vol.3

天気も良く、そよ風も心地良いある日、もうすぐ昼御飯だという時間に臨也は裏のモミの木の上で寝ていた。
地上25mの位置に設置してもらった(byドタチン)ハンモックは臨也専用のハズだが、臨也不在の時は動物達が利用しているようだった。本能よりも臨也フェロモンの方が強いらしく、近付いた外敵ごと臨也臭に執着するらしく天敵同士が仲良く(?)ハンモックにしがみ付いている光景をしばしば目にする事ができた。
もっとも、ソレを目にするのは臨也のみであり、目にした瞬間にハンモックに居た動物全ての襲撃を受けるのだが。



そんな臨也が今回は一人優雅にハンモックに揺られていた。この状態になるにはオプションとして静雄の衣類等を持ち込まないとできないはずだが、未だに愛用している黒ジャケットのままだった。もしや下g「バカ言わないでよ!」


…何だか酷く侮辱された気がする。久々な一人の時間だっていうのに。
「あぁ…それにしても…まだちょっとダルいよ;好き勝手に喰ってくれちゃって、もう!」
だんだん獣そのものになってきてるんじゃないか?なんて思うよ。でもまぁ、シズちゃんに喰われてから約8時間は俺にシズちゃんオーラがまとっているのか動物が一切寄って来ない。精々俺の遥か頭上でトンビが旋回してる位だ。
たまに携帯を弄りながら一人の時間を過ごすのも俺には必要だ。俺の部屋は…たぶん…何かが居る、絶対。

そう、こんな時間が必要だから…あからさまに誘ってくるシズちゃんを拒んだりしないんだ。
シズちゃんの髪を乾かしてやった終わった時に抱き締められても、鍋に残った最後のひとくちのクリームシチューを掬って口に突っ込んでやった手を掴まれた時も、珍しく寝坊したんだろうシズちゃんを起こしに(朝御飯の為だよ!)
行った時にベッドに引き擦り込まれた時も、いつだってあの逞しい両腕に捕らわれたら逃げられやしないんだ。
農業やってるクセに未だに綺麗な大きい掌で背中を撫でられて、細くて長い指に擽られると逃げようとも思わなくなる。

相手はこの山の神だ。獣のボスだ。この山に住んでるんだから俺だって何かを捧げないといけないじゃないか。
そう、断じてこの目の前の獣が愛おしいとか思っているワケじゃない。
包まれて安心してるワケじゃない。翌日の静かで平和な時間を得る為の極上な献上品なんだよ、俺は。

ブツブツ言いながら眠りについた臨也の黒髪を優しい風が撫でる。
昼食の時間になったら、空を見て旋回するトンビで臨也の位置を確認した静雄がモミの木の下に来るだろう。
そしてカブトムシを落とすが如く軽く木の幹に蹴りを入れ、その衝撃で臨也をハンモックから振り落とすのだ。
両手にお姫様抱っこのように受け止めてそのまま家に入ると、意地なのか未だ寝たふりをする臨也を彼のお気に入りなロッキングチェアに座らせてやるのだ。そして髪をひと撫でしてから昼食の準備の仕上げに掛かる。


静雄は知っている
お姫様を起こすには美味しい昼食の準備が整った合図の甘いキスが必要なのだと。




戻る
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -