかし実際メイクを落とした顔を見てしまうと、綺麗で可愛くてちっさくてただポケ〜と見とれてしまうし、普通のワンピースやピンクのリボンがついた服とか着られると、なんだこの可愛い生き物はこれが俺の彼女とか夢じゃないかとデレデレしてしまう。
するとそんな俺を臨也が変なものを見る目で見てくるので、俺はいつも慌てて自分を押さえつける。
負けてたまるかと眉間に力を入れてこみ上げる衝動を押し殺す。
ギッと睨みつけ何見てんだコラ喧嘩売ってんのかコラなんて言ってやれば、自意識過剰ウザイんですけどと言いながら、なんだいつものシズちゃんかと臨也は安心するのだ。
テレてる自分が恥ずかしくて、そんな風に誤魔化し続けて、本当の気持ちを隠して距離を詰めることも手を出すこともできずに早半年。
薄着の季節が近づくにつれ、俺の理性と我慢が決壊するのは時間の問題に思えた。
でも半年だぞ?決壊してもいいんじゃないか?
だって付き合っているんだからな!
俺は今日ももんもんとそんなことを考えながら臨也と過ごしていた。

「おまたせ〜」
風呂場からペタペタと臨也が歩いてくる。
チラリと目を向けると、今日の臨也はいつもより一層薄着だった。
これから夏にむかうのだから逆に厚着になりようがないのだが、いやそんな問題じゃない。
ほてった顔を手でパタパタ仰ぎながらやってくる臨也はVネックのノースリーブだった。まさかノーブラではないだろうが胸の谷間見えてるし!つうかえ?なんで短パン?体育の時のハーフパンツより短いじゃねーか!
冷蔵庫から水を出してごくごく飲んでる喉の動きにも目が釘付けになる。
濡れた髪がうなじに絡んでエロイ。
ペットボトルから口を離した臨也がこちらを振り返るのとほぼ同時に俺は顔を背けた。
「何してんのさっさとDVDセットしてよ」
「人を待たせといてなんだその言い草は」
誤魔化すためチッと舌打ちしながら、内心の動揺を押さえつけてDVDをデッキに入れる。
二人掛けソファーの隣に臨也が腰掛け、クッションが少し沈む振動に俺はギリギリと歯を食いしばった。
「…寒くねーのかそれ。湯冷めしてもしらねーぞ」
「は?これから着るとこだし」
臨也はそう言って片手に持っていたグレーのパーカーを頭からもそもそかぶり始めた。
クッソかわいい!
カツラだとか変な髪飾りだとかを外してショートカットになったスッピンの臨也は本当にかわいい。
無地グレーのパーカーで短パンという飾り気のなさが女というより女の子という感じで、でも湯上りのしっとりした色気があって、肌は白くてツヤツヤだし唇は赤くてツヤツヤだし、どうしろっつうんだよ!
俺のそんな葛藤をよそにデッキに突っ込んだDVDは勝手に再生を開始し、臨也はそれを見始めた。
「この映画の続編が夏にあるんだってさ。面白かったら見に行こうよ。アクション系ならシズちゃんでも居眠りしないでしょ」
映画館は暗くて眠くなるから家でレンタル見ようぜ、という口実でいつも部屋におしかけ臨也のスッピンを拝んでいた俺である。
ああうん、などと適当な相槌を打ちながら、その頃にはこんな我慢しなくていいようになってればいいのにと思いを馳せる。
横に目線を移すと短パンから伸びた白い足が見える。きっと触ればすべすべしているに違いない。
ツイと伸びた細い手がポテトチップスの袋をつまんで引き寄せた。
「んんーっ」
ワシャワシャと袋の口を引っ張ってるが、開かないらしい。
だからかわいいんだよ!
俺は脳内で悶えながら顔をしかめ手を伸ばした。
「貸せ」
ひったくってあっさり開けてやると、上目遣いで睨まれた。
「今たまたまボディクリーム塗ったばっかで手が滑っただけだし開けられないわけじゃなかったのに調子乗らないでねシズちゃん」
「ほんとテメーはかわいくねぇよなぁ」
心とは逆のことを言って、フンと鼻を鳴らす臨也と二人、ポテトチップを奪い合いながら映画を見る。
映画では序盤から早くも出会ったばっかの主人公とヒロインがなにやら熱くキスを交わし始めた。
