「アイター!!」

久しぶりにざっくりイった。包丁で、ざっくり、と。

じんじんとした痛みとともに溢れ出す赤色。大根が私の血で染まっていく。(ああ血液さん、ちゃんと、私の中を、流れていたのですね)なんて思いながら、「んん」と痛みを堪えていた。こう見えて私は血が苦手です。鮮やかな赤に吐き気がします。

「大丈夫か?」

赤司に手をとられ、ハッと我に帰る。「痛い?」「うん」左手の人差し指に入ってしまった切れ目にクラクラする。ああ痛い、痛いです。これは久しく忘れていた痛みだ。包丁で指を切ったときの痛みだ。これが、この痛みが、包丁で指を…「…ひゃっ!!」再び混沌とした思考に入りかけた私を現実に戻してくれたのは、またもや赤司だった。突然、その患部を舐め始められたので焦る。(し、しまった!変な声出た!)「…な、何をしてるんだね、君は一体、」ピリピリとした痛みに顔をしかめる。「消毒だよ」なんて平然と赤司は言うけれど。「…っ」こそばゆい刺激に思わず声が洩れる。「…ん…!…」うわあ。自分の声に耳まで熱くなる。私の馬鹿、これくらい我慢なさい。「…ひ、ゃ」ああ、でも、変な声、出ちゃう。「…っ〜〜っ!」指だけじゃなく、肘から手首にかけて何とも扇状的に舐めあげられた。挑発するように、綺麗なオッドアイが私の反応を楽しんでいる。「〜っもういい!」いつまで、舐めてるつもり!

「…〜ッ!ストップ!ストップ!どうどう。どうどう」
「…僕は馬じゃない」

ムッとさせてしまったようだ。それでもなお、まだ舐めようとするので、ここで忠告。「これ以上続けると変な雰囲気になるわよ」なんて言うと赤司に笑われた。「変な雰囲気になっては、いけないのか?」と急に真剣になって聞いてくる。(う、)そんなに真っ直ぐ見つめられたら、「…変な雰囲気になっても、いいです」ほら、流されちゃったじゃない。



「…おいで」






まだご飯の準備の途中なのに。

「お母さんお腹すいたー!…はっ!何をやってるのお父さんお母さん!」
「「子どもはあっちに行ってなさい!」」



もしも司と家族になったら

そんな日常の一片


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