vol.6

side:臨也

まれに夜、ちょっと良い雰囲気になる事がある。
生パスタの生地をこねるシズちゃんと、その用途を考える俺。
暖炉の前に二人並んで肩なんか寄せちゃって、それが心地良いなんてね。
「たまにはラザニアとかどう?」
「いや…カルボナーラを作りたい。」
「あぁ、生クリーム・卵・ワイン・チーズ・オリーブ油かぁ…できる…ってベーコンは?」
「作ってる。」
「えっ?ベーコンを?」
「漬け込んで7日だからもう明日塩抜きして燻製するからな。昼には間に合うようにするから。」
「シズちゃん、ベーコン作れたの?マジで?」
そんな会話を楽しんで、こね終わった生地を寝かせてきたシズちゃんがさっきよりも近く座って。
そこからはもうベタベタな展開にってやつで…
手が触れて目が合って……ってとこでシズちゃんの携帯が鳴ったんだよね!

速攻立ち上がって電話をしに行ったシズちゃんなんか放っておいて部屋に閉じこもったよね!
暖炉の火だって消して真っ暗にしてやったよね!さっさと寝れば良いんだ。


あ〜あ、久々だったのにな…。
ベッドに入って毛布に包まったらバリアなシズちゃんの匂いがして、
さっきも凄く近くに居たのにな〜とか
あの欲情溢れた表情ヤバかったな〜とか
そんな事思いながら、やっぱ久々だったって事もあったし、俺も健全な男だし、
ちょっと…ほんのちょっと…シズちゃんとのアレコレを想像しちゃって、
ヤバイな体が熱くて疼いてきた…とか思ったら

ガタッ トトトトトトッ ガツッ モソモソ カサカサカサ バサバサッ

うん、一瞬で物凄く 野生 の匂いが充満した。俺の部屋だよね、ココ。
何で?シズちゃんのバリアが効いてない?
近付いてくる気配(っていうか音)に飛び起きると暗闇の中迫り来る光る目!目!目!

「うわぁぁぁぁぁっ!!」

これは引く。ドン引きだよ!無い無い無い無い無い!
うろたえて隙を見せた俺に野生の獣は容赦なく飛び掛ってきた。
絡みつくモフモフ、引き剥がしては投げ引き剥がしては投げたけどキリがない。
奴らは懐いてるなんて可愛いもんじゃないんだよ?例えるなら俺に入り込もうとしてるんだ。
服の中、ポケットの中、パンツの中にだって入り込もうとする。
どれだけ深く俺の中に入れるかなんて争ってるみたいに!

何かの尻尾を踏み付けたけど気にせずドアを開けて部屋を飛び出る。
これはもうシズちゃんのオーラに頼るしかない。
きっとあのシズちゃんバリアな毛布って微香料な柔軟剤を使っちゃったやつだ。オーラパワー半減だ。
超高級品だったけど全部破棄だ、破棄。無香料万歳だよ!

「ちょっ!シズちゃん!! た・助けっ…って!コラッ やめっ!!」
本当にもう鼻をクンカクンカしながら俺に纏わり付いて服の中に入り込もうとするのをやめろ。
そんな事をするのはシズちゃんだけで良いんだよ。

部屋から出てきたシズちゃんが5m圏内に入ったとたんに俺に纏わり付いてた獣が一斉に散った。
体は軽くなったけど未だに残る不快感は拭えないよ、シズちゃん。
「うぇぇ… シズちゃ…」
あぁ…早くシズちゃんのオーラを俺に擦り付けないと。
手を延ばしてシズちゃんに抱き付く。顔を摺り寄せてシズちゃんの匂いを俺に染み込ませよう。

本当にキモいんだから。怖いんだから。

当分あんなのはゴメンなんだからね。
だから今夜はずっとシズちゃんにくっ付いて濃く移り香を纏ってやろうじゃない。


そうだよ、シズちゃんの部屋に連れ込まれるのは俺の計算通りなのさ。
シズちゃんなんか勘違いしたまま俺に溺れると良いんだ。

もともとシズちゃんが雰囲気ブチ壊したのが悪いんだから……
仕方ない…よねぇ?




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