vol.5

side:静雄

まれに夜、臨也小屋から悲鳴が聞こえてくる時がある。
今まさに響いてるのがソレだったりする。
バタンガタンと大きな音がして俺を呼ぶ臨也の声が鮮明に聞こえてきた。

「ちょっ!シズちゃん!! た・助けっ…って!コラッ やめっ!!」

仕方なくドアを開けて部屋を一歩出る。見ると臨也小屋への入り口付近に巨大な毛玉の塊があった。
尤も…俺が少し近付くとその塊はぶわわっと離脱していくのだが。
臨也曰く、俺が引き離そうとするのを察知するらしい。あの毛玉の塊は森にいる野生動物らしいのだが、野生なだけあってちょっと驚かすだけでも逃げてしまうらしい。
これまでに何度も「驚かすから逃げるんだ」と言われたが、臨也のようにモフモフまみれに俺もなる事ができるんだろうか。
いや、諦めるな、頑張れ、俺。

動物達が去って一人残された臨也は床に這い蹲ってゼーハー息も絶え絶えだ。
しっかりとパンツのウエスト部分を握り締めているところを見ると、そこから入り込まれようとされたんだろう。

「うぇぇ… シズちゃ…」半泣きで手を延ばしてくる臨也を可愛いと思う。

抱き起こそうとする俺の首に手を回し、腰に足を巻きつけ、胸に頬を摺り寄せてくる臨也を愛おしいと思う。

あんなに動物にまみれていたのに強く匂う臨也臭に、何を思ってフェロモンを撒き散らしたんだか…っと呆れたが、自分もその匂いに引き寄せられた1匹だ。
もう何年も前からこの匂いだけに反応してきた。


「…テメェが悪い。」

そんな香りを撒き散らすから動物まみれになるんだ。

そんなエロい顔で見上げてくるから抱き締めてしまうんだ。

そんな甘えたようにすり寄ってくるから

怖かった、気持ち悪かったっとしがみ付いてくるから


今夜は絶対離さないで…なんて言いやがるから


部屋に連れ込み、ベッドに押し倒し、その喉元に喰らい付いても……
仕方ねぇよ…なぁ?




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