結果自然成

 二一時一五分──伏黒甚爾

 五条悟の封印。脳みそ野郎のちまちまとした計画の第一目標がそれである。恐らく、五条を身動きの取れねえ様にした上で、脳みそ野郎の本来の計画が始まるんだろう。その計画が何かは分からねえが、兎にも角にも何をするにしたって五条を封印できなきゃ始まらない。
 逆に言えば五条の封印を阻止さえできりゃ、脳みそ野郎の何らかの計画は破算する。まあ、単騎で最強な五条がいればどんな相手もすり潰せるから、分かりきった事だが。
 で、肝心の五条悟を封印する手段が獄門疆という呪物。有効範囲半径四mに封印対象を脳内時間で一分間足止めをすれば、対象の呪力を封じた上で箱の中に収めることができるという優れ物。呪力が使えなくなりゃ術師は死んだも同然だしな。
 しかしまあ五条の脳内時間で一分間、あいつを半径四m以内の場所に留める、なんて無茶がすぎる。俺でも無理だし、夏油でも無理だわ。
 しかし脳みそ野郎共はどうにかして五条を封印せねばならない。そうじゃねえと何もできねえから。
 だから。その為に、あの脳みそはわざわざ夏油傑のクローンを作りあげていた。どうにも協力者に優秀な技術者がいるのか、どっからどう見てもホンモノの夏油らしい。夏油本人を知っているメカ丸が偽物を見てそう言っていたし、信用はできる情報だ。……恐らく呪霊操術も使えるのだろう。
 そんなクローンを見ちまったら、どう足掻いたって五条は脳内時間で一分以上思考してしまう。親友と全く同じ肉体で、呪力で。なのに確実に親友では無い存在の登場なんざ、青天の霹靂だろうしな。あらゆる可能性を考えてしまえば、一分なんてあっという間。
 だからあの脳みそが五条に話しかける前に、五条を獄門疆の有効範囲から追いやる必要がある。
 はてさて。
 物凄く単純な話だが、伏黒甚爾は非術師である。いくら強かろうが呪力も術式もねえ猿だ。だがしかし帳の条件付けに適用される呪力を持たねえから、帳自体も俺の前では意味をなさねえし、俺を気取れる人間なぞ六眼持ちの五条悟しかいない。しかも隠密行動をしていればアイツでさえほぼ気づけねえ。
 つまり何が言いたいかと言うと、だ。
 俺が非術師に紛れて東京メトロ渋谷駅の地下五階、副都心線ホームの上に居ようが誰も気付けねえって話だ。
 そこで地下五階投入前の非術師に紛れてりゃ、五条ですら俺に気付ける筈がない。俺にとって、こういう群衆に紛れるのが一番気配を消せるんだし、随分とやりやすい戦場だ。あとは五条が領域展開をするのを見届けて、改造人間を殺し切って一息ついたその瞬間を待っていればそれでいい。その瞬間にこそ五条は気を抜き、逆に脳みそ野郎は好機とみて姿を現す。
 脳みそ野郎のお仲間が地下五階に非術師をどんどん放り込んでいるのを後目に、じっと機を待つ。確か領域展開後、五条は三〇〇秒程度で改造人間を殺し尽くした筈だから、それを目処に動かねえと。
 息を殺して機をうかがっていると、五条の領域展開を確認できた。もうそろそろアイツが現れるだろうか。音を立てないように、地下五階に即座に飛び降りれる位置まで移動し、ひっそりと様子を伺い続ける。
 そうして五条の領域展開から二九九秒後。遂に地下五階の改造人間が鏖殺され、五条が一息をつく。そこに獄門疆が投げ込まれるのを視認した瞬間、一気に五条の元へと駆け降りた。

「おら、しゃきっとしろ」

 脳みそが五条に話しかける直前、五条の首根っこを掴んで、獄門疆の有効範囲から遠ざける。降って湧いた様に突然現れた俺に対し、脳みそ……面倒臭えから偽夏油は、目を見開いた後に忌々しそうに顔を顰めた。ザマア見ろクソ呪詛師。

「ハァ……君にはロサンゼルスに行ってもらった筈なんだけどな」
「そうすると知ってたんでな。対処は簡単だったぜ」
「……上にいたのか。嗚呼、本当に忌々しい」

 俺を厄介払いしたがってるってのは知っていたし、ハロウィン当日には俺を海外にやるつもりだって聞いていた。俺に違和感を持たれない様に前々から海外出張を増やしてきていたし、俺が“俺”じゃなきゃ割と良いやり方だと言える。
 が、この伏黒甚爾は俺だ。ハロウィンに合わせた海外出張なんぞ行くわけねえ。
 しかもこれまで素直に全部の海外出張に行っていたから、今更俺が偽装するとは考えていなかったらしい。

「……先生?」
「よお、お疲れか?」
「まだまだ出来るに決まってんじゃん。なめんな」
「なら、おまえは偽物と富士山頭を半殺しにしとけ」
「……なんで半殺しかは知らないけどわかった。んじゃ、つぎはぎ野郎と九相図は先生ね」

 きょとんとした顔でこちらを見る五条の顔には色濃い疲労が伺える。まあ一人でこんだけやればそうなるか。……だが、それでもまだ余裕はあるようで、ぶんぶんと腕を振り回したかと思えば、好戦的な顔で偽夏油を睨みつけた。
 親友の模造品の体を好き勝手に扱われて、相当苛立ってんのかね。さっきまでよりも随分とやる気に満ち溢れている。
 そんな五条の様子を見て、己の不利を悟った偽夏油が真人の方へと向かって逃走を図ろうとするが、それを阻む様に血液が飛来した。ナイスタイミングだ。

「おい。どうせ見ていただろうが、俺は人を殺していない」
「へいへい。見てたっつーの」
「…………ふぅん?やっぱ接触してたのか」

 五条の領域展開から回復した脹相が、俺の隣に立つ。それを見た五条がどこか納得した様に頷いた。恐らくだが縛り通りに人を殺さず、ちまちまと五条を攻撃していた脹相に、元から違和感を感じていたんだろう。
 それに、五条は九相図の兄弟を俺が所持しているのを知っている。なんとなく関わりがあるのもわかってた筈だ。

「封印されねえ様にすんのと、あいつにあの呪具回収されねえ様にしろよ」
「はーい。んじゃまあ、さっさとヤるか」

 さっきまでよか随分と気楽そうな顔付きになった五条が、偽夏油に接敵する。その後ろから、マイペースに脹相がちまちまと攻撃を加えていた。兄弟が絡まねえととことんやる気ねえんだな、アイツ。……マ、五条がいるなら大丈夫だろ。俺は俺の仕事をしねえと。
 五条の領域展開から回復したは良いものの、状況が悪くなっている事に気付いたツギハギの呪霊……真人が周囲の人間をどんどん術式で改造し、俺に向かわせてくるが全て無視する。そいつらは後で殺せばいい。

「アンタ、呪力が無いんだろ?それでどうやって俺を倒す訳?」
「おまえだって俺より遅いじゃねぇか。どうやって俺に術式を当てるつもりだよ」
「はは、ムカつくね、アンタ」

 真人の術式である無為転変は相手の魂に直接手で触れて魂の形を操作する事で、肉体の形状までも変形、改造するものだ。更に言えば自分自身に使えばその肉体を自由自在に変形させ、身体強化等も容易にできる。使い勝手の良い、応用の幅が広い術式といえよう。
 俺の場合呪力を持たねえから、自分の魂の知覚は兎も角として魂を呪力で保護して防御する、ってのが出来ねえから触れられちまえば終わりの術式だ。……まあ、俺のが速いし強いから触られる事は無えんだけど。気に掛けるとすりゃ領域展開だが、その中に入らねえ様に気をつけりゃ事済む。
 吐き出した格納庫呪霊から刀を取り出し、先ずは真人を脳みそ野郎から離れた所へと蹴り飛ばす。周りの人間がボーリングのピンみたいに倒れてったが、まあ良いや。死んでねえだろうし。
 そのまま、一番邪魔な真人の手を切り飛ばし、脚の腱を切り裂く。……が、俺の攻撃は真人の魂に直接干渉するもんじゃねえから、無為転変で即座に手足が再生されていく。はー、便利で羨ましい術式だな。
 ……そんな真人の脳天を、特級呪具で突き刺した。

「五条ォ、終わったか?」
「なんか新手来た!先生は終わった訳?」
「ほぼ終わった」

 真人の髪を掴んで地面に引き倒し、念の為逃げ出せない様に地面にナイフで磔にする。困惑した様子でウゴウゴともがいているが、特級呪具が刺さった状態じゃどうしようもない。
 特級呪具「天逆鉾」その効果は、発動中の術式の強制解除。
 無為転変で己の手足を生やし、変形する真人にとって天逆鉾は天敵とも言える呪具だ。自分自身にも術式を使って変形できるのが仇になってんな。
 いやぁ、ここまでこの呪具を温存しておいてよかった。今まで一回も天逆鉾を使っちゃいねえから、俺が天逆鉾を所持している事は誰も知らない。知らないって事は対策なんざ出来ねえって事で。

「無為転変、だっけか?使えねえよな。だってソレ、そういう呪具だし」
「……ハァ?なにそれ」
「一応、禪院の家にも封印用の呪具とかあんだよな。流石にあそこに落ちてる呪具ほど破格の性能じゃねえけど」

 焦りで顔色を変えた真人が現状を打開しようと足掻いているが、天逆鉾が刺さってる時点で無理だ。
 呪霊はその成り立ちから、反転術式を使用して四肢の再生を容易に行えるが、真人はその点勝手が違う。反転術式を使わずとも無為転変を使えば四肢が再生するのだ。反転術式とかそもそも無用の賜物。つまり、真人は特級呪霊の癖して未だに反転術式を取得していなかった。まあコイツの成長速度からして、放っておけばすぐに取得できちまうだろうから、呪力も追加で封じるわけだが。
 四肢を生やす事が出来ないままウゴウゴしている真人に、呪力を抑え込む札をペタペタと貼り付け、その上からオマケとばかりに封印用の呪具を突き刺す。代々封印の術式に長けた一族が長年使ってきた呪具で、その残穢がこびりついているのか呪具自体にも封印の術式が刻まれただとか何だとか。
 そもそも、そういう呪具がなんで禪院にあるんだっつー話だが。その一族、禪院に関係ねえじゃねえか。

「あーあ、ほんとアンタなんなの?キタガミがあんなに遠ざけてたのにこんなとこ居るしさあ」
「一〇年以上前から不審な動きがまれにあったんだ。俺を遠ざける様な真似すりゃ何かがある、って丸わかりだわ。つーかキタガミって誰だよ」
「さっきアンタが偽物って呼んでた奴」
「へえ、あっそ。じゃあおまえは強制送還な」
「次の俺はすぐに生まれるから、次こそ殺してやるよ」

 体は動かねえものの口だけは動く様で、真人は俺に対してぶーぶー文句を垂れる。小憎たらしい野郎だ。
 そんな状態の真人の前に呪具を一つ設置した。薄汚れた鏡の形状をしたそれは本来合わせ鏡になっていて、対の鏡さえあれば遠くの場所と空間が繋がる代物だ。
 準備は終わったぞ、という合図の代わりに呪具の鏡面に小石を放り込む。すると即座に石が投げ返されて、鏡面から小石が飛び出して真人の顔面にぶち当たった。丁度向こうも用意は出来てるらしい。一拍の後に鏡面が揺らいで、人間の腕が飛び出してきた。

「ゲェッ、さいあく」
「じゃあな」
「俺アンタ嫌い」

 鏡面から突き出ている人間の腕に、真人は何か勘付いた様で顔を顰めた。そして動けないなりになんとか掌から逃げようともがいていたが、あっさりと顔面を鷲掴みにされる。その直後、真人の体がぐにゃりと形を変えて、真っ黒の球体になった。……夏油の呪霊操術の効果である。
 俺を海外出張に向かわせるなら、当然、五条と同じ特級の夏油も渋谷に向かえないような妨害が入る事は分かっていた。だからこその、この呪具だ。片割れの鏡を予め夏油に持たせておけば、渋谷に居られずとも鏡を通して呪霊を降伏できる。
 それに、仮に渋谷に来れたとしても五条悟以外の術師を通さない帳が降りてるし、夏油はこの戦場に入れねえ。いやぁ、色んな呪具を持っててよかった。その点だけは直毘人に感謝してやらんでもねえ。

「手伝いは?」
「要らない!もう終わる」
「ぐゥ……ッ!!」

 未だに戦闘音が続いているから、と念の為に尋ねてみたが、まあ五条からすりゃどんな呪詛師や呪霊も烏合の集だ。喋っている最中にも、どんどん敵の数は減って行く。それに脹相も五条の動きに触発されてか、多少なりとも呪霊狩りにやる気を出してるみてえで、すぐにおかっぱ頭の坊主を残して敵は壊滅した。
 半殺し、という俺の言葉通り富士山頭は頭だけになって転がってるし、タコみてえなのは五条にボコられた上に赤血操術でズタズタに引き裂かれている。肝心の偽夏油は半身が抉れている上に、本体らしき脳みそに直接攻撃を加えられたのか、ほぼ死にかけ。むしろ放っておいたら死なねえか、コイツ。

「ッ、こんな、所で……!」
「ハイハイ、そういうのもう良いから」

 血反吐を吐きながら必死に逃げ回るおかっぱ頭の顔面に向け、五条が拳を振り抜いた。次の瞬間にはおかっぱ頭はボーリングのピンみてえに吹き飛んで、……あいつ今黒閃使ったか……?

「先生今の見てた?黒閃狙って打てるようになったんだよね」
「おー、見てた見てた」

 領域展開を行った後も戦闘を続けた影響か、汗に塗れた五条は若干ハイになっているらしい。随分と素直に俺に戯れついてくる。
 それを軽くスルーしながら瀕死の脳みそ野郎を引き摺って、これまた瀕死のおかっぱ頭ごと封印用の呪具で突き刺した。……トドメを刺してるみてえになってるが、まあ死なねえだろ。長生きしてそうだから生き汚え筈だ。たぶん。

「ていうかさ、このクソ野郎は兎も角として、なんで呪霊まで半殺しにすんの?」
「夏油用」
「あー……」

 そのまま死にかけのタコの前にまた鏡の呪具を置けば、間髪入れずに腕が飛び出して呪霊を丸め込む。その様子を見た五条が、ヤッホーとか言いながら鏡面に手を突っ込もうとするのを止めて、今度は頭だけになってる富士山の前に設置。んで、流れ作業の様に真っ黒の呪霊玉になった。

「傑だけいいとこ取り過ぎない?倒したの殆ど俺じゃん」
「そこはおまえが単騎最強だから多めに見ろよ。あと脹相、ちょっとこっち来い」
「……?ああ」

 俺の仕事は終わったぞ、と言わんばかりにボケーっと突っ立っている脹相を手招き、偽夏油の前に立たせる。そんな脹相を親指で指せば、意図を察した五条が六眼で観察し始めた。
 自分よりデケエ男にジロジロと至近距離で見つめられるのが嫌だったのか、脹相が顔を顰めてこっちに助けを求めてくる。……俺がやれっつったんだから止める訳ねえだろうが。
 気不味そうな脹相を他所に五条は観察し続けて、それから偽夏油の頭部からまろび出ている脳みそを見た。

「うーわ、マジ?キッショ。え、マジでキショい……」
「やっぱそうなんだな」
「先生はいつから気付いてた訳?」
「高専の忌庫からわざわざ九相図を取り出したってとこだな。九相図以外にも特級の呪物は山ほどあったろ」

