クリス×主人公(生物災害)


クリスの誘いにのって、楽しく..とまではいかずとも、普通にただ近所のバーで酒を飲んでいただけのはすが、なぜこんな状況になっているのだろう。

冷たい床に横たわり、上にはクリスが乗っかっている。まるで、彼に押し倒されたかのように、足を絡ませ上に彼が跨っているのだ。
クリスとは男同士であり、そういった趣味も双方にはないはずで、もちろん こんなことをされるような関係になったつもりもない。単なる友人にも満たないような、知り合いであったはずだ。

「...だから、あの時もうやめておけって言ったんだ。足下もおぼつかないほど飲むんじゃねえよ、面倒くせえな」

そう。これは、単なるハプニング。クリスを家にタクシーで連れて来たまでは良かったのだが、玄関をあがってすぐ、フラフラとして転けてしまったクリスを支えきれずに、二人共々倒れてしまったのだ。
そう、単なるハプニング。単なる..事故であった、はずだった。

「おいおい、酔っているのは分かるが、いい加減退いてくれよ。これじゃ水も持ってこれねえだろ..おい、聞こえてるんだろ?おい、隊長さ、」

いつまでも動かないクリスに、痺れをきらしながらも冷静に、揺すりながら声をかける。
すると、どうしてか、いきなりクリスがものすごい勢いで、こちらに抱きついて来た。
あまりに予想外な行動に、少しだけ身体が強張る。

「おい..お前、なにやってんだ。酔ってるとはいえ男相手だぞ?ふざけんのも大概に...って、おい..、っ」

クリスは、なんの前触れもなく、いきなり抱きついて来たと思ったら、そのまま首筋に噛み付くように食らいついて来た。
ビクリ、と身体が震える。
唐突の出来事に対処出来ず、冷静さも忘れ、驚きを隠せずに目を見開き、一瞬だけ焦った。

「冗談、キツイぜ..、っ.....なに、やってんだよ、マジありえねえ」

首筋に顔をうずめていたクリスは、吸い付くように、今度は舌を這わせてきた。
首元がチクリと痛んで、唇を噛みしめる。

「いい加減にしろって、酒癖悪過ぎだろ...って、おいおいおい、まてよ、流石にそれはシャレに...っ、なん、」
「.........ェ..、カー..」
「......っ」

首筋に吸い付いたまま、クリスは相手のシャツの中に手を滑り込ませていった。
冷んやりとした手の感触に、身体を震るわせる。
その時、聞き覚えのある嫌な名前が聞こえた気がしたのは、気のせいだと思いたい。

「ふざ、っけんな。そりゃ、人違い..だ。最低な勘違い、だっての」

しかし、流石に、この状況は危機感を感じざるおえない。
もがくようにさながら、クリスの腕を両手で掴み、制止しようと思いっきり力を入れた。しかし、クリスに力で到底勝てるはずもなく、少しの間動きを止める程度にしかならない。より一層、危機感を煽ることになるだけだった。
それどころか、クリスは制止していた相手の腕を空いていた方の手で掴みあげると、手首でひとまとめにし、頭の上へと持っていかれ、逆に拘束されるような形にさせられてしまった。
片手とはいえ、そうとうの力だ。
逃げる術すら失い、危機感どころか喪失感を得ることになった。

「ちょ、マジ、かよ...っ、ありえねえ」
「ウェ.....カ...、......ウェス..」
「マジ最悪...っ、マジで、ありえねえ」

逃げようにも逃げれず、もがけばもがくほどクリスの行動はさらにエスカレートしていき、今度は絶望感がどっと押し寄せてきた。
腕は拘束され、脚と脚の間にクリスの脚がある状態のため、蹴り飛ばすことも出来ない。最悪な状況だ。
それに、またこいつは言った。今度は聞き違いではない。確実に、あの名前を。クリスは、大っ嫌いなあいつの名を、しつこく呼んでいた。
最悪の気分だ。

「クリ..っ、ス...まて、マジで、これ以上は..ダメ、だ」

腹部にあったはずの手が、するりと移動し、胸元に触れた。もう酒のせいではすまないような状況に陥りつつある。
らしくもなく、ある種の恐怖を感じた。
相手が女であったのなら、特にこれほどの嫌悪感は抱かないであろう。しかし、相手は男、しかも良く知った人物だ。残念ながら、この状況を楽しめるような特殊な趣味の持ち合わせはない。
それになにより、酒の勢いでなんてゴメンだ。
他人と思われたまま犯されるなんて、絶対にゴメンだ。
きっと、こいつだってそれは望んではいないだろう。

「っ...これより先がしたけりゃ、もっとちゃんと順序を踏むべき、だぜ..クリ、ス」

何を思ったのか、クリスは拘束していた手をいきなり外した。力なく消えたそれに、ほんの少し拍子抜けする。しかし、これはチャンスだ。何を考えているのかはわからないが、有効に使わせてもらう他はないだろう。
そう、考えていた時に、不意に下半身へと違和感を感じた。拘束を解いたことによって空いたクリスの腕がいつのまにか、下へと移動していたのだ。
いきなりのことに、服の上からとはいえアレを触られ、条件反射で、とっさに考えもなしに力だけは込めて、クリスの頭を殴りつけていた。ゴキっと嫌な音がなる。
すると、やり過ぎたかもしれないくらいの勢いで、クリスはすぐに力なくうなだれた。

「お前が悪いんだぜ、これからは酒はほどほどにするんだな...あー、なんかすげえ疲れた」

倒れているクリスを尻目に、乱れた服を直しながら大きなため息をついた。
ただ知人と飲んでいただけなのに、まさか、酔った勢いで昔の男と重ねられるとは、しかもそれは大っ嫌いな男。
そんな男だと思われたまま、ヤられるとか、怒りを通り越して鬱になる。

「そんなに..似てるか?あんな奴と、」

自己嫌悪。
解放されたはずなのに、また酷い絶望感がどっと押し寄せてきた。
似ている。それは、自身が一番良く知っていることはずだった。だからこそ、一番認めたくない。
キリキリと、胸が痛んだ。
きっと、激しく動いたせいで、酒の酔いがまわって来たんだ。頭もなんだか、ズキズキと痛む。
そんなに弱い人間じゃない。だから、きっとこれは酒のせいだ。

「...........帰ろ」

いったん頭を冷やしたい。
そう思って、倒れたままのクリスも忘れ、外に出た。
冷たい空気が肌に触れる。雨が降っていた。
帰って暖かい風呂に入りたい。そしてこの気持ちの悪い気分を洗い流そう。






それから数時間後、シャワーを浴び、髪も乾かさずにリビングでくつろいでいると、いきなり携帯の質素な着信音が鳴った。
相手は見なくても予想はつく。

「今、もう家にいるのか..?」
「ん、ああ..とっくにな」

通話ボタンを押すと、すぐ相手の焦ったような声が聞こえてきた。
やはり、クリスだ。
何がどうなっているのか、状況が掴めていないといった感じだった。

「そう、か..その、」
「誘っておいて、酔いつぶれたあげく、家についたらぶっ倒れたことを謝るためにでもかけてきたのか?だったらまた今度にしてくれ、もう寝ようかと思っていたところだし、別に気にしてねえから」
「え?あ、いや、待ってくれ!そういうわけには、」

じゃあ、といってクリスの話しも聞かずに一方的に通話をきった。
あんなことがあったのだ、とても話す気にはなれない。
俺は、心の底から嫌悪感を感じていた。
クローンなのだから、そう見えるのも否定はできない。しかし、嫌なものは嫌なのだ。
俺は、その日、頭を悩ませながら朝を迎えることとなった。




─────

続く?
かはわからないけどクリス→ウェスカー風味が書きたかったクローンネタ。



23/04/07 17:15



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