友恋

※ネタバレと捏造を含みます。


暑いのは苦手。
寒いのは着込めば何とかなるけど、暑いのはどうしようもない。
必然的に薄着になって体型が出やすいし、化粧だってすぐ崩れる。
ウォータープルーフのアイラインだって、吹き出る汗には敵わない。
だから夏なんて嫌いだし、アウトドアなんてもってのほか。
だと、思ってたんだけどなぁ。




「お願い!一緒にきて!!」

あって早々土下座せんばかりの勢いで頭を下げたのは親友のチカだ。
理由を聞けば、気になる人にキャンプに誘われたのだという。

「で、なんで私が?」
「金城くんも友達2人くるらしくて、私も連れて行くって言っちゃったの……。」
「私以外のあては?」
「断られた……。」

金城くん、か。
チカから何度か話は聞いてるけど、あまりよく知らない。
同じ大学だと言うけど専攻が違うんだろう。
協力してあげたいけど、キャンプかぁ……。

「雛美もやっぱりダメ……?」
「ダメだったらどうすんの?」
「一人で行く……。」

今にも泣き出しそうな顔をみて、断ることなんて出来なかった。
暑いのはもちろん、虫も嫌だ。
それでも懇願するチカに、私は了承した。




当日は車を出してくれるし、準備は何もいらないと言うので自分の支度だけ念入りに済ませた。
日焼け止めに虫除け、着替えにタオル。
制汗剤にボディシートに……気がつけば荷物は山のようになっていた。
でも車だし……いいよね?
迎えに来てくれるというので家の前で待っていると、大きな車が近づいてきた。
助手席にチカの姿を見つけて、私は運転席の彼が金城くんなのだ知った。
優しそうなイケメンで、いかにもチカの好みっぽい。

「雛美!おまたせ。乗って乗って〜!」

いつもよりハイテンションなチカに促されるままワゴン車に乗り込むと、後ろにも2人男の子が乗っていた。

「おはようございますー、よろしくお願いします。」
「おはよう、今日はよろしく。」
「エッエッ〜、おはようさん〜。」

一番後ろに乗っていた人は寝ているのか反応がない。
私はとりあえず手近な席に座りシートベルトを締めた。

「じゃぁ行くぞ。」

そう言った金城くんの運転で、私たちはキャンプに向かった。



道中自己紹介をして、隣に座っているのが待宮くんだとわかった。
後ろに乗っているのは荒北くんで、この3人は同じ部活なのだという。

「雛美ちゃんはえらい荷物じゃのう。」
「あっ、アウトドアってあんまりしたことなくて。なんか色々持ってきちゃった。」
「なーんも無くても大丈夫じゃけぇ、安心しい。」

ケラケラと笑うミヤくんは慣れているのかとても軽装だ。
話しやすい人たちでよかった。
チカも終始ニコニコとご機嫌だし、きてよかったな。
いろんな話をしている間にあっという間に時間は過ぎ、キャンプ場についた。
車の外に出るとむわっという湿気を帯びた熱気が体にまとわりついてくる。
私とチカが暑さにぼーっとしている間に、ミヤくんと金城くんはテントを立ててしまった。

「ここで休んどったら肉焼いてくるけぇ。」
「え、でもそれじゃ悪いよ。」
「えーてえーて。そんかわり後で水遊びしようやぁ。」

そう言って近くの川を指差すと、ミヤくんはニッと笑った。
水着は持ってきてないけど、着替えはあるしいいかな。
私たちはお言葉に甘えてテントの下の椅子に座った。
テキパキと準備を進める二人を見つつ、そういえば荒北くんがいない。
荷物を取りに行くふりをして車内に戻ると、まだスヤスヤと寝息を立てていた。
この人は一体何をしにきたんだろう。
そう思いつつも椅子に戻ると、ある程度準備を終えた二人がテントに戻ってきていた。

「お疲れ様、何から何までありがとう。」
「来てくれただけでえーんじゃて。焼けたらガンガン食べやぁ。」

ミヤくんはそう言って私にドリンクを渡してくれた。
なんというか、女の子の扱いに慣れてるんだろうか。
よく気が利くというか、スマートな感じがする。
話をしているうちに起きたらしい荒北くんがテントにやってきて、私をちらりと見るとめんどくさそうに口を開いた。

「誰だテメー。」
「言うとったじゃろ、チカちゃんの友達の雛美ちゃんじゃぁ。」
「初めまして、雛美です……。」
「ふーん。」

機嫌が悪いのか、何だか怖い。
フレンドリーな二人とは対照的で、なんだか苦手だ。
それでも無下にすることは出来ずに、私は愛想笑いをした。
荒北くんは私を見て舌うちをすると、木陰の方へ行ってしまった。



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