(※R15)

百円均一ショップで買ったとしても百五円にすらしてもらえない板チョコも、まなの手にかかればほらこの通り。どこぞの名店よりも美味しく生まれ変わってしまう。(こりゃ明治もびっくりだわー。森永もアゴ外すわー)どうして。なんで。そんな疑問を晴らすべく、その魔法の腕を見習うべく、紫原はまなの家に来ていた。気まぐれからか、菓子の自給自足を目指してみようかな、なんて考えていたのである。

「えっと…ね。まず基本は、…えーと。ううん。えっと、やっぱり、美味しくするためには、温度が大事、…な気がする?いや待てよ。ううん、やっぱりタイミングが大事…かも?え、ごめーん…わかんないや」
「えー何それ頼りないー」
「だって、全部感覚だから、」

まなは紫原にお菓子作りのコツを何とか伝授しようと頑張るが、口を動かせば手が止まるし、逆もまた然りな状態。最終的には、「職人技は見て盗むものだよ!教えてもらおうなんざ甘い!…なんて言わないけど私に教えるなんてやっぱり無理だったみたい。ごめんむっちゃんー!」なんて言われてしまう羽目になった。

「…んー、じゃあもういいや。実は飽きてたし。お詫びに何か作ってくれればそれでいいよ」
「一緒に作る?」
「ううん。ダルいから待っとく」
「分かった。あ、冷蔵庫の中にアイスあるよ」
「んー」

必要最低限のものしか容れられていない冷蔵庫の中から紫原はガリガリ君を一本取り出した。夏真っ盛りのこの時期、何をしていなくても汗は垂れるし服は張り付くしで非常に不快だった。が、火の前に立つまなの方が状況は酷い。惜しげもなく晒された太ももや二の腕に汗が滲んでいる。(…スカート短い…、)紫原は何も思わないほど子供じゃなかった。

「…まなちん。今日赤ちんは?」
「将棋大会ー」
「ふうん。…いいのー?俺と二人きりなんて赤ちん怒らない?」
「むっちゃんならいいのー」

むっちゃんならいいの、か。紫原はガジガジとアイスを噛む。



「むっちゃんほら見て!ケーキのてっぺんに可愛い天使さんつけたよ!」

うとうとしている間にいつのまにか出来ていた三段ケーキ。頂上には余計な装飾菓子。俺あれ食べない派なんだよね、と紫原は頭の片隅で思う。

「別に天使とかなくていいから。寧ろ邪魔」

ぽい、と取るとまなは「えー内心嬉しいクセにぃっ。私の前では別に格好つけなくていいんだよっ」と装飾菓子を元の位置に戻した。は?と紫原は思う。

可愛いね?と何やら綻んだ顔をしてまなは見てくるので。(え、何まなちん。俺のこと馬鹿にしてんの)いつもならヒネリ潰すところだが紫原はまなのことが嫌いではないので今回は黙っていることにした。余っちゃったチョコどうしようかなー、とまなは紫原の様子など何も気にすることなく片づけを始めてしまう。

「あ、指にチョコついちゃった。むっちゃん、見て。ほら、美味しそうだねえー?」

イラ。まるで子供をあやすような口調だった。(……何、)もしかして本当に馬鹿にしてるのか。装飾菓子の件といい今といいコイツの中の俺は何歳児なんだろう。と紫原は思った。思い知らせてやろうとちょっとした悪戯心からまなの指を掴んでその指に纏わりついているチョコレートを舐める。

「やんっ、ちょっと、きゃあ、っきゃはははっ!」

くすぐったいのかまなは笑い出した。どうやら、じゃれていると思われてるらしい。

「きゃはは!…ちょっと、やめなさい!むっちゃんやめなさいったら!きゃははは!」

イラ。イライラ。その命令口調に眉を寄せた。(…何様のつもりなわけ、)紫原はまなの指を舐めたまま、今度はボウルに自分の指を突っ込んでいた。残っていたチョコレートの海に二本指を沈めて、笑うことに夢中で何も気がついていないまなの口の中へ。

「きゃはははは!…んっ!むぐ?!」
「美味しい?」
「…え、…むっひゃ、ん?」

急な甘さにえずいたようだが、そこでやっと紫原の只ならぬ雰囲気に気がついたらしい。え?と何が何だか分からないといった不安顔で紫原を見上げるまな。紫原は気にせず自まなの口内を弄繰り回す。逃げる舌を捕まえたりして。無理やり咽喉奥まで進めたりして。まなは苦しくて生理的な涙が出そうになった。

「…美味しかった?まなちん」

解放してやった。まなは肩で息を整えた。

「…お、美味しかったけど…!…っもう!食べ物で遊んじゃだめでしょ!むっちゃんメッ!」

――――――ハア?



