「顔が赤いようだが大丈夫か?」
「…うん…大じょぶ、」
「水を貰ってきてやろう」
「…あ、りがと、」

「まなちん、今のうちに店出るよ」
「ひゃっ…!で、でも赤司が…!」
「いいでしょ別に」

その手を引いて店を出る。あんなことがあったというのに三人で遊ぶなんてやっぱりどうかしてたのだ、とここに来る事を決めた数時間前の自分を呪った。まるで紫原を避けるようにして赤司に寄り添うまなにイラついて、赤司の見えないところで悪戯ばかりしてしまった。ファミレスで態とまなの隣に座ったのも全てはそのためだった。

ジリジリと日差しが強い、暑い夏の日。濡れていた右手も一瞬で気化してしまう。ねえ見て。乾いたよ。カピカピ。と目前に晒してやると、見たくないとまなは顔を背けた。が、その頬は赤い。

「…ねえ、もうやめてむっちゃん。お願い。どうしたの。むっちゃん、何があったの。あの時からおかしいよ。ねえ、もし私が何かしたなら謝るから」

嫌がるまなを路地裏に無理やり連れこんだ。今更、やめられるわけがないのである。(そりゃそーでしょ。だってここまで来ちゃったわけだしー)まなの、赤司を気にして何度もファミレスの方向を振り返る態度に苛々した。そういえば、赤司は二人のいなくなったテーブルを見て何と思ったのだろう。彼なら今や無人の椅子に仄かに残る、性のニオイを見つけたかもしれない。

「…お願いだから。お願いだから、前みたいに、優しくて可愛いむっちゃんに戻って、」
「まなちん、俺のこと何もわかってないよね」

結局は自分のことしか考えてないでしょ、と迫るとまなは2mの体格に圧倒されたようだ。

「……む、むっちゃん…。またお菓子作ってあげるから…。もっと美味しいの作れるように頑張るから、…あ、今度は分かりやすくお菓子作りのコツ教えられるようにちゃんと研究もするね…だから、もうやめよう、こんなこと。ね?」

まなは自分のことしか考えていないが、紫原の方だってどうしていいのか分からないのである。もうどうしようもないのである。取り返しのつかないところまで来てしまった、のである。だから今日も。涙を浮かべて懇願するまなを威圧感を持って見下ろすしかない。


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