洋画特有の舌を絡める生々しいキスシーンを見ながら、臨也とやりてぇなぁとぼんやり思う。
会ってすぐであんなキス、よくできるな。
いや、会ってすぐだからかもしれない。俺なんて最初に意地を張ってしまったばかりにズルズルと手を出せない状況に慣れてしまった。
最初の緊張感がある間の方がまだ臨也は俺のことをそういう風に意識してたと思う。
今、こいつは俺のことをちゃんと彼氏だと、男だと意識しているだろうか?
そっと隣をうかがうつもりがバチッと視線が合った。
「やだシズちゃんキスシーンでそわそわしちゃうとか家族団欒中の中学生じゃないんだからさププーッ」
「あ?テメェこそ顔あかくなってね?なにカマトトぶってんのかなぁ臨也くーん」
「よりにもよってシズちゃんにカマトト言われたくないんですけど。童貞こじらせて死ねばいいのに」
臨也の右手が妖しい動きを見せたので咄嗟に手首を掴む。ナイフでも取り出されてはたまらない。
すると極力手加減をして掴んだ手首からすごい速さで打つ脈が伝わってきた。
俺は思わず固まった。
はっとした臨也の体もカチンと固まる。
二人して黙ってしまうと、テレビからバタンゴソゴソと音が流れてきて、お互いから目を逸らすように見た画面では男が女を押し倒していた。
おいこんなベタな展開ありか、と俺は思う。
でもこのチャンスを逃したら、次はいつ触れられる?
俺は喧嘩でこいつに触れたいんじゃない。
ちゃんと彼氏と彼女として、触れたいんだ。
見つめた臨也の頬は見間違いようがなく赤らんでいた。
言葉もなくどこか必死な目で、俺の行動を待っているように見えた。
俺は掴んだ腕をソファーに押し付け臨也の上に覆いかぶさった。
それでも臨也は黙って俺を見上げていた。
いい匂い。
かわいい。
近付いて、近付いて、小さな顔にぐっと自分の顔を近付けて、それからそっと唇を重ねた。
ようやく、ついに触れたそこは柔らかくて温かかった。
息を止めて真一文字に閉じられた唇に自分の唇を押し付け、角度を変えてまた押し付ける。
ヤバイ、これ気持ちいい。
夢中になって、でも力加減に気をつけて口を擦り合わせていると、自然重なった胸の膨らみからもドクドクとものすごい速さの鼓動が響いてきた。
こっちもすげぇ柔らけぇ!
臨也のおっぱいが当たってる、というものすごいことに気付いて、俺はガバリと体を起こした。
口が離れた臨也はハアハアと荒い息を吐きながら俺を潤んだ目で見上げた。
その顔が途端にくしゃりと歪む。
「い、いざ…」
「ヤダ!!」
離した手をもう一度伸ばそうとピクリと動いた時臨也が叫んだ。
「ヤダ!もう嫌だ!どけよ!離れろ!」
突然の叫び声で鼓膜がキインと痛む。
俺は一瞬状況を掴みきれずぽかんとしてたと思う。
それがただキスをしただけの彼氏に吐くセリフか?なにか間違えてねぇ?
しかし臨也の罵詈雑言は続いた。
「帰れ!もうやだ!最低!早く出てって!出てけ!!」
ここで臨也から蹴りの一つも出されたら、俺はいつのもように切れて喧嘩でも始まっていただろう。
しかし臨也はぎゅっと体を縮こまらせ俺から顔を背けてソファーの端で小さくなって震えていた。
ガラガラと何かが崩れていくようだった。
くらっと眩暈がして、そのまま臨也から後ずさるように後ろに体が傾く。
……あれ?
あれ?俺らって付き合ってるんじゃなかったっけ?
ぐるぐると疑問が頭の中で回っている。
気がついたら俺は臨也の部屋を飛び出していた。
走って家に帰って自分の部屋に駆け込んで布団の上に倒れこんだ。
あれ?おかしくないか?俺ってそんな酷いことしたか?彼女にキス、しただけじゃねーか。
なんであんな顔、されなきゃいけねーんだ?
訳わかんねーよ。
あいつおかしくねーか?
俺は悪くない、よな?

「あいつ…やっぱ変な奴だ」

唇は柔らかかったけど。
ようやくのファーストキッス記念日に、俺は訳が分からず治まらない動悸にいつまでもクラクラしていた。




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