今日も一日お疲れ様でした明日もまた頑張りましょうとベッドにダイブしたのは一体どれほど前のことなのだろう。

「…まな!!」
「……んー…」
「まな!」

ゆっさゆっさ揺さぶられて仕方なく重たい瞼を無理やり押し上げた。暗闇の中、ぼやけた青峰の顔が視界に入った。どうやらかなり切羽詰まってる様子だった。もしかして何か非常事態でも起こったのか?それともついに堀北マイ写真集捨てたのがバレたのか?

「…この世で一番好きなものを俺に言ってみろ!」

(………)答える必要なし、と即座に判断し睡眠を邪魔されないように布団を頭の上まで被った。が、すぐさまはぎ取られる。「……何!」不機嫌MAXである。

かなりの苛立ちをこめた目で青峰を睨みつける。いくらあなたでも睡眠を邪魔することだけは許さない。少しは私の身体を気遣ってほしいわ、なんて。

「すまん!お前が仕事で疲れて眠たいのは知ってる!それにお前の睡眠を邪魔することは自殺行為だってこともちゃんと分かってる!だけど今すぐこの世で一番お前が好きなものを俺に言え!この世で愛しくて堪らないものを俺に言え!それを聞かねば俺は寝たくても寝れん!」
「……イシツブテ」
「馬鹿やろう!」

いやまだ昔のように赤司と言わないだけいいか、と青峰は布団から出て背中を丸めていた。何だ何だ?と思いながらも、まいっかと私は寝た。此処最近、私はずっととれない気だるさに悩まされていた。こうやってベッドに入ったら、それこそ青峰の相手をせずにすぐに寝ちゃうくらいに。ああ瞼さんどうぞ再びおやすみの時間ですよ、「まな、まな、」「…うるせえ!」ついに蹴った。

…仕方ない。

言えばいいんだろ、言えば。

「…青峰がこの世で一番好き。大好き愛してる。これでいい?おやすみ」
「お、おう…おやすみ!」

こんなんですぐに大人しくなるから、ちょろいものである。




くかー、と再び睡眠体制に入ると、青峰のでかい体もまたベッドに潜り込んできた。その中でぎゅう、と抱きしめられると、青峰の体温が直に伝わってきて、ああこれなら厳しい冬の寒さも乗り越えられそうだわなんて思う。私はこの不器用な男を愛してる。だからもう昔のように抵抗はしない。それが嬉しかったのだろう、私を抱く腕はさらにキツくなった。

「ちょ、さすがに暑苦しい」
「俺もまなが一番好きだ」
「…堀北マイよりも?」
「………」
「……婚約解消」
「冗談に決まってんだろ!お前がイシツブテなんて言うから…っておい、まな?」

もう私の耳に青峰の言葉は聞こえてはいなかった。ザ・寝オチである。







朝、新聞、コーヒーの香り、目の前に青峰。いつもと変わらない日曜日。ああそういえば何だかいつもより寝たりない気がするわと昨日のことを思い出して青峰に尋ねてみると、「いや…ちょっと」なんて言葉を濁される。

「夢見たんだ、昔の。お前がまだ赤司赤司言ってたころの。それでちと不安になった。それだけだ。起こしちまって悪かったな」

あの照れ屋の青峰が素直に答え、そして謝ったのは「言わなければ婚約解消すっぞ」と私が脅したからだ。てゆか、お前、そんなくだらない理由で私を起こしたっていうの?

「イシツブテって言ったときはどうしてやろうかと思ったが、」

でも結局まなは俺が一番好きなんだろ?とニヤニヤニヤニヤしてくる。しかし、それはほとんどお前が言わせたようなもんであることを忘れないでほしい。「昨日のあれ、実は嘘。ごめんね」なんて言うと、青峰はさっきとは一変、まるでこの世の終わりのような顔をした。「お前やっぱりまだ赤司が…」馬鹿ね。あんた私の婚約者でしょーが、自分に自信持ちなさいな。

もうお腹いっぱい、と残した朝ご飯を全て青峰のエリアに避ける。世紀末のような顔をしながらも、悲しいかな、もう骨の髄まで染み付いたクセは抜けないのだろう。私の残り物を機械的に箸でつまむ姿が何とも痛々しい。

さすがにちょっと可哀想になってきた。だけど、私のSスイッチは一度入ってしまったらもう止まらない。「あ、言わなくちゃいけないことが。堀北マイ関連のもの全部捨てちゃった。ポスターもDVDも抱き枕も全部。ごめんね。怒る?」なんて。でもこれは全部青峰が悪いんだよ。いつまでもあの年増の女に現を抜かしてるから。あ、あとベッドの下のAVも全部捨てました。私という女がいながらあんな厭らしいもの大量に溜め込んでたなんて有り得ない。ヤりたいならちゃんと私に言え、バーカ。…あ、でもあんなプレイ出来るかって言われたらそれはちょっと。…でも努力はするつもり。

「…いや」

(あらら…)これは完全に元気がなくなってしまっている。青峰ってば本当に私のことが好きだよねーと、わかりやすいこの不器用な男が可愛くていとおしくて堪らない。「安心して。青峰は世界で二番目に好き」と言えば「…一番は誰だ。今すぐ殴りに行ってやる」ちょ、それは困ると苦笑した。

「一番はこのお腹の子。殴らないでね」
「…お前ってやつは!」




る!

「お仕事頑張ってね、パパ」
「……おう」



もしも峰と婚約者になったら

(つかいい加減青峰やめろ。俺もお前も青峰だ)
(大輝?)
ぐはっ


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