 オエーッ、と突然顔を顰めた五条を見て脹相がびっくりした顔をしてるが、おまえにも関係がある話なんだよな。つーか、おまえが一番関係あるんだが。

「俺の目って呪力とかそういうのが見えんだけどさ。オマエに混ざってる呪力と、そこに転がってる脳みその呪力が微妙に同じ部分がある訳。……これ、どういう事かわかる?」
「……俺とこの男との間になんらかの関係性がある、という事か……?」
「そーいうこった。んで、最終確認なんだが。おまえを作り出した呪術師の男に、額の傷はあったか?」

 俺の言葉に訳がわからねえと言いたげだった脹相の顔が、驚愕に彩られた。……この反応を見るにやっぱ正解だったみてえだ。
 目を血走らせ、憤怒の形相で脳みそ野郎を見下ろす脹相を引き止める。このままだとコイツ、脳みそ野郎の脳みそを踏み潰しそうな勢いだ。折角半殺しに止めてんだからやめてくれ。

「加茂憲倫にも額の傷があったってんなら、つまりは加茂憲倫も肉体を乗っ取られてたって見るのが普通だろ。なら、加茂家を動かせる」
「……御三家の汚点を輩出したって醜聞を払拭しようぜ、って持ち掛けんの?」
「あとは今回こんな事件を引き起こしやがったコイツと、高専の上層部が繋がってる、ってのも手札だな。加茂の名を汚した男と上が繋がってんなら、保守派の加茂家でも流石に御三家として黙ってらんねえ筈だ」

 加茂と懇ろになりながらも、加茂の汚点の元凶である男と繋がっていた、なんぞプライドの高え加茂の連中からすれば憤死ものだろう。更に言えば、五条と禪院が手を取りあって上層部を相手取るってのに加茂が日和見をしてりゃ、全部が終わった後に優位性を保てなくなる。
 そういう政治的観点から見ても、加茂が上層部を糾弾する側に立つのは簡単に想像できた。……あと、加茂憲紀が次期当主ってのもデケエけど。
 俺が話した内容を頷きながら聞いていた五条は、だけど、と疑問を口にした。

「それで素直に上が退いてくれるとは思えないけど。権力馬鹿だし」
「それはアレだ。もっと上から圧力を掛けりゃいい」
「…………もっと上ェ?じゃあなに?国家権力?」
「そうだよ。国家権力だ」

 呪術界の上層部と、国の上層部は勿論繋がっている。だから通常ならば、国の上層部が高専の上層部に対して口を出してくることは無えんだが……。渋谷で今回テロを起こした脳みそ野郎と、呪術界の上層部が繋がってるなら話は別だ。
 こんな場所でテロを起こすなんざ、国家転覆を狙っている様なもの。そんな存在である脳みそ野郎と繋がってる上層部は、国からすれば漏れなく国賊だ。御三家も上層部と敵対するならば、喜んで上層部の連中を引き摺り下ろしにかかるだろう。
 なんならそういう言質も取ってある。昔護衛をした奴らとの繋がりで、国の上の奴らとの間にパイプがあるから、メカ丸からの情報を基に予め渋谷の事をリークしておいたのだ。
 ……んで、国の上層部は非術師の犠牲に目を瞑り、呪術界の上層部を斬り捨てる事に決めたっつー話だ。恐らくコレを機に旧体制で凝り固まった呪術界にメスを入れて、ついでに術師に対してイニシアチブを取ろうって魂胆なんだろうな。

「……おっさんさぁ……手際良すぎて気持ち悪い」
「お、先生呼びはもうしねえ訳?」
「ハー?先生とか呼んでねーし」

 嘘つけ。何回か呼んでただろ。

「……じゃあ今から加茂家にこの脳みそ野郎を見せて話をつけて、禪院家はまああのジジイだからいいとして、当主で足並み揃えて国の上とお話しして、腐ったミカンを引き摺り下ろす。……って事?仕事多すぎでしょ」
「でも念願の改革の一歩じゃねえかよ」
「まあね!もうちょっと後続が育ってからって思ってたけど……うん、悪くないかな」



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