「むっちゃんやめて!や、…っあ、…ひゃん」

ねっとりと足裏を嘗め回す。指と指の間を舌でチロチロと刺激する。足指全体を口内に含んでみたりしちゃって。だが、あくまでそこには他意のないふりを装っていた。

舐めるものがなくなれば、ボウル内のチョコレートをその白い足に垂らす。その体(てい)は、紫原はチョコレートを舐めているだけで名前の足を舐めているのではない、のである。律儀にも「美味しい、」と時々感想まで述べてあげている。今現在、紫原はまなの足でなくチョコレートに夢中になっている子供だった。(だってもともとはまなちんが俺を子ども扱いするからいけないんだしー)どちらにしろまなは刺激に耐えるのと抵抗するので精一杯のようで、そんなことなど気にしていられなかったのだが。

暑い夏の日。汗に滲む肌を紫原の熱い舌がねっとりと移動する。まなの足に偶然にも垂れてしまった(と言うのは些か意地悪すぎるかもしれない)チョコレートをどうにかしようと、紫原は強く強く、だけどとても丁寧に舐め取っていた。刺激に耐え切れずまなは何度も足を引いたが、その度強く掴まれ紫原の舌の前に屈した。こもる声と、台所の床に寝転がされているこの状況。夏の湿気はムンムンとしていて、これはヤバいとまなは必死だった。

「ひゃあ、ああん…や、めて!むっちゃんやめて」

足裏に飽きたら脛へ。脛に飽きたら膝裏。太腿。内腿。短いスカートは簡単に捲り上がってくれて、色々と丸見え、である。しかも目前で。不自然に色の違う部分も確認出来てしまった。(…感じてるんだ。へえ)紫原も人並みに知識はある。

仲の良い同級生のあられもない姿。しかもその刺激を与えているのは自分。

「…まなちんって感度イイんだね」
「やっ!」

その実、男の方が色々と限界だったのである。普通に暮らしていれば遭遇するはずのないこの状況に、鑑賞より行動を取ってしまったのも致し方ないことだろう。理性は儚く脆かった。衣類越しに性器同士をグッと密着させた。キャア!とあがる悲鳴を無視してグーッと強く押し付け続ける。熱いね?夏だから?耳元でそう嘲笑った。少しのタメの後、ピストン運動を開始させた。「キャアア!変態!」そうして悲鳴を上げ睨み付けたとしても、(全然意味がないよまなちん)んっ。んっ。リズムに合わせて聞こえる鼻の抜けたような声が、(全てを台無しにしてますけど?)紫原が嘲るのも無理はない。まなの頬は赤く染まっているし目だって扇情的に濡れている。まなの方だって、色々と我慢できていない。(ねえ、興奮してるんでしょ。気持ちいいんでしょ)というか、足を舐めた時点で、(もう出来上がっちゃってたんでしょ?)

「…これ、何て言うか知ってる?まなちん」
「んっ、ん!ふっ…!」
「ほら、言えって」
「…んぅ…っ!…っ強姦!セクハラ!」
「は?ちげえよ、バーカ」

その間も腰の動きは止めない。紫原だって興奮していた。刺激がほしかった。「…やっやめないと赤司に言うからっ!」と何とか言い切ったまなの蕩けた顔を写真に収めれば、後は何をしてもいい気がしていた。「まなちん、この写真見て。和姦にしか見えなくね?」まなは画面に映る自分の顔に驚き、何も言えなくなってしまった。

「ねーこれさ、俺たちの間に服なかったら、入っちゃってるね。わお」

ねえ、脱いでみる?なんて冗談で聞くと、青ざめて弾けたように再び強く抵抗し始める。

「むっちゃん!どいて!どきなさい!どきなさいったら!」
「何その命令口調。つーかずっと思ってたけど、さっきからお前、何様のつもり?ほら、今、立場が上なのはどっちですか。俺、今ならまなちんにあんなこともこんなことも出来るんですけど?」
「んっ!…やん、いやっあん!」
「はっ。感度良過ぎでしょ?つか喘いでんじゃねーよ、キモ。あーあ、赤ちんカワイソー。まなちんがこんなに変態だなんてきっと知らないよ……え、何。もしかして泣いてんの。え。アリエナーイ。こんなにすぐ泣いちゃうなんて、まなちんてば、本当に、お子様だよね」



こどもじみた復讐

個人的に仲良くしていたお友達バージョン

何という悪戯心であろうか。中途半端に大人になった子供ほど、怒った時に何をするか分からないものである。


「まなちんのこと好きかって?なわけないじゃーん。ただ困らせてみたかっただけだしっ」

何という愉快犯であろうか、この男。その実、何をしても許される気がしていたのである。それは無意識に誘惑した女が悪いのか、それとも耐え切れず爆発した男が悪いのか。兎にも角にも、思春期の夏は色々と怖いものである